【親睦と理由を付けた宴会】前編
今日のお昼ご飯は天ぷらそばだった。
山菜の天ぷらとだしの効いたつゆが、めちゃめちゃ美味しかった。
もうすっかり胃袋を捕まれているカイである。
「ババ様の所に行くの?」
『そうよ。ほら、昨日来た宮川さんがね、ホテルの人達と挨拶に行きたいらしくて。』
「俺もババ様に会いたいな。坊も行こうよ」
「そうだな!行ってみたい!」
『それでは、皆で行きましょうか』
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『待たせたかの?』
「いえ、時間通りで御座います」
そこには、サラとレイヤに柳も控えていた。
「お手数をおかけしますが、宜しくお願いします。」
サラが挨拶すると、
『大した手間でもないよ。それより、お主は付き物が落ちたの』
「!」
『良いことじゃ。では参ろうか』
皆は雪乃に続いて水鏡を潜った。
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「ババ様、こんにちは!」
「おや?カイも来たんだね。」
「友達を連れてきたんだ。」
「ババ様、坊って呼んでくれ」
「元気な子だね。シロ様もお入り下さい」
『大人数になりそうね。』
「賑やかで良いではないですか」
『フフッ。そうですね。賑やかになりそうです。』
そこに雪乃達も現れた。
宮川さんは驚いたようで、
「これは、お館様。いらっしゃるとは思いませんでした。」
跪いて頭を下げる。
これにはサラとレイヤが驚いてしまう。この様な宮川は見たことが無かった。
それに気付いた宮川は
「失礼しました」
と言って後に下がるが後の祭りである。
「初めまして鏡面界から来ました、サラといいます。」
「娘のレイヤです。」
「柳と申します。」
「先程は失礼致しました。宮川と申します。」
サラはお土産の菓子折をババ様に渡す。
「丁寧にありがとう。皆にババ様と呼ばれております。どうぞ、そうお呼び下され。」
『さて、堅苦しいのはここまでじゃ』
雪乃はなんと酒を出してきた。
『この中で、私に挑むつわ者はおるかな?』
「フフッ。」
「オレも飲むぞ!」
「いや、坊は駄目だろ!?」
などと言ってるうちに、村人達がツマミや酒を持ち込んできて、一気に宴会が始まった。
サラ達は啞然とする中でそれに巻き込まれていく。
シロもカイの腕に抱きついて、これから勝負が始まる様だ。
シイもロクもその様子を見て驚いている。
そんなロク達に、
「名のあるお方とお見受けします。一献如何でしょう」
と宮川が挑んで行った。
サラはババ様の隣に座り、
「この様な歓待、恐れ入ります」
「これが我らの生き方ですよ。この地で生きるということなの」
「!……どうぞよろしくお願いします。」
「さあ私達も飲みましょう」
こうして宴会は始まったのだった。




