【冒険者ギルド】
「おはようございます。お嬢様。」
「おはようございます。」
サラは移住者の本部に来ていた。
だが、何故かそこには、冒険者ギルド シリウス と書かれた看板がかけられていた。
サラの前には、見慣れぬ制服を着た10名ほどの元ホテル従業員が並んでいる。
「ママ、大丈夫?」
サラはふらふらとよろめいて、レイヤと柳に支えられる。
「宮川さん説明をお願いします。」
「はい。お嬢様。」
「先ずはこちらがギルド長室になりますので、どうぞお入り下さい。」
サラ達は、宮川に付いて部屋へと入って行く。
「お嬢様。どうぞこちらに」
そう案内されたのはどう見てもギルド長の机である。
「只今お茶をお持ちします。」
柳はお茶の用意を始めた。
「お嬢様。良くお似合いで御座いますよ。」
「私がギルド長なの!?」
「はい、任命に付きましては先日一任されましたので。」
「…確かに」
「及ばずながら、秘書は私が務めさせて頂きます。」
「ママ、頑張って!」
「はぁ、なんでこうなったのかしら…。」
レイヤも応接用のソファーに腰を下ろす。
「先ずはこちらをご覧ください」
皆に資料が配られる。
「この地図で示されておりますが、ホテルから約1kmの地点にダンジョンを確認しております。」
「「 なんですって!! 」」
「以下、名称を恵みのダンジョンとさせて頂きます。」
「当冒険者ギルドは、この恵みのダンジョンの探索サポート、及び、もたらされる資源の買取。更に、その資源の活用等を目的として運営致します。」
「次項をご覧ください。」
「こちらは、ギルドの規約の雛形にしていただければと用意致しました。」
「そして………」
宮川が用意していた資料は数十枚に及ぶ。
「ちょっと、急展開過ぎて付いて行けないわ…。」
「暫くは準備期間として、冒険者登録の希望者への説明会のみを行う予定であります。」
「早速ですが、こちらが本日のお嬢様のご予定で御座います。」
サラにメモが渡される。
「ユーパロ村のババ様とお茶会!?」
「はい。この恵みの大地では時計はございませんので、お昼過ぎの小腹がすいた頃の予定で御座います。」
サラは皆の顔を見回す。宮川以外は、もう魂が抜けたようになっていた。
「はぁ、わかったわよ。もう…。」
こうして冒険者ギルド シリウスの、その長い歴史が始まったのだった。




