【明日に向けて】
坂本隊長は先遣隊となる十名の隊員と、予想されるトカゲの妨害工作について話し合っていた。
雪乃からもたらされた情報によると、トカゲ自体の戦闘能力は低く、通路での直接的な武力行使は考えにくいらしい。
更に通路はダンジョン化しているため、現代兵器は無力化されるという。
理屈は良くわからないが、現状我々の武装を考えると有り難い。
しかし、コボルトと呼ばれるモンスターを使ってくる可能性があること、それから最も厄介なのがトカゲが得意とする精神攻撃だそうだ。
「シロ様が目覚めさせてくれたこの感覚が我々の武器になるらしい。皆などうだ?」
「この感覚は凄いですね。自分と隊長や他の隊員との繋がりがハッキリと分かります。」
「自分も同じですね。念話と言うほどではありませんが、言葉にしなくても意思の疎通は図れます。」
「これでトカゲが擬態していても看破出来るでしょう。」
坂本はそれらを書き留め、作戦に仕上げていく。
「通路は素直に通過出来れば約500メートルだ。そこに100メートル毎に拠点を築く」
その日遅くまで作戦会議は続くのだった。
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レイヤは移住希望者の為にレストランを改装して作った本部前にいた。
「宮川さん。これは何かしら?」
「はいレイヤ様。こちらが冒険者ギルド シリウスで御座います。」
「ええ、そう書いてあるわね。」
「こちらのカウンターで冒険者登録ができます。そして、あちらが素材の買取カウンターになります。」
「ええ、そう書いてあるわね。」
「レイヤ様の冒険者登録は既に済んで御座います。こちらがギルド証になります。」
「あっ。ありがとう。ではなくてね。」
「はい。こちらが初期装備になります。レイヤ様は既に武器をお持ちですので、防具のみになります。ご了承下さい。」
「あ、ありがとう。」
「師匠!私も欲しいです!」
「これは柳の装備一式です。既に支払いは貴女の口座からしておきましたので、心配はいりませんよ。」
「え?心配しかないんですけど!?もしかして、定期預金とか崩してませんよね!」
「大丈夫ですよ。退職金を前借りしたら少し余りましたから。」
柳は崩れ落ちた。
「はぁ、…こんな人だったかしら…」
こちらは前途多難であった。




