笑顔の秘密
「シイ。俺はこの村のために何かしたいと思うんだ。」
「そうか。何をしたいんだ?」
「役に立ちたい。シイは何の仕事してるの?」
「仕事か。トカゲのシステムか?」
「…え?そうなの?」
「俺達は助け合い、共に生きる。そこに役割はあるが、報酬を得る為に働く事などないよ」
「………」
「ババ様に相談してみてはどうだ?」
「そうだね。うん、行ってくるよ!」
ショックだった。真面目に働く事は良い行いだと社会の為になると信じていたのだ。
「ババ様、こんにちは!相談したいことがあるんだ。」
「おはいり」
そこには雪乃とシロも来ていた。
「こんにちは!皆んな来てたんだね。お邪魔じゃない?」
『大丈夫よ。カイにも話しがあったから、丁度良かったわ』
「そこに座りなさい」
俺達は囲炉裏を囲んで座った。火を囲むのは落ち着くものだと改めて感じる。
『カイの友達の、佐藤さんでしたか。鏡面界にお返ししましたよ』
「そうか、ありがとう御座います。シロ様」
『もぅ、カイに敬語を使われると自分が老けてしまいそうで嫌です。』
『私もそうじゃな。敬語禁止じゃ』
『禁止よ』
「そんなあ」
助けを求めようとババ様に視線を送るが、静かに首を横に振っている。
二人の笑顔の圧が凄まじい。
「わかったよ」
『フフフッ』
「そうそう、ババ様に相談というのはね、シイにこの村で仕事をしたいと話したんだ。そしたら、それはトカゲのシステムか?と言われて。俺は何かこの村の為になりたいんだけど、どうしたら良いか分からないんです。」
「なるほどね。カイ、それは簡単だよ。」
『そうじゃな。お主は複雑に考えるのが好きじゃな』
「カイのやりたい事をやればいいのさ」
『皆んなそうやって生きているわ。カイもここに来てからそうしているわよ?』
「え?俺もう出来てる?」
『たまに、こうして変な事を言い出すがな』
「なーんだ、そうだったんだ」
その俺の様子を見て、皆んなは余程可笑しかったようだ。
『次の悩みは何かしらね?』
シロは本当に楽しそうに笑っている。
本当にこれで良いのだと、そう思えた。
「そうだ、ババ様。あの壺の事だけど、教えてよ」
「ああ、それはな。秘密さ」
『フフフッ、女は秘密が好きなのよ。』
「はぁ…」
今度は女性三人で顔を合せて、男性には理解出来ないレベルの笑顔になった。
ここにアキが居たら助けてくれたかな?
でも何故か、同じ微笑みを浮かべるアキの姿しか想像できないのだった。
「ヒロ、早く帰って来てくれ」
もう俺は相棒にすがるしかないようだ。




