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闇の中

ここはアキの勤務先だろう。

アキはパソコンに向かい何やら作業をしている。

影達は彼女を囲んで、その様子を見ていた。

アキがひとつ仕事を終えると、影から紙を渡され、またパソコンに向かう。

それが終わると、次の影から紙を渡される。

影達はアキを囲んで、それを繰り返していた。


また場面が変わる。


電車のホームだ。

沢山の影達とアキは次の電車を待っている。

電車が到着すると、沢山の影達とアキが乗り込む。

次の駅で沢山の影達とアキは降りる。

次の電車が来ると、また、影達とアキは乗り込んで……永遠とその作業が続く。


「…何なんだ。これは…」


場面は変わる。


アキの部屋だ。アキはスマホで動画を見ていた。

最近話題のエコビレッジ。

ヒロとカイが発信している動画が、再生回数を伸ばしている。


「こんなに最初から見てくれてたのか」


アキは何度も繰り返して見ていた。


コメントを書き込んで、返信に喜び、また動画を見て。繰り返し、繰り返し。


場面は変わる。


ファミレスで数人の影と何やら楽しそうなアキがいた。

既にかなり有名になった俺達と、並んで写るアキの写メを見せているようだ。

アキは笑っていた。


「アキ……」


そして場面はあの夜、クリスマスイブのログハウスに変わった。


アキは俺達と写メを撮り、自分のSNSに上げていく。

また写メを撮りSNSに上げていく。

アキは閲覧回数が増えていくごとに笑っていた。

また写メを撮り、SNSに上げて…

アキは笑っている。閲覧回数を見ながら。


『フフフッ』


アキは初めて声を出して笑った。


ヒロにプロポーズされた事を書いた記事の閲覧回数を見て。


ヒロはそのアキを見て、醜いと思った。それは、あの河川敷で見せた笑顔だった。


「………これは、アキじゃない」



途端に、アキの姿がブレる。

トカゲの姿がアキの姿に重なる様に現れた。半透明に重なるアキとトカゲ。


「アキ!!」


トカゲがスマホを見ながら笑っている。


「フフフ」


「ヒロ!」


アキは俺に向かって手を伸ばす。


「ヒロ!助けて!」


「アキ!」


「助けて!」


そこで場面が変わってしまう。


ここは真っ暗だった。冷たかった。

それ以外は何も無かった。

俺はそれでも歩いた。アキを探す為に。

アキはあの時俺に助けを求めていた。だから俺は絶対にアキを見つけ出す。

どの位の時間が過ぎたのだろう。


突然暗闇から溶け出す様にアキが現れた。


「貴方達と居ると、私有名になれるわ」


「アキ?」


「見て、凄い数のフォロワーよ。私もっともっと有名になりたいの」


「アキ。カイはもう居ないし。エコビレッジも無くなったんだ。配信は出来ないんだよ。」


「駄目よ!何を勝手な事言ってるの!そんなの許さない!」


「………」


「ヒロ…ヒロ…」


ヒロの胸に下げた御守りが、淡く光る。


「友達に自慢してしまったのよ!どうしてくれるのよ!責任取りなさいよ!」


またアキの姿にトカゲの姿がダブる。


「ヒロ…ヒロ助けて!」


御守りの光は次第に拡がってヒロとアキを包んでいった。


「結婚詐欺で訴えてやるからね!覚悟しなさい!ネットに色々書き込んでやるから!」


「ヒロ!」


「アキ!」


「うるさい!!黙れ!!」


その瞬間、アキの体は弾ける様に粉々になってしまった。


「アキー!!」



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