雪乃のおはなし
場面が変わると読みづらい、とご指摘がありました。ありがとうございます!
ホテル編に【 】を付けてみました。
私はこの山で生まれた。
気付いた時には冬山の雪の上で仰向けになって、空を見上げていた。
私の記憶の始まりは、何処までも青い空だった。
起き上がって辺りを見渡せば、凍てつく木々は樹氷となり、小さな川からは川霧が立ち昇っている。
空腹からなのか、寂しさからなのか、無性に苛立っていた。心は渇いて怒りに満ちていた。
溢れる怒りは風を起こし、黒い雲を呼び寄せ、激しい吹雪を起こした。
心のままに木々を薙ぎ倒し、雪崩を起こして、見える限りの全てのものを雪で覆ってしまった。
「ははは!君はどうしてそんなに怒ってるんだい?」
不意に背後から声がして、私は風の刃を飛ばす。
しかし、男…?そう、この男は何でもない様に手にした短刀でそれを払った。
そして、それが当たり前の様に私に歩み寄り、私の手を取って、
「僕の家においでよ。丁度お昼でお腹空いちゃったからさ。一緒に食べよう!」
そして、まるで何時もそうしているように、私と手を繋いだまま歩き出す。
暫く歩くと村に着いた。
「ババ様お腹空いたよ。ご飯まだ?」
「あら、お客かい?」
「お客じゃないよ。友達さ」
「そうかいそうかい、で名はなんというんだい?」
「私は…名はない」
「じゃあさ!雪みたいに綺麗な髪だから、雪乃ちゃん!」
「 ! …私は雪乃。」
「僕は達也だよ!」
「さあ、達也も雪乃ちゃんも中にお入り。」
こうして私は、暖かい家と、暖かい家族と、暖かい繋がりが出来た。
ここは、ユーパロ村。私の故郷だ。




