宴
夕方になり、ユーパロ村の住民はババ様の家に集まっていた。
それぞれが料理や酒を持ち寄り賑やかだ。
ババ様と同じ位年配の男性が1人、女性2人が上座に座り、成人男女が20人程、成人前の子供は25人。
皆アイヌの民族衣装の様な服装で、割とガッシリとした身体つきをしている。
皆が揃ったのを確認すると、
「カイ、ヒロ」
ババ様に呼ばれ、前に出る。
「初めまして、カイと言います。」
「ヒロです。」
「皆さん、もう知っていると思うけど、鏡面界から迷い込んでしまいました。皆さんに助けてもらい、この村にお世話になる事になりました。よろしくお願いします。」
「本当にありがとございます。」
皆、歓声と拍手で応えてくれた。
「今宵はカイとヒロの歓迎の宴じゃ。皆楽しみなさい。」
俺は、暖かく歓迎された事を本当に嬉しく思った。
みな珍しい迷い人への興味も尽きる事なく、酒を勧められて、常に村人達に囲まれ、子供達に抱き着かれて、俺達もすっかり村人に溶け込んで行った。
俺はこの人達となら、生きて行けると感じている。
現代社会の理不尽に付いて行けなくて、ドロップアウトしたかの様に山に籠った。
格好良くエコビレッジなどと言ってはいたが、内心では負い目があったのは確かだったのだ。
「ヒロ。俺はこの村で生きて行くよ。」
「ああ、お前らしくて良いよ。少しだけ羨ましいぜ」
「村づくり。楽しかったな。」
「はははっ!最高だった!」
そこに雪乃が現れた。
『私も飲もうかの』
雪乃は注がれた酒を一息で飲み干した。
「雪乃さんいけるね!」
『今夜は飲み比べじゃ!』
「わはははは!」
周りからも声援が送られ、盛り上がっていく。最高の宴はいつまでも続くのだった。