旅の終わり
『カイもレイヤも久しぶり。もう大丈夫そうね?怒って無いもの。』
「怒ってなんか無いよ。俺達が間違ってたんだ。」
『全てはこの時の為なんだから。私にとっても、皆んなにとっても、必要な経験だったの。』
「それでもよ。ごめんなさい。」
『うん。レイヤ、抱っこして』
「フフフッ。」
マリカはレイヤに抱き上げられて嬉しそうに笑う。
『やっと皆んな揃ったな。俺達の役目は終わったのさ。』
突然空間に切れ目が出来て、そこからテラが落ちてきた。
「テラ!ずっと見てたのかい?」
『ああ、上手い具合に事が進んだな。ロキが導く未来は、実に予測不能だ。』
『ロキはね、ヒビ割れた大地の裂け目を埋めてくれる様な役割なのよ。』
あこちゃんはロキの頭を優しく撫でながらそう言った。
「ええ。私も龍に成らなければ理解出来なかったでしょうね。」
『私達は成長する事を手に入れたの。素晴らしい事なのよ。』
マリカはレイヤに抱きつきながら、小さな声でそう呟いた。
「ロキ、俺も全然分かって無かったよ。ごめんな。」
「あはは!カイ!もう俺達は家族なんだぜ!気にするなよ!」
『俺も孤独な旅はうんざりだ。次元の龍なんて辞めてやる。』
『フフフッ、お疲れ様。あの時とは形は変わったけれども、こうしてまた会えたわ。私は幸せよ。』
「俺もレイヤも人に近い感覚が残ってるのは、成長したからなのかい?」
『龍と人間の歪みを利用して調和したの』
「成る程。人間として産まれたのは、そういう事なのね!」
「それが、成長なんだな!」
『宇宙』はこうなる事を予想していたのだろうか。
それにしても、辛く長い道のりであった。
『ねえ、地上に行きましょう?私は結びの旅館の露天風呂に入りたいわ!』
「あはは!恵みの神様が温泉に居たら、皆んな驚くぞ!」
『美味しいご飯が食べたい。』
「フフフッ。それじゃ、皆んなでお鍋ね!」
『俺も酒というものを飲んでみたいな。』
「ああ、今日は宴会だ!」
最初の家族は皆んな笑顔だった。
そうだ、これが遥か昔に見失い、長い長い時間を掛けて探し求めた幸せだ。
それは当たり前に、そこにある幸せだった。