幸せの記憶
翌日の朝、カイ達はいつもの様に家を出た。
「坊、実はさ、相談があるんだよ。」
「ん?何だよ?」
「相談と言うか、お願いだわ。昨日カイと話し合ってね。私達は遠い遠い湖の祠に、出来るだけ早く到着したいの。」
「坊、すまない。俺達の都合だ。」
「そうか。あの本の事だな。俺も気になるんだ!そうだな、俺達なら俺の池を通れるぞ!」
「いいの?」
「俺達は家族だぜ!当たり前だろ!」
「ありがとう!坊!」
レイヤは坊に抱きついて、坊も照れくさそうに笑っている。
「祠に着いたからって、冒険が終わるわけじゃないさ!」
「良し!これから行こうぜ!遠い遠い湖に!」
「フフフッ。坊、大好きよ!」
カイ達は坊の池のいつもの岩の上で、恵みの神様に祈りを捧げた。
「恵みの神様。この道を通る事をお許し下さい。そして、今、会いに行くわ『愛』待っていてね。」
レイヤは池に向かい短刀をかざし、カイと坊もそれに手を添える。
すると、池の水が渦を巻き、その中心にウォータースライダーの様に穴が空いた。
「さあ、行こうぜ!」
カイ達は次々とその穴に飛び込んで行った。
「あははは!!スゲー!!」
「こりゃぁ凄いな!」
「きゃー綺麗!スマホ持って来るんだったわ!」
水のパイプを滑りながら、移り行く景色に三人共心を奪われていた。
それは時に宇宙を飛んでいるように星々の間を抜け、時には次元の狭間を掠めるように様々な時代を高速で体験した。
「これは宇宙の記憶だわ!」
見たことの無い生物が栄えて滅び、無数の星々が誕生して、消えて行った。
「……あれは、」
「なんてこと…私達だわ。」
そしてその中には、『幸せ』な家族の姿もあった。
「あれが、カイ達の家族なんだな。」
「ああ。ああ、そうさ。」
そこにはカイがテラと肩を組み、笑い合うレイヤと『愛』。その中心には幼い『調和』の姿が見えた。
「ちゃんとここにあるじゃないの。例え『宇宙』の記憶であろうとも。無くなった訳では無いわ。」
「そうだな。その通りだ。」
「お?あれが出口じゃないか!?」
三人が進む先に、明るい光のゲートが見える。
「さて、いよいよだな!」
「イヤッホー!!」
「フフフッ。素敵な記憶だったわ。ありがとう。」
レイヤは振り返り、この夢の主に礼を言う。
そしてカイ達は光のゲートへと落ちて行った。