結びの回廊
「この本はカイとレイヤに引き寄せられた。又は、この本が貴方達を引き寄せたのかしら?」
「…なるほどね。マーサ、ソルありがとう。」
カイは目をつぶって黙って聞いていたが、特に動揺した様子も無い。
レイヤも同じ様な反応であった。
『カイ?あまり驚かないのね?』
「そうだね。新しい情報が多いけど、今出来ることはあまり無いかな。」
『そうね、考えるのは後にしましょうか。ご飯にしましょう?』
「腹減ったぜ!いただいます!」
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賑やかな食事の後、皆で裏庭の滝に集まった。
レイヤは滝のすぐ横にある大きな岩に手をかざす。
滝壺で釣りをしていたヘラブナ爺さんも、何事かとその光景を見つめていた。
「断たれた繋がりを結び、ここに新たな縁を繋ぐ。」
すると紫色の光が浮かび上がり、次第に渦を巻きながらその輝きを増していく。
そこへカイがその渦に触れながら、
「この道こそ、恵みの神様に繋がる回廊である。繋がりを辿り祈る者のみが通過するだろう」
紫色の渦は眩しい程に輝いて弾けた。
するとそこに洞窟の入口が現れていて、淡く紫色に光っていた。
「出来たわ」
「レイヤちゃん。ありがとう!」
「お館様も、ありがとう御座います。」
「宮川さん、さくらちゃん。これで何時でも行き来できるわね!」
『今日はもう遅いから、お風呂に入ってゆっくりして行ってね?』
「ありがとう。そうさせてもらいます。」
坊は中が気になってしょうがないようだったが、やはり入口から中へは入れないようだ。
「俺達じゃあ霊性が高過ぎて入れないんだよ。」
「私、試しても良いかしら?」
ソルはツカツカと歩いて行き、何とすんなり通過してしまった。
マーサは、何かに納得する様に頷いている。
「やっぱりね。…私、龍二達と一緒に鏡面界へ行くわ。」
「決めてたんだね?」
マーサは少し寂しそうだ。
「ええ。マーサ、何の相談もせずにごめんなさい。でも、これは私のけじめなの。」
「そうかい。…行っておいで。でも、必ず戻って来るんだよ?」
「うん。勿論よ、マーサ。さくら、龍二。これからよろしくね。」
三人は固く握手を交わした。
『そうと決まれば、送別会じゃな!』
『フフフッ。さあ、中に、入りましょう?』
この流れも久しぶりな気がする。
それぞれが色々な想いを胸に秘め、今日を忘れぬようにと心に刻んでいた。