『 龍の書 』 第五章
『源』の本質である原初の力は、全てに強制する力だ。
創造し、存在させる。それは『宇宙』の力と言っても良いものであった。
「在るがままに在る」という事とは、それ程強力であり、それ故に融通の利かないものであった。
世界は拡がり複雑さを見せたが、『源』にとっては『不純物』が増えて行くばかりの、つまらない光景であった。
まるで水に滴る墨汁の様に、溶けて馴染んで行く『不純物』は、我を不快にさせた。
『調和』の主張する『歪み』との融合などは、本来の在り様を重視する我にとっては到底受け入れる事は出来ない事であった。
しかし不思議に、『歪み』そのものに対しては不快感を感じる事はない。
この矛盾は、見逃せない事実であった。
何故なら、不快に感じないということは、『不純物』では無い事を意味する。
『宇宙』が創造した可能性がある。
そして、少なくとも我等『次元』『源』『理』『愛』には、正しく認識させない為の何かが働いているということだ。
我は元より『宇宙』が創造したものに対して作用する力など持ってはいない。
『次元』『理』『愛』『調和』、そして『歪み』に対して『源』の力は無力なのだ。
『次元』と『理』が龍となり、我も『源』の龍となった。
そして理解した。
『宇宙』は我等に世界を創らせたのでは無かった。
『宇宙』は我等を材料に世界を創り出したのだ。
そして、より変化を加速させる為に『歪み』を隠し、『調和』を遠避けた。
『調和』よ。済まなかった。
俺は君に何と詫びたら良いのだろう。
大切な家族なのに、自分でも信じられない。
直接会って謝りたかったが、どうやら時間が無いみたい。
僕たちは、この『龍の書』を『調和』に託そうと思う。
そして、やがて来るその時に、この本の元に集まろう。
僕たち家族のために




