阿寒湖の露天風呂
「阿寒といえばマリモよね?レイヤちゃんと来た時は観光船に乗ったわね!」
今は湖面全体が厚く凍り付き、雪で覆われた阿寒湖のほとり。さくらと共に、露天風呂に浸かりながらそんな白銀の世界を眺めているのは、レイヤであった。
「あの時は夏の暑い日だったわ。懐かしいわね。」
「あの時買ったアイヌコタンのお土産覚えてる?」
「もちろんよ。まだ私の部屋に有るわよ?」
「フフッ!木彫りのクマを自分で買う人は、レイヤちゃん以外居ないと思うわ!」
「まあ!それは失礼ね!あの可愛さが理解出来ない柳ちゃんが趣味悪いんじゃない!?」
「レイヤちゃん?私は、み、や、が、わ、なんですよ?」
「…さくらちゃん?私は、理の龍なのよ?」
「すいませんでした!!」
露天風呂の湯舟の中で土下座出来るさくらも、もう人間離れしている。
「フフフッ。それで、鏡面界へと渡りたいのだったわね。」
「ええ…出来そう?」
「トカゲに出来るのよ?可能だわ。ただ、霊性がこれ以上上がると不味いわね。」
「やっぱり?そろそろかなぁって、思ってたんだぁ。」
「後悔しないのね?」
「フフッ、うちのひとにも毎日聞かれるわ。私がここに残った理由なんて、レイヤちゃんが心配だったからなんだもの。でも、もう大丈夫だわ。」
さくらは真剣な面持ちで、当時を振り返る。トカゲとの闘争とは、それだけ命懸けであったのだ。
「……さくらちゃん。」
「…レイヤちゃん!」
「たまに真面目になるの止めてくれない?」
「それ酷い!レイヤちゃん、毒舌過ぎ!」
「フフフッ。私達はこれが良いのよ。」
「あはは!…それはそうね。」
「カイが新しい家を建てたの。ゲートはそこに置くわ。」
「確かに、一番安全ね。」
「皆んなには、さくらちゃんから伝えてね?準備はして置くわ。」
さくらはしっかりとレイヤの目を見て頷いた。
「1週間後に顔を出すわ。宜しくお願いします。」
「任せて!取って置きのゲートを作ってみせるわ!」
「…いや、普通でお願いします。」
こうして今夜も、レイヤの暗躍は人知れず続くのである。