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ソルの独り言


「ふぅ。何とかこの本の解読も終わりだね。」


「この人達は、世界を征服したかったのかしら?自己顕示欲や支配欲に溢れているわ。滅んで当然ね」


「ソルはトカゲを知らないのかい?」


「爬虫類のトカゲかしら?」


「いや、その昔この地にやって来た異星人さ。その一派は、この本を書いた者達と似たような性質を持っていてね。今では鏡面界を支配しているよ。」


「異星人?トカゲ人ですか。それに鏡面界とは何ですか?」


「奴らはトカゲ人だが、普段は人の姿に擬態して生活しているよ。こんな感じさ。」


マーサは部屋の壁に掛けられた大きな鏡に、トカゲの姿を映し出した。


「あら、これは本当にトカゲね。でも、私は見たことは無いわね。それにこの姿を見ただけで、凄く嫌な気持ちにさせられるわ。」


「本州の辺りには小さな集落を作っているが、この世界の現し世である世界、私達が鏡面界と呼ぶ世界は、トカゲ達に支配されてしまった。」


「それって、鏡面界の影響がこの地にまで及ぶ事はないのかしら?」


「少なくとも北海道には無いね。ここは、特に霊性が高い地域だからかも知れない。他の土地を調べて回る事はしていないから断言は出来ないが、少なからず影響は出ているだろうさ。」


「そうなのね。」


「気になるのかい?」


「そうね。このトカゲ達は良くないもの達だわ。何とかならないかしら?」


「駆除する気なら、難しくは無いだろうね。それこそ、カイがその気になれば、今この瞬間にでも全てのトカゲが恵みの大地と鏡面界から姿を消すだろうさ。」


「………」


「でも、カイはやらないだろう?」


「………そうね。」


「ソルならやりそうだけどね。」


「また封印されてしまうかも知れないわ。」


「フフフッ。懲りないわね。」


マーサはソルの事を気に入っていた。その太陽の性質を現す様に温かな性格と真っ直ぐに気持ちの良い気性は、一緒に生活していて気持ちが良かった。


「ソル。ババ様やアキはトカゲだったんだよ?でも恵みの神様との繋がりを得て、人となったのさ。」


「え!?それって、人とトカゲは同じ者って事だわ!」


「そう。魂の在りようが違うだけなのよ。繋がりを切られた魂はトカゲになる。繋がりを得た魂は人になるのよ。」


「私の罪の重さが、ようやく理解出来たわ。」


「ソルが繋がりを切った因果が、人々のトカゲ化を招いた。かも知れないね?」


−−−−−−−−−−−−−−−


「マーサさん。私の生きた世界は、こことは次元が異なっていたかもしれないわ。次元龍を信仰していた人達の本には、多次元を渡る秘術の存在も匂わせているもの。」


「考察としては面白いね。今いるトカゲ達は1万5000年程前にこの地に来たんだ。それより前に同じ様な歴史が在ったかも知れないが、記録等には残って無い。トカゲ達と龍の絵の本を書いた者達は非常に良く似た性質がある。それに、あの遺跡と今を繋ぐ何かしらも発見出来ていなない。」


「遺跡がダンジョンに在る事もそうだわ。私はダンジョンで生活していたわけでは無いもの。」


「ソルの国にも、ダンジョンは在ったんだね?」


「在ったわ。恵みの神様に繋がる道。遠い遠い湖の祠。同じものだとしか思えないの。」


「カメ吉くんといい、遺跡といい、今迄は誰も見つけられなかったのも不思議だわね。やはり、何らかの理由で、別の次元が繋がったのかしら。」


「私はそのお陰で自由になれたんだけど、この世界で私の封印が解かれた事に、理由が在るように思うの。」


「それを見付けるのも、ソルの仕事だね。」


「フフフッ、そうね。カルマを解消する機会を頂いたのだと、そう思えるわ。」


ソルは人々の笑顔が好きであった。

最初は家族の笑顔。次は友達の笑顔。そして、隣人の笑顔。


ソルの力が増すに連れ、笑顔が増えて行った。


そのやり方は間違っていたが、ソルは皆んな笑っていられる世界を夢見ていた。


そして、長い長い封印を経ても、その気持ちに変わりはない。


「恵みの神様。私はやっぱり私でしかないわ。もしも、また間違えたなら、ごめんなさいね?」


小さな小さな独り言だったが、ソルは何となく誰かの笑い声が聞こえた様な、そんな気がしたのだった。


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