龍であることの、その先
カイはサラやババ様達がこうして集まり女子会をしてくれる事を嬉しく思って見ていた。
シロと雪乃は皆を取りまとめ、マーサやレイヤが悪戯に仕掛けてくるイベントも微笑ましい。
カクさんとの出会い方こそ事故であったが、大切な縁である事には変わり無い。
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カイは珍しく一人で風呂に浸かっていた。
少し涼しくなった季節のせいだろう、湯けむりが立ち込めて、周りの景色も朧気である。
龍に生き方などというものは無い
そうなのだ。
だからこそ、カイはテラに問うたのだった。
自分を見つめれば見つめるほど、カイは何かを欲する気持ちがない事に行き着く。
皆と居ると暖かな愛を感じる。
それはとても心地よいものだが、全ては求められて、与えられたものだった。
龍はそもそも生命体では無いのだから
それは、存在の在り方であって、カイにとっては原初の力でしか無い。
テラは、
人で在りたいなら力を使うな
と言った。
「それでも、俺が、俺で在りたいならば、向き合わなければ成らないな。結果が人で無くなるとしても。」
これ以上、カイはそこから目を背けている事に無理を感じていたのだ。
いつの間に入って来たのだろう。そんなカイにシロと雪乃が寄り添って来る。
『その時は、私達も一緒よ。』
『フフフッ。カイを何処かに縛り付けたりせぬよ?繋がりとは、そういうものじゃ』
『在るがままに在る。その先に私達も居るわ』
「……そうか。そうなんだね。」
『本当に、不器用な所は変わらんのう?』
「……怖かったんだ。」
『知ってるわ』
シロは優しくカイを抱きしめた。
『今日はお酒は要らないようじゃな?』
二人に抱きしめられたカイは、泣いている様にも見えた。
それは、僅かに残るカイの人間性が涙となって頬を伝っていたのかも知れない。




