宜しくお願い致します
夜行性の私達は、昼間は家に鍵を掛けて用心して眠るのです。
その日もしっかりと戸締まりを確認して、布団に入りました。
防犯対策にペットのポチを飼っていましたから安心していたのですが、そのポチが突然吠え始めたのです。
何事かと玄関を覗いてみると、小さな男の子がドアを壊して家に侵入してきたではありませんか。
私は急いで身支度を整え、仲間を起こして回りました。
こんな事は、あのクラーケンに襲われた時以来の大事件です。
私達は戦う術を持ちませんが、相手を弱体化させて時間を稼ぐ事は出来たので、その男の子にも術を掛けました。
どうやら上手く行ったらしく、驚いたその男の子は家から出て行ってくれたようです。
私達がほっと胸を撫で下ろして居ると、今度は恐ろしい入墨をした二人組が短刀を振りかざして襲って来たではありませんか。
もう私達にはどうする事も出来ませんでした。
その入墨の男が恐ろしい呪文を唱えると、私は魂を縛られて、ただその男に従うしか無かったのです。
そこで私の意識は暗闇に閉ざされました。
『…と言っておるよ?』
「なんて悪い奴なんだろうな!」
「酷い話ね!」
「……本当に。………ごめんなさい」
『これは私達全員の責任ですね。』
『しかし、私はカクさんとして新たな生を得ました。奥様方の末席に加えて頂ければ幸いで御座います。』
「何と健気なんでしょう」
サラは涙ながらにカクさんの手を取った。
『私達には、古より強き男が女を奪い妻とする習わしがあるのです。私を見初め奪ってくれたカイに、一生を捧げますわ』
「その様な風習は聞いたことがあるが、とても古い時代だったはずじゃ」
『カイ、分かっておるな?』
「……カクさん。これから宜しくお願いします。」
カクさんは、それはそれは綺麗な大和撫子であった。
何故か雪乃の用意した十二単衣を着こなし、長い黒髪に紅を引いた口元はまるでお雛様のようであった。
『改めて、シロさん、雪乃さん、ババ様、サラさん、マーサさん。宜しくお願い致します。』
「………マーサさんはどうして来てるの?」
「え?既成事実よ?」
「フフフッ。」
……レイヤ、君は俺をどうしたいんだろう。