方舟
「さて、行くわよ」
「次はどんな所なんだ?」
「空?だわね。」
「行ってみようぜ!」
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「ここは、神殿か?」
「人は居ないみたいね?」
「龍の像は無いな!」
カイ達は大きな神殿の中を見て回ったが石造りの建物の中には気になるものは無かった。
「奇妙な程何もないな」
「そうね。外にでましょうか?」
この神殿は、少し小高い山の上に建てられているようで、窓からは同じ様な石造りの家が建ち並んでいるのが見える。
「ああ、空ってそういう事なのか」
「この街が飛んでるんだな!」
「ファンタジーね。街まで行きましょう?」
神殿の周りは、以前は立派な庭園であったのだろう。
石畳や噴水の跡も見られたが、手入れのされないそれらは草木に覆われている。
山からの湧き水があるのか、近くには小川が流れていて、虫や鳥達も見ることが出来た。
「自然の豊かなところね」
「そうだね、誰も居ないのが不思議なくらいだよ」
「この果物、食えるかな?」
「拾い食いしたら、雪乃さんに怒られるわよ?」
「少しなら平気だって!」
坊はそう言って食べ始めた。
「すげー美味いぞ!」
「少し採って持って帰ろう」
「フフフッ。わかったわ」
少し離れたところには、数頭の鹿が草を食べているのも見えた。
「ここも、手帳には載ってないわね。古い場所だと思うけど、同じ階層よね?」
「うん。階層は移動してないみたいだ。下に砂漠が見えるよ」
「あの砂漠も、以前はここみたいに豊かな土地だったのかしら?」
「まるで方舟みたいだ」
「本当にそうなのかも知れないわね」
街に着いてから家の中を調べてみたが、建物以外は何も無かった。
「人が住んだ形跡が見当たらないな」
「不自然過ぎないかしら?これだけの街なのよ?」
「モデルハウスなのかも知れないね。街ごと」
「何か、余りいい感じはしないな!」
結局何も見つけられずに、果物を持ってマーサ達と合流した。
「これはチーの実だわ。少しもらってもいいかしら」
ソルはこの果物を知っているようだ。
「もちろんよ。はい」
「懐かしいわ。ありがとう!」
「私もそこに行ってみたいね。明日は一緒に行きましょう?」
「うん。そうだね!本当に何も無くて手詰まりなんだ。」
「それも気になるんだよ。それからね、本の解読も少し進んでるんだ。その話も明日するよ。」
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『チーの実というの?初めて見るわね』
『そうじゃな。ソルも食べておったのじゃから、問題ないじゃろ?』
「すげー美味いぞ!」
『フフフッ。坊は相変わらず食いしん坊ね』
「遺跡から行ける所は手帳に載ってないんだ。それも不思議なんだよ。」
『そうじゃな。あの辺りはそれ程深いわけでは無いからのう。新しい発見があるとは思えんが。』
カイは思い出したように、皆にテラの話をした。
『次元龍のう』
『切り取られた次元が繋がったのかしら?』
「それなら説明が付くわ。」
どうやら謎の答えが見つかりそうな気がして来た。おそらく、遺跡に残された本の中に何か記されているのだろう。
龍に剣を向ける人間達。
カイは、あの絵が気になって仕方がなかった。