次元龍 テラ
「どうかしら?」
「すげー!ついにやったなレイヤ!」
「ああ!凄く綺麗だよ!」
「ピカピカに光ってるな!」
砂漠の遺跡、龍の像の間でレイヤは龍化した。
その體を覆う青く輝く鱗に青いたてがみ 、そして何よりその青く優しい瞳が素晴らしい。見つめていると深く惹き込まれる様な不思議な瞳であった。
レイヤが人の姿に戻ると、髪の色も青く変わり、瞳もあの龍の瞳のままであった。更に龍のアザもカイの様に広がっている。
「その姿も恰好良いね!」
「カイとお揃いだな!」
「フフフッ。親子だもの!」
「あはは!そうだったな!」
「理の力が使えるみたい。と言っても、もう使ってたのよね」
「龍化すると、もっと自然に扱える様になるよ?」
「フフフッ。それは楽しみだわ!」
「レイヤ!さっそく水鏡出してみようぜ!」
「そうね!」
レイヤは亀の模様に触れ、新しい水鏡を出現させた。
「この台座に登録されているのは13箇所ね。ソルの神殿とカメ吉くん、残るは11箇所だわ」
「すげー進歩だな!」
「これは本当に驚くね!」
「うん。自分でも驚いてるわよ。でも、そのうち朽ち果てて砂に埋まってしまった所が6箇所あるわ。」
「あぶねー!砂に埋まっちまうじゃないか!」
「昨日は運が良かったわね?」
「レイヤ以外は使わない方がいいな」
「そうね。マーサさんに伝えてくるわ」
レイヤは居住区を調査しているマーサの所へと向かって行った。
改めて首の落ちた龍を見る。
カイはこの像が気に入らなかった。
あの本も何故か妙に気に掛る。
カイは像に手を向け、
「そなたの在り様を示せ」
途端に像は光り輝き、そして首の繋がった龍となった。
そう、一人の龍に。
『ほう?これは仮初めの生を得たのか。』
「俺が、呼びました。迷惑でしたか?」
『いや、そうでもない。在りし日を思い出すのも悪く無いよ』
「俺はカイ。旅の途中で首の落とされた貴方の像を見つけました。」
『そうか。我は次元龍。名はその次元によって異なるのだが、この地ではテラであったな。』
「俺は坊って呼ばれてるんだ!よろしくな!」
『ほう?そなたは…また酔狂な事をしておるのう。…まあ、良い』
テラはふわっと霞むとカイと良く似た雰囲気の男性に姿を変えた。
『この地に留まれるのはそう長くはない。何か話したい事はあるか?』
「俺は最近源の龍として覚醒したばかりだ。その前は人であった。龍として生きる事とはどういう事なのか、それが聞きたい」
『そうか。良いだろう。』
テラは台座に腰掛ける。
『まあ、座れよ。』
そう言って笑う姿は、本当にカイの様だ。
『龍とはな、力そのものだ。人では無い。』
「………」
『まして生きてはいない。だから、生き方など無いよ。』
『我は次元を渡り歩いている訳では無い。次元そのもの。』
『カイは原初の力そのものということだ。』
『まだ人で在りたいのなら、余り力は使わぬことだな。』
次第にテラの體が光り始め透明になっていく。
『そろそろ時間だな』
「テラ、ありがとう」
『お前は良い龍だ。また会おう』
テラが消えた後には、首の繋がった龍の像があった。
「カイ。辛いのか?」
「俺には皆んながいる。辛くなんか無いさ!」
「そうだな!オレもそうだ!」
カイは知っている。カイと坊は同じだ。だからこそ、今を精一杯楽しんでいるんだと。