地下神殿
水鏡を潜った先は地下の大きな空洞であった。
天井は数百メートルはあるだろうその空洞の中央には湖があり、そこに浮かぶように光り輝く神殿が見える。
その様は、まるで神殿全体が淡いオレンジ色に燃えているようにも見えた。
「目的地はあの神殿でしょうね」
「うん。行ってみよう」
湖の水は透明で清らかであったが、坊の池の水の様に青く光ってはいない。
生き物が住んでいる感じもしなかった。
三人はそのまま空歩で神殿へ向かう。
所々にかがり火が置かれ、更に周囲を照らしている。
中に入って行くと装飾など派手さは無いが、結界の中の様な魔を寄せ付けない神聖な空間になっているのが分かった。
その一番奥の祭壇に、一つの棺が置かれてある。
ガラスの様な透明のその棺に眠るのは、燃える様な赤い色の髪をした若い女性であった。
ギリシャ神話に出てきそうな服を着たその女性は、まるで眠っている様で、生きたまま封印されているのかもしれない。
「この人は生きているわよね?」
「そうだけど、どうしよう?」
「悪い人じゃ無さそうだな!」
「眠っているのを邪魔するのも気が引けるよね」
「そうね。帰りましょうか?」
「他の扉にいこうぜ!」
俺達は帰ろうとすると、
『…いやいや、ちょっと待て!』
「…え?」
『いやいや、もう少し何かあるだろ?こんな美女が意味深に寝かされてるんだぞ!』
「…誰だろね?」
『どうしてこんな所に!?とか、何とか助けなきゃ!とかさ!』
「…もしかして、この女の人かしら!?」
「何か面倒臭そうだから帰ろう」
「オレも!何かそう思った!」
『…すいませんが、この封印を解いてもらえませんか?』
「はあ…どうして封印されたんですか?」
『…それは……大した事じゃ無いの。本当よ?ただ…ちょっとね?分かるでしょ?』
「帰りましょうか。」
『すいません!昔、神様をかたっていて、恵みの神様に怒られちゃったの!もう随分反省したわ!だからお願いします!』
「カイどうしよう。」
「反省してるのは分かるけど、うーん」
「カイ、助けてやろうぜ!」
「俺達がここに来たのは意味があるんだろうな。」
「そうね。水鏡を繋げたのは私だし、そうかも知れないわ。」
「レイヤなら解除出来るんじゃない?」
「そうね」
『ありがとう!お願いします!』
「わかったわ…」
レイヤは棺に近づき祈り始めた。
「恵みの神様。この者の封印を解きます。お許し下さい。」
すると暖かな光が降り注ぐ。
「理を解きます。」
棺が白く輝き、
『あぁ!ありがとう!』
起き上がり涙しながら、その女性はレイヤに頭を下げた。
『私はソル。長い長い封印を解いて頂きありがとう御座いました』
「私はレイヤです。よろしくね!」
「オレは坊って呼んでくれ!」
「俺はカイ。俺達は遠い遠い湖を目指して旅をしてるんだ」
『それは大変な旅ですね。どうか私もご一緒させて下さい!』
「そんなに気を使わなくても良いわよ?」
「そうだぜ!もう友達だからな!」
「あはは!坊は皆んな友達だものな!」
『ありがとう!』
「さあ、帰ろう!」
こうして、また新しい仲間が増えたのであった。