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36. 塗り替えたいもの (3)

 店先で話していた通り、結局アーロンとレティシアがソープフラワーを一つ購入した。選ばれたのは、まだ落ち着きを取り戻していないアイリスの意見を参考にした、青いバラのボックスタイプ。これまた話していた通り、リビングに飾るとのことだった。


 そうして現在。未だしおらしいアイリスを連れ、今度はプリンを買った洋菓子店へと向かっていた。気のせいか、いつもよりアイリスの歩幅が小さく思えた。合わせて歩くが、やはり少しだけ違和感がある。


「本当に大丈夫ですか?」


 あまりにも気になったので、一度立ち止まって声をかける。一方、声をかけられたアイリスはといえば、やや大げさとも言える程の反応を見せた。


「だっ、大丈夫っ、です!」

「どう見ても大丈夫じゃないですけど」


 狼狽えているのがこれ以上なくよく分かる表情だった。口があわあわと動いていて、いつも通り話すことすらできていない。


「次のお店に着く頃には、いつも通り葵さんに『可愛い』って言えるようになりますからっ」

「一生そのままでいてください」


 混乱具合を表しているかのように、話に脈絡がない。もしくは、落ち着いたと判断する材料がそれなのか。もしそうだとすれば、これ程嫌な判断基準もない。


「いっそ話してしまえば、多少は楽になるんじゃないですか?」

「話せるわけがないって言ったじゃないですか!」

「私も、流石にそれは無理だと思うわ。少なくとも今は」

「はぁ……?」


 少しでも楽になればと思っての提案だったのだが、やはり自分には話せないことらしい。しかも、それはアイリスだけではなく、レティシアまで同意見とのこと。アイリスがこんな風になってしまうようなことを吹き込んだのが、まさにそのレティシアなのだが。


 そして、そんなアイリスには一つ残念なお知らせがある。


「着きました」

「早い……!」


 次の目的地に着くまでに落ち着くと言っていたが、件の洋菓子店はもう目の前にあった。そうなれば、尋ねることなど一つしかない。


「落ち着きました?」

「そんなわけがないですっ」


 返事は予想通りのものだった。




 アイリスが落ち着くためという、よく分からない一分を過ごしてから、次なる店に足を踏み入れる。相も変わらず、甘い匂いのする空気が出迎えてくれた。


「もう空気がいい匂いです」


 何とか落ち着きを取り戻したように見えるアイリスも、自分と同じ感想を抱いたらしい。興味を引かれるものが多いのか、あちこちへと視線を彷徨わせている。


「色々ありますね」

「お土産は結局看板商品にしましたけど、前に来た時もあれこれ迷いましたからね」

「あれ以外に何か買ったんですか?」

「いや、あれ二箱だけです」


 それも含めて迷いはしたが、買ったのは四個入りのプリンの箱を二箱だけだ。自然とそう答えたところ、何か違和感を覚えたのか、アイリスがさらに質問を重ねてきた。


「あれ? 太一さん達にも渡してましたよね? 私達にくれたのと合わせて二箱ですけど、葵さんの分は?」

「買ってません」

「なんでですか!」


 いつもの言葉が、いつもとは違う状況で発せられる。何でもないことではあるが、少し新鮮な気がした。


「他人にはお土産を買うのに、どうして自分には買わないんですか」

「まあ、いいかなって」

「『いいかな』じゃないんですよ。何もよくないです」

「アイリスさんは食べられたんですから、別にそこまで気にしなくていいじゃないですか」


 自分のお土産を買わなかっただけで、どうしてここまで説教をされているのかがよく分からない。お土産を渡す側が食べていないことが、アイリスに何の関係があるというのだろうか。


「言ってくれたら、うちで一個余るのを渡したのに」

「ほんとですよ! あの一個を巡って、どんな骨肉の争いが起こったか!」

「結局、アイリスがいの一番に二個確保してた覚えがあるけど」

「『骨肉の争い』って言葉、最近覚えて使いたかったんですか?」

「前から知ってました!」


 自慢げに言うアイリスだったが、否定すべきはそこではない。つまり、アーロンの言う通り、即座に二個確保したのだろう。


「お土産として渡したものですから。そこまでしてもらわなくても」

「葵さんがそうでも、この子が気にするの」

「そうです!」

「どうしろと」


 表情が変わっていないので、アイリスから気にしているという雰囲気はあまり感じられないが、それはともかくとして解決策がない。自分が気にしていない以上、周囲がどうこうできるものでもなかった。


 だが、そんな思いとは裏腹に、アイリスから一つの提案がなされる。


「今日、葵さんが食べる用に買っていきましょう」


 当然と言えば当然の、そんな提案だった。けれども、それには一つ問題がある。宿泊学習の時に自分用を買うのをやめた、一番大きな理由がまたしても立ちはだかる。


「一人暮らしなので、四個もいらないんですよね」


 結局それに尽きるのだった。家族と一緒に暮らしているのなら何も問題はないが、一人暮らしだと話は別である。複数個入ったものを買っても、処理に困るのだ。


「私なら四個でも食べられます」

「誰もあなたの話はしてないわよ」

「太るよ?」

「太くなんかないです!」

「どうして僕に言うんですか?」


 余計なことを言ったのはアーロンなのに、むっとした顔は何故か自分に向けられる。「とばっちり」という言葉がこれ程似合う状況もそうそうないだろう。


「アイリスのことはともかく、この四人で四個入りってことでどうかな?」


 自らの発言で娘が面倒なことをしているのを無視し、アーロンが追加でそう提案してくる。確かに、それならば四個入り一箱でちょうどの計算である。


「いいんですか?」

「いいも何も、美味しかったからね。もう一回食べられる機会があるのなら、二人も喜ぶだろうし」

「そうね。これで数の問題は大丈夫よね?」

「そういうことなら……」


 レティシアにも押され、軽く頷く。一番の問題が解決できるのなら、特に断る理由はない。ありがたく、アーロンの提案に乗ることにした。


「決まりですねっ。じゃあ、他のも見に行きましょう!」


 とりあえず絶対に買うものが決まったということで、他にもあれこれ店内を見て回ろうとアイリスが歩き出す。自分としては、最早恒例となりつつある手首を掴まれながらの第一歩だった。


「分かりましたから。そんなに引っ張らなくても」


 そんな自分の声が聞こえているのか、いないのか。それとも、聞こえているのに聞こえていないふりをしているのか。何にせよ、足取りが軽そうなアイリスの様子を見ていると、手首の解放は少し先になりそうだと、そう思ってしまうのだった。




「お店に入った時から分かってましたけど」

「うん?」

「やっぱり、うちとは比べ物にならないくらい種類が多いですね」

「それは……」


 以前来た時に思った通り、そして今アイリスが言った通り、商品の種類がとても多い。それだけではなく、一つの商品に対しても様々な味が展開されていて、さらに種類が多いような印象を与えている。


「流石に真似できないですよね?」

「無理ですって。働いてる人数が違い過ぎます」


 分かりきったことを聞くような雰囲気で、アイリスが尋ねてくる。当然ながら、自分の答えもある程度予想できたことだろう。


 Dolceria pescaには、四人しか従業員がいない。しかも、その内二人は接客専門である。この店の従業員が何人いるのかは知らないが、この規模を真似できるとは到底思えない。


「ですよね……。もう少し種類が多かったら、お客さんがもっと増えるかなって思ったんです」

「その分、値段を覚えるものも増えますけど、それは大丈夫なんですか?」

「大丈夫です!」


 そう言うアイリスの顔は自信に満ちている。四月に初めて会った時の緊張したような表情とは、まるで違う表情だった。


「随分頼もしくなりましたね」

「それはもう! たまに葵さんがいない日もあるんですから」


 自分の言葉が嬉しかったのか、その顔に明るい笑みが浮かぶ。


 最初の頃は常に一緒に接客していたアイリスだが、最近は一人でシフトに入ることが認められていた。初めてその日が訪れた時には不安を覚えたものだが、どうやらそれも杞憂に終わったらしい。本当に頼もしく成長したものだ。


「一応、秋に向けて新しい商品の開発はしてるみたいですよ」


 そんなアイリスを見つめながら、最近得た情報を口にする。まだ確定ではないものの、高い確率で新商品が出ると思っていいだろう。


「ほんとですか?」

「ですね。二人がそう話してましたから」


 そうは言っても、いきなり大量に種類が増えるということはないだろうが。あくまで個人店の範囲である。


「楽しみですね!」

「試食が?」

「試食も、です」


 からかうように言ってみたところ、しっかりと訂正された。過去に新商品を開発している時、太一と柚子から何度か少量の試食を頼まれることがあるが、アイリスは販売後にもたまに買っているらしい。渡した給料が、少額ながら店に返ってくると太一が話していた。


「……その分運動もしなくちゃ、です」

「……」


 目を逸らし、ぼそりと呟くアイリス。あまりにも突っ込みにくい内容だったので、無理矢理何も聞かなかったことにした。




「あ」

「何か見つけました?」

「これです!」


 店内を見て回る中で、突然何かに反応したアイリスが指差したのは、茶色と白色のお菓子だった。さらに近い色で言うならば、チョコレート色とレグホーン色である。


 商品説明を見るに、一口サイズのバームクーヘンをチョコレートでコーティングしたお菓子らしい。色の違いは、ミルクチョコレートを使っているか、ホワイトチョコレートを使っているかの違いだった。


「こういうのが好きなんです!」

「そういえば、チョコレートもバームクーヘンも好きだって、前に言ってましたね」

「はい!」


 見ているだけなのに楽しそうにしているアイリスを見ながら、記憶の引き出しからそんなことを引っ張り出す。つまり、目の前にあるお菓子は、アイリスの好きなものを詰め込んだ、ある意味夢のようなお菓子ということになる。


「この二つの組み合わせで、美味しくないわけがないです」

「なるほど。それでよく、太一さんと柚子さんに頼んでるんですね。こういうのを作ってほしいって」

「職権濫用ですね!」

「自分で言いますか」


 本当に身も蓋もない言い方である。今のところアイリスの意見が採用される気配はないが、もし試食として提供されたなら、その時はアイリスが何か手を回したと考えていいだろう。


「試食、ありますよ」


 手を回すとしたら、一体どんな方法があるのだろうか。そんなことを考えながら近くを見てみれば、そこには一口サイズをさらに小さく切ったものが、これまた小さな容器に詰められていた。ミルクチョコレートのものとホワイトチョコレートのものが、別々に用意されている。


「食べます」


 しっかりとした返事だった。一瞬の迷いもない、確固たる思いが感じられる一言。その勢いに押されたのか何なのかは分からないが、とりあえず一つ取り出して差し出す。


「いただきます!」


 一度受け取ってから食べるのかと思いきや、そのまま直接口の中へ消えた。アイリスといい、碧依といい、何故自分の手を挟まないのか。


 しかも、今回は碧依に渡した棒状のお菓子ではなく、それよりもさらに小さなキューブ型。思わず早めに手を引っ込めたが、危うく指先が唇に触れるところだった。


「どうして直接なんですか」

「美味しいですっ」

「話を聞いてますか?」


 無駄だと思いつつ、それでも一応は聞いておく。幸せそうに頬を緩ませるアイリスの様子を見る限り、やはり聞いていないのだろうが。


「あー……」

「いや、だから……」


 一つ目を食べ終えたアイリスが、返事をすることもなく小さく口を開ける。もう一つ、今度はホワイトチョコレートの方を食べさせてほしいという意味だろう。


「……」


 ストレートで投げ込んでみようかとも思ったが、コントロールに自信がないので流石にやめておいた。


 その間も、まるで雛鳥が餌を待つように、小さな口は開いたまま。再び指の引き抜きチャレンジが発生して緊張するのもそうだが、それよりも、アーロンとレティシアがこちらを眺めているのが恥ずかしかった。


 アイリスを挟んで向こう側から眺めているので、アイリスが気付くことはない。気付いたところで、その行動を止めるのかという部分は微妙ではあったが。


 そんな逡巡を繰り返しているうちに、とうとう痺れを切らしたアイリスから催促をされる。


「葵さん、早くください」

「自分で食べる選択肢は?」

「葵さんがちょっと照れてるのが可愛いので、それはなしです」

「何遊んでるんですか」


 明かされた魂胆は不純なものだった。そして、可愛いと言える程に回復していた。有言実行である。


「そんなわけで、お願いします」

「後ろで二人が見てますよ」

「関係ないですね。私からは見えないので」


 カーブで口の端を掠めながら投げ込もうかとも考えたが、そもそもカーブを投げられないので諦めた。


「……」


 アーロンとレティシアがにこにこと見つめてくる中、無言で追加の一切れを差し出す。


「ん!」

「あ……」


 指先が僅かに唇に触れてしまったことで、今回の引き抜きチャレンジは失敗に終わった。どうするべきか迷うも、すぐさま答えが出ることはなく、一旦そのまま手を下ろす。突き刺さる二人分の視線が生温かかった。


 ハンカチを持っていることを思い出して指先を拭う頃には、アイリスが二つの食べ比べを終えていた。


「個人的にはホワイトチョコレートの方が好きです」

「感想は真面目なんですね」


 あんなことをしたというのに、アイリスはいつも通りの様子にしか見えなかった。自分は色々と緊張したのに、これでは不公平ではないだろうか。


「どきどきしました?」

「別の意味で」

「うん?」


 アイリスが言っているのは食べさせるという行為そのもののことだろうが、自分からすれば、相手の両親に見られているという意味で緊張した。こんなところで、こんな形の緊張を強いられるとは思っていなかったということも大きい。


「それはもういいです。で、買うんですか?」

「もちろんです。買わない選択肢はありません」


 そう言いきったアイリスが、宣言通りホワイトチョコレートの方の箱を手に取る。大事そうに抱えるその姿は、小さな子供がプレゼントを貰った時のように見えてしまう。本人に言うと絶対に怒られるので口にはしないものの、それだけ嬉しかったということだろう。


「思わず来ちゃいましたけど、いいものが見つかってよかったです」

「思わずって何ですか」

「こっちのことなので、葵さんは気にしないでください」

「はぁ……?」


 流れで何やら不思議なことを口にしたアイリスだったが、残念ながらその真意は教えてはもらえないらしい。恐らく両親譲りのにこにことした笑みを顔に浮かべ、誤魔化すようにそう言いきった。


「決まったみたいね」


 一部始終を眺めていたアーロンとレティシアが、そのタイミングで合流する。レティシアの笑みがいつもより深いように見えるのは、自分の気のせいなのか。


「これにしました!」

「その前にいた時から分かってたけど、やっぱりホワイトチョコレートなのね」

「また『やっぱり』?」

「だって、好きなんでしょ?」

「そんなに分かりやすい?」

「分かりやすいとか分かりにくいとか以前に、十六年も見てると大体のことは分かるわよ」

「……」


 これ以上ない程に親子らしい会話が、目の前で繰り広げられる。自分はもう知ることができない、親子の会話が。


「一緒に買う?」

「これくらいは自分で買う。ちゃんとバイトしてるからね!」

「ちゃんとできてる?」

「きちんと成長してます」

「えへへ……」


 心の中に少しだけもやもやしたものを抱えていると、レティシアから唐突にそう尋ねられる。わざわざ考えるまでもないことではあるのだが、そんなこともあって、今回の返事はほとんど無意識に出た。


「そう。それならよかった。それじゃあ、お会計をしちゃいましょうか」

「はーい」


 その提案を受けて、以前も並んだ会計の列に並ぶ。話していたプリンの箱に加え、何かしらの箱を持っていたアーロンとレティシアが一つ前だった。


「いつか、葵さんに心配されずに一人でお仕事ができるようになりますね」

「今でもそうだと思いますけど」

「聞いちゃったことがありますもん」

「何をです?」

「シフトが一人の時は心配だって、太一さんとお話ししてるのを」

「あー……」


 そう言われて思い返してみると、確かに太一とそんな会話をした覚えがあった。あの時はバックヤードに二人しかいなかったので油断していたが、しっかり聞かれていたらしい。


「まぁ、そうですね。正直なところ、少し心配な部分はあります」


 先程は「頼もしく成長した」と言ったものの、気になる部分がないかと問われると、どうしても思い浮かぶことはあった。太一と話しているのを聞かれてしまった以上、隠しても仕方がないと判断して、素直にそう告げる。


「ほら、やっぱり」


 少しだけ怒ったような顔を見せるアイリスだが、どちらかと言えば、ばれているのに隠し事をされたことへの呆れが強いように思えた。


「咄嗟の出来事に弱いのは変わってないですからね」

「うっ……!」


 結局、心配なのはそこである。普段の業務は何も心配していないが、アドリブが苦手で、どうしても対応が遅れがちになる。客層的にあまり気にされないことがほとんどだが、万が一ということもない訳ではない。そんなことを考え始めると、自分の心配性な部分が顔を覗かせるのだった。


「それについては……、これからの成長に期待してもらうということで……」

「分かりました。不意打ちの回数を増やしますね」

「そういうことじゃないですっ」


 アドリブ力を鍛えるのに適していると思ったものの、何やら必死な様子の本人に却下されてしまった。却下されたところで、不意打ちをするかどうかは自分次第なので、正直あまり関係ないのだが。


「そもそも、そんなつもりでやってないですよね?」

「そうですね。アイリスさんの反応が面白いからやってます」

「ほら! もぉー!」


 自分の答えであっさり荒ぶるアイリス。手に持った箱がなければ、そのままぽかぽかと殴りかかってきそうな勢いだった。


「もうやっちゃだめですからね!」

「それは約束できないですね」

「なんでですかっ」


 落ち着かせるようなことを何も言っていないので当然なのだが、会計の直前までそのまま荒ぶり続けていた。




「ほらほら! どうぞ!」

「いや、スプーンを使いますから」

「さっきのお返しです。そのまま食べちゃってください!」

「だから……」

「さぁ!」

「……」


 やたらと勢いがいいアイリスによって、口元に抹茶色のソフトクリームを近付けられる。ソフトクリームとしては一般的と言える鮮やかなその色は、抹茶味なので当然の色。


 持ち主は、これまた当然差し出しているアイリスである。一体何が楽しいのか、笑みを浮かべながら自分に向けて差し出している。


 もちろん、その意味は考えるまでもない。そもそも「食べろ」と言われた。


「……」


 何故こんなことになったのか。その発端は、あの洋菓子店を出た辺りまで遡る。




「さて。もういい時間だし、そろそろ帰ろうか」

「あれ? もうそんな時間?」

「余裕がないこともないけど、あんまり急いで帰ることになるのも嫌だからね」

「それに、いつものもあることだし?」

「あ、そっか。……え? 葵さんも巻き込むの?」

「せっかくだから」


 最後の最後に荒ぶるアイリスを宥め、会計を済ませて店を出る。そこでアーロンが切り出したのは、次の店の話題ではなく、帰路のことだった。


 連れてきてもらっている手前、そこに口を挟むつもりはないが、どうにも内容が伝わってこない部分があった。レティシアの言う「いつもの」とは何なのか。そして、それに巻き込まれるとは一体。


「いつもの、ですか?」


 分からないのであれば、知っている人に尋ねてしまうのが手っ取り早い。今回のように、考えても答えが出ないようなことなら、それが一番である。


「そうね。三人で遠出した時の帰りに、必ずすることがあるの」

「はぁ……?」

「そんなに変なことじゃないから、あと少しだけ付き合ってもらえるかい?」

「それは構いませんけど、何を?」


 出口に向かって歩みを進めながら、再度尋ねる。その答えはアイリスから返ってきた。


「ソフトクリームを食べます」


 答えを聞いても、理解はあまり進まなかった。


「……?」

「え? ソフトクリームって知りませんか?」

「その喧嘩、言い値で買います」


 思わず首を傾げた自分に、アイリスの意外そうな一言が飛んでくる。あまりにも失礼なその言葉に、即座に臨戦態勢を整える。準備さえしっかりしていれば、アイリスに負けることはない。


「だって、葵さんが『意味が分からない』って顔をしてるんですもん」

「そこまで読み取って、どうして『ソフトクリームの意味が分からない』になったんですか」


 考えが読めるのか読めないのか、どちらか一方にしてほしい。これは流石にわがままとは言われないはずだ。


「葵さん、意外と常識がないことがあるので……。自分のお土産を買わなかったりとか」

「常識がないは流石に……」


 真顔で言われたのは堪えた。声のトーンも本気だったのが、言葉の威力を一段底上げしている。


「あ、いや、悪口とかじゃなくて。葵さんって、ちょっと浮世離れしてるところがあるじゃないですか」


 自分が軽く傷を負ったことも見抜いたのか、先程の言葉を何とかしてオブラートに包んでくれるアイリス。それはそれでどうなのかという表現ではあるが、「常識がない」と言われるよりはずっと気が楽である。


「……一番常識からずれてるのは見た目ですけど」

「聞こえてますからね。鏡でも見たらどうですか?」


 いくら自分が傷付いていようと、小声で呟かれようと、その言葉を聞き逃すはずがなかった。一歩分しか離れていない今の距離なら、何の問題もなく聞き取れる。


 そして、常識外れの見た目をしているのは、アイリスも同じだ。ここまで人目を引く容姿も、そうそうあるものではない。


「自慢の髪が映るだけです!」

「確かに綺麗ですけど」

「えへ」


 自分のカウンターが一切効いた様子もなく、アイリスが堂々とそう宣言する。常々綺麗な髪だとは思っていたが、本人にとっても自慢の髪だったらしい。


 そして、そこでいつも通り話が逸れていっていることに気付く。気付いたからには、修正するのが当然の流れである。


「って、そうじゃないです。何でソフトクリームなのかってことですよ」

「あ、そのことですか」

「それ以外にあります?」


 意外そうに言われる理由がよく分からない。素直に考えるなら、思い付く選択肢は一つだけだったはずだ。


「昔ね」


 自分達に任せていては話が進まないと思ったのか、これまでは聞いているだけだったレティシアが口を開いた。「いつもの」と表現するということで、比較的長く続いているイベントらしい。


「この子がまだ小さかった頃、三人で遠出したことがあったの」


 そう言って、アイリスに目を向ける。その眼差しはとても優しげで、既に薄らぎ始めている母親の思い出がふと脳裏に浮かんだ。


「で、その帰りに高速のサービスエリアに寄ったら、そこでソフトクリームが売ってたの」


 そこまで聞いて、何となく話の結末が読めた気がした。そして、その雰囲気はレティシアにも伝わったようで。


「何となく分かっちゃったかしら?」

「そうですね。何となく」

「多分合ってると思うわ。それを見たこの子が、食べたいって大騒ぎしちゃって」

「やっぱりそうでしたか」

「やっぱりってどういうことですか? 葵さん?」


 今とイメージがあまり変わっていないということだ。若干むくれたように不満を露わにする今の姿など、まさに子供っぽい仕草の代表のようなものである。


「その時に三人で食べて以来、何故か高速を使うような遠出をした帰りの恒例行事になったってお話」

「昔から駄々っ子だったってことですね」


 簡単な経緯を聞いて、そうまとめる。こんな表現をするのはどうかとも思うが、今のところこれ以上似合う言葉は浮かばなかった。


「葵さん、ちょっとお話をしませんか?」

「その握った拳を下ろすのなら」


 だが、アイリスにとっては不本意な評価だったらしく、右手が握り拳を形作っていた。物騒なポーズが恐ろしい程似合っていない。


「下りません。前に突き出します」

「だったら遠慮しておきます」

「なんでですか!」


 その言葉と同時に右手が突き出されたものの、アイリスの細腕から繰り出される拳の威力など大したものではない。自分も男にしては随分細い腕なのに、何の苦も無く受け止められてしまった。


 手の平にすっぽりと収まってしまう握り拳。アイリスの手の小ささを如実に表している。


「くぅ! このぉ!」

「無駄ですって」


 どうにかして振り解こうとしているが、やはりその力も大したことはない。これであっさりと無力化に成功した。


「甘えるのが上手いと言うか、何と言うか。あんまりよくない甘え方をしてたら、その時は遠慮なく注意してあげてね」

「任されました」

「えいっ!」

「はい」

「あぁ!」


 レティシアと話している隙を突こうとしたのか、追加で繰り出された左手も受け止める。男女仲良く手を繋いでいると言えば聞こえはいいが、現実は両手共に拳を受け止めているだけだ。


「離してくださいっ」

「拳は下ろします?」

「葵さんに当たった後に、ですっ」

「じゃあ、このままで」

「むぁー!」


 両手で拳を突き出しながら歩く女子高校生と、それを両方受け止めながら歩く男子高校生という、世にも奇妙な光景を生み出しながら出口へと向かう。アイリスの表情は、相変わらず不満そうに歪んでいた。


「歳が近い子にこんなに甘えるような子じゃなかったんだけどね」


 奇妙な攻防を繰り広げる自分達を見てレティシアが何かを呟いたようだったが、残念ながらはっきりと聞き取ることはできなかった。




 そんな訳で、帰り道の途中でサービスエリアに立ち寄ったのだった。さして規模の大きな場所ではないが、それらしい施設は一通り揃っている。人々が遠出から帰る時間に差しかかっているのか、思った以上に混み合っていた。


 その中を、アイリス、アーロン、レティシアの三人の後に続いて歩く。三人の足取りに淀みはなく、この場所を何度か訪れていることを感じさせた。


「……」


 足を踏み入れた記憶が呼び起こされない程に珍しい場所である。そうなれば、当然視線は無意識にあちこちへと移動する。


 イートインスペースと言うのだろうか。いくつかの飲食店が立ち並び、その前には幾人かが列を成している。注文の品を受け取った客を目で追って、これまたいくつも並んだ机へと辿り着く。


 そこで別の場所に視線を向ければ、今度は土産物の売店が目に入る。小さな子供が、林檎を使ったお菓子が欲しいと母親らしき女性の腕を引っ張っているのが見える。何故か隣の県の土産物まで販売している不思議な売店は、陳列された商品を眺めては悩む客が、皆一様に俯き加減なのが印象的だった。


「葵さん? 置いていっちゃいますよ?」


 そんな風に周りを眺めていると、少し前を歩くアイリスから声をかけられた。思わず視線を戻せば、三人とは少し距離ができてしまっている。物珍しさに気を取られ過ぎたのかもしれない。


「どうかしました?」


 その距離を埋めるように、わざわざアイリスが戻ってきてくれた。アイリスにとっては見慣れたものであろう光景の中で、何がそんなに気になるのか、理解できていないような表情である。


「サービスエリアって、こんな場所なんだなって」

「……いやいや。そんな『初めて来ました』みたいな感想……」

「少なくとも、記憶にはないです」

「……いやいや」


 何を言っているんだとでも言わんばかりの眼差しが突き刺さる。だが、事実なのでどうすることもできなかった。


「え? ほんとですか?」

「こんなことで嘘を吐いてどうするんですか」


 ここに至っても自分が嘘を吐いていると思っていたらしいアイリスが、とうとう事実であることを理解して目を丸くする。だから最初からそう言っているのにと、そう思わなくもないが、なかなか珍しいことを言った自覚はあるので、あまり強くは言えなかった。


「初?」

「初」

「そうですか……」


 それはそれとして、何故そこで口角が若干上がったのだろうか。


「どうかしたの?」


 いつまで経っても追いついてこない自分達を不審に思ったのか、レティシアまで戻ってきてしまった。こうなると、当然アーロンも戻ってくる。


「葵さんがね、サービスエリアに初めて来たって」

「そうなの?」

「ですね。記憶もないくらい小さい頃なら、もしかしたらあるのかもしれないですけど」


 そう答えながら、心の中は否定で満ちる。あの両親なら、あまりこういった遠出はしなかっただろう。むしろ、するのが難しかったとでも言うべきか。


「案内してあげましょうか? 葵さん?」


 自分の昔のことなど何も知らないアイリスが、やたらと綺麗な笑顔でそう提案してきた。完全に裏に何かを隠しているその表情に、答えは一つに絞られる。


「見たら大体分かるので、別にいらないです」

「案内させてくださいよ!」


 普段の立場との逆転を狙っていたのか、申し出を断った途端、笑顔はあっさりと消えた。そもそもの話をするならば、案内が必要になるような変わったものなどない。


「あんまり遠出はしないご家族だったのかな?」

「……そうですね。どこかに行くにしても、大体は近場でした」


 アーロンの疑問は何気ない、浮かんで当然の疑問ではあったが、何か違和感があった。そこまで考えて、アーロンやレティシアであれば知っていてもおかしくはないと、勝手にそう結論付ける。


「そっか。じゃあ、今日がデビュー日だね」

「よく分からないデビューもあったものですね」

「細かいことは気にしない。ほら、もうすぐそこだから」


 それだけ言って、アーロンが再び背を向ける。言われた通り、よく見かけるソフトクリームのスタンドが飾られた売店が、すぐそこに見えた。


 売店の前まで移動して、そのメニューを眺める。たまに話題になるような、数えきれない程の種類がある店には遠く及ばないが、定番と言える味は一通り揃っていた。


「葵さんはどれにします?」

「ん……。抹茶、ですかね……?」


 隣で一緒にメニューを眺めていたアイリスからそう問われ、やや考えながらそう答える。絶対にこれが食べたいという味はないものの、何となく抹茶味が食べたい気分だった。


「じゃあ、私と勝負をしましょう」

「どうして」


 ただ食べたい味を答えただけなのに、いきなりアイリスと勝負をすることになった。話の繋がりが何一つ理解できない。


「いつもは三人で別々のものを注文してるの」


 そこで助け船を出してくれたのは、またしてもレティシアだった。


「別々ですか?」

「それで分ければ、色々な味が食べられるでしょ?」

「あ、そういう……」


 そうして説明されれば、特に変わったところのないありふれた理由だった。つまりは、アイリスも抹茶味が希望だったということだろう。


 そうなれば、勝負の内容が大事になってくる。


「分かりました。じゃあ、より多く花の名前を言えた方が勝ちってことで」

「勝つ気しかないじゃないですか。嫌ですよ」

「だったら何がいいんですか」

「相手の知らない英単語をいくつ言えるかで」

「勝つ気しかないじゃないですか。嫌ですよ」


 お互いに一歩も譲る気はなかった。両者の主張が平行線を辿る。


「素直にじゃんけんでもしなさいな」

「はーい……」


 見かねたレティシアから当たり前の仲裁案が出る。完全に運まかせであり、自分ではどうしようもないが、手っ取り早く勝敗は決まるだろう。やや気乗りしないといった雰囲気で返事をしたアイリスとは対照的に、自分はじゃんけんで何も問題はない。


「それじゃあ……。最初はぐー!」

「おっと……」


 改めて向かい合った中で、アイリスが繰り出してきたのはグーパンチだった。猫がじゃれつく程度のものではあったが、全く警戒しておらず、受け止められたのは完全に偶然である。どうやら、あのことをまだ根に持っていたらしい。


「ちぇっ……。じゃんけん! ぽん!」


 まるで何事もなかったかのように、そのまま続きが展開される。思わず受け止めたままの手を繰り出してしまった自分の手は、指五本。


「あ……」

「私の勝ち、です!」


 対して、アイリスは指二本。そのままこちらに向かって突き出してピースサイン。


 かくして、抹茶味はアイリスのものになり、自分は無難にバニラ味に落ち着いたのだった。




 そして、口元に抹茶色が近付いてきた。


「どうしてそんなに嫌がるんですか」

「そこでカメラを構えてる人がいるからですよ」

「こっちのことは気にしなくてもいいから。二人で好きにやってて」

「お母さんもあんなことを言ってますよ?」


 単純に恥ずかしいということに加えて、レティシアが自分達に向けてスマートフォンを向けているのが、先程から自分が抵抗している理由である。後輩に食べさせてもらっているところなど、誰が写真に撮られたいというのか。それも、その後輩の母親に。


「お父さんにはしてくれないのかな?」

「スプーンで我慢して」

「……これが反抗期かな」

「違うと思います」


 残念そうに言うアーロンだったが、分けてはくれる辺り、優しい部類だろう。本当に反抗期なら、きっとアイリスは反応すらしていない。そもそも、この場にいない可能性すらある。


「葵さん」

「何です」

「よく考えてみてください」

「何を」


 意識を一瞬アーロンに逸らした自分を説得しようとしているのか、アイリスの目付きがやたらと真剣なものに変わる。どう考えてもこんな場面で見せていい真剣さではないのだが、それを言ったところで何かが変わる訳でもないので、そのまま話を聞くことにする。


「スプーンはお父さんが使うんです。そうしたら、葵さんが使うスプーンはないですよね?」

「自分のがありますけど」

「えいっ」

「えぇ……?」


 勢いのいい掛け声と共に、白い渦巻きに刺さっていたスプーンが奪い取られた。あまりにも強引過ぎるやり口に、思わず声が漏れてしまう。


「これで葵さんのスプーンはありません」

「奪い取った張本人が何を」

「細かいことは気にしなくていいんです。ほら、早く食べてくれないと融けちゃいますよ?」


 狙い通りに事態が進行して楽しいのか、にこにこと笑っているアイリスの言う通り、抹茶色の渦巻きの表面が少しだけ光沢を持ち始めていた。一番暑い時間帯はとうに過ぎているとはいえ、夏真っ盛りの七月である。ソフトクリームにとっては、まだまだ厳しい時間に違いなかった。


「……」


 いい加減、覚悟を決める頃合いなのかもしれない。このまま平行線を維持しても、二人分の渦巻きが消えてなくなるだけだ。


 決める覚悟は二種類。アイリスが持つソフトクリームをそのまま食べる覚悟と、それをレティシアに撮られる覚悟。どう考えても後者が余計な覚悟だった。


 僅かな逡巡。


「……じゃあ、いただきます」

「はい! どうぞ!」


 満面の笑みを浮かべるアイリスがさらに近付けてきたそれ。その先端を、控えめに迎え入れる。その瞬間、シャッター音が複数回響いた。まさかの連写だった。


「……」


 言葉を発することができない口の中に仄かな苦みが広がり、その奥から甘みが顔を覗かせる。本来ならばもっと美味しく感じたはずなのだろうが、思ったよりも味がしなかった。そこまで味を感じる余裕がなかったと言うべきか。


 それは果たして、写真を撮られているという状況から来る緊張のせいなのか。はたまた、アイリスに食べさせてもらっているという状況のせいなのか。どちらなのかはっきりせず、心の内にも苦々しい思いが残る。


 そして目の前のアイリスはといえば、相変わらずにこにこと自分を眺めていた。


「美味しいですか?」

「それは、まぁ……」


 味をあまり楽しめなかったことは隠しておいた。そんなことを言えば、撮影の第二部が開催されるだけである。


「よかったです。じゃあ、次は葵さんの番ですね」

「やっぱりそうなるんですね」

「当たり前です!」


 自信たっぷりにそう言い放つアイリス。要するに、次は自分が差し出す番ということだ。レティシアの話からして、こうなることは予想できていた。


「その前に。スプーンを返してもらってもいいですか?」

「あ、はい。どうぞ」


 とある目的のために、アイリスに奪われたままだったスプーンを取り戻す。そうなれば、することは一つ。


 そのスプーンを使って白い渦巻きの一部を掬い取り、アイリスへと差し出す。


「どうぞ」

「……」


 差し出した途端、これまでの笑みは嘘のように消え、不満げな表情を隠すこともなくじっとりとした目を向けられる。アイリスがこうなってしまった理由は、流石に理解できた。理解できたとて、それを実行するにはまた別の覚悟が必要になるのだが。自分がするのとされるのとでは、心の持ちようが全く違う。


「……んっ!」

「あ」


 悠長にそんなことを考えていると、スプーンとは反対の手に持っていた本体の一部が消え去った。犯人は言うまでもなくアイリスである。業を煮やした末の犯行だった。


「美味しいです!」


 一気に満足そうに頬を緩めるアイリスの一言。勢い余ったのか、口の端が少しだけ白くなってしまっている。そんな顔を見てしまえば、とやかく文句を言う気など湧きもしない。ソフトクリームからしても、あれだけ美味しそうに食べてもらえたら本望だろう。


 見る者を和ませるその笑顔に、自分の顔にも自然と笑みが浮かぶ。ついでだからと、スプーンの方ももう一度差し出す。


「いいんですか?」

「えぇ。こっちはまだまだありますから」


 そう言って、スプーンとは反対の手に持った本体を軽く掲げてみせる。その一部がアイリスの口の中へと消えていったとはいえ、その小さな口では、削り取れる範囲も限られている。白い渦巻きは、その大半が残ったままだった。


「それじゃあ、遠慮なく!」


 そんな言葉と共に、スプーンに乗ったソフトクリームもアイリスの口の中に消えていった。


「私達の自慢の娘が可愛い」

「男の子にあそこまで甘えるなんてね」


 今に限ったことではないが、相変わらずシャッター音が断続的に鳴り響いている。それどころか、動画を撮影し始めたと思しき効果音まで聞こえていた。わざわざ確認まではしていないが、もう残っているのはアーロンしかいない。アイリスとのやり取りが、その動画にしっかりと収められているのだろう。


 撮られる覚悟を決めたのだから、もうそれについてとやかく言うつもりもない。それよりも考えるべきことが、今は他にあった。こうなってしまった以上、どうしてもついて回る問題。


「……」


 ちらりと白い渦巻きを見る。


 アイリスが口を付けたこのソフトクリームを、何も意識せずに食べきることができるのか。自分が直面するとは思ってもいなかった、実に難しい問題なのだった。

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