第59話 建国宣言、そうだ迎えに行こう!-王都アリス-
やっと、キリシスの我が街に帰って来た。
上空から見た街は既に大都市であるにもかかわらず整然としていた。高度を下げるに従い見えてくる、街から長く伸びた美しい街道を足しげく行き交う人々が、その繁栄を物語っていた。
街の中心には、真っ白に輝く王城が建っていた。赤い屋根が葺かれて染みるように輝いている。
自分で作っていた物なのだが、ちょっと見ない間に大きく変わっていて驚きを隠せない。成長した子供を親が見たら、こんな感覚になんだろうか?
飛行船はゆっくりと降下し、王城近くに新設された飛行船発着場に向かう。接近するにしたがって、王城は単純な白ではなくキラキラと輝いていることが見えてきた。
「ほう。素晴らしく美しい城ですな。まるで女神様の居城のようだ」展望室から見下ろしていたナディアスのボーフェンが思わずそう言った。そう、居たりするんですよ。おまけに、ひとっ風呂浴びてたりするけど。あっ、王城の屋上に女神湯作って置けばよかったかなぁ? 上空から降りてくると、お風呂から女神様が手を振ってたら楽しいかも。
ー あら、面白いわね!
ー 嘘です。ごめんなさい。
屋上はともかく、見晴らしのいい露天風呂は気持ちいいだろうとは思う。
ー それ、飛行船に作れば、いいんじゃない?
ー 女神様。それ、とっても大変なんですけど?
ー 希望よ、希望。
ー 確かに、気持ち良さそうなので、出来るようなら作ると思います。
まぁ、普通に風呂はあるので大きくするだけなんだが。
発着場も近くなり、王城が目の前に迫って来た。思えば、王城に近すぎるかも?
「見たことのない、美しい建材ですな」とナエル王。
王城新築の為に、俺がルセ島の砂から作った石は、驚くことに「神輝石」と呼ばれる宝石だった。
産休リゾートの合間をぬって、女神ビーチの砂を焼き固めて石材を作ったのだが、この石はダイヤモンドが含まれているのか半透明であまり見たことない美しい石になった。気に入ったので王城の建材として大量に使ったのだが、これが宝石だとは思わなかった。
質素な王城だと思って作っていたのだが、希少な宝石をふんだんに使った物凄く高価で贅沢な城が完成してしまっていた。オットーはそれを知っていたのか、全く削っていない。どうりで、細かい指示を出して来たわけだ。知らない間に俺も造形に参加していたのだ。まぁ、図面はオットーや建築家が引いたんだが。俺の仕事を見て「いい石工だ」とか言ってたし。教えてくれてもいいと思うんだが。
ちなみに、ダイヤモンドに匹敵する硬度を持ち、ちょっと砕いて持って帰るなんてことは出来ない。ま、防御フィールドも張るんだけどね。盗まれないようにじゃなくて固くて危ないから。
* * *
ということで、迎えた王族たちの驚きようは無かった。
「こここ、こんなことがあるのか? 全部神輝石ではないか!」アイデス王国のノミナス国王、開いた口が塞がらないといった感じだ。今日、ここに泊まるけど大丈夫かな? っていうか、なんか俺が凄く贅沢な王様に見られそうでヤバイんだけど。俺が作って、俺が工事してるんだけど? ま、言い訳するのもアホっぽいのでほっとくか。
「たまたま鉱脈を掘り当てましてね」鉱脈『俺』みたいな? てか、どんだけデカい鉱脈だよ。
「まさに、言葉もありません」ナミア国ワレスト国王。まぁ、小さい指輪に付ける石でも高価な宝石ですからね。全部ダイアモンドで出来た城を見たような感じか?
「うむ。我が女神様の名を冠する国に相応しき城ですな」オキ神国のラーセル法王、俺の城を気に入ってくれたようでなにより。というか、宝石に興味がない様子。
「……」アブラビのミゼール、さっきから何か言おうとしているのだが言葉が見つからないようだ。というか、指さしたまま固まってる。
カセームの新王ピステル・カセームも、さっきから一言も発していない。というか、なんかニヤニヤしている。何かと思って聞いてみたら。
「砂糖菓子みたいで、美味そうだ」さいですか。食べるなよ。腹壊すぞ。
王城に着いて、各国代表団をそれぞれの部屋に案内したのだが、そこここで驚きの声や感嘆の声が上がった。ミゼールは個室で踊りだすし。
「いいのか?」とミゼール。
「何が?」
「こんな、お姫様のような部屋を使って」
「いや、お前お姫様だろ」
「ああ、まぁ、そうなんだが」
「ゆっくり休めよ」
「ありがとう」
ちなみに、ミゼールの従者たちも大喜びで、しばらくきゃーきゃー言っていた。ゆっくり休めたかどうかは分からない。
この王城は小さいながらも、その機能は揃っている。大ホール、謁見の間、サロン、談話室、執務室、食堂、厨房、浴場などだ。
謁見の間とか使わないだろうと言ったら、無いと会えない人も出てくるらしい。セキュリティを考えた部屋と言うことか。まぁ、俺に手を掛ける奴も居ないと思うが。もっとも、統治しないので儀礼的な使い方しかしないのだが。そう言えば、後で気づいたけど「統治しない=儀式だけ残る」ってことなので、ちょっとうんざりしている。ま、作ったばかりだから、特別な儀式なんて無いからいいか。
二階は全て客人の寝室である。
俺たちが住む旧領主館があった場所は、宮廷として新しく建て替えられた。ここにホールなどはないが、遊戯室や天文台や工作室など俺の趣味の部屋がある。まぁ、奥なのでなんでもアリだろう。女神湯はエントランスが変更されたがそのままで宮廷の一部になっている。後宮も変更なし。
* * *
最悪、2月一杯かかるだろうと思っていた建国宣言招待の旅は思ったより早く済んだので三月の建国祭まで一週間まるまる暇になった。それで、暇な各国代表を引き連れて、この国を紹介することにした。
まずは、派手な神魔動乗用車と神魔動飛行艇のデモだ。ちょっとした博物館のような展示場がある。
ここで、前身となる自動荷車や自動乗用車を最初に見せた上で、神魔動車を見せた。飛行船で既に新しい技術に触れているし、アリステリアスのヒュペリオン王が時々神魔動車を走らせていたので、大きな驚きも無かったが実際に目の前で自分で触れると実感が湧くのか感嘆の声が上がっていた。
特に、エンジンの構造などを説明すると時々食いついて来る人がいる。たぶんヒュペリオン王の仲間になる人たちと思われる。
神魔動飛行艇のデモでは、神魔動エンジンの説明よりも実際に乗れる空中散歩デモに関心が集中した。飛行船と違い早さが体感出来るので、大して凄くない機動でも大騒ぎになった。
「ぬぉおおおお」なんでか居るヒュペリオン王。いつの間にかデモに参加してるし。
「いや、飛行艇は、ちょっと怖くてな。自分では運転できなかったのじゃ」
神魔動車は平気でも神魔動飛行艇は苦手なんだ。でも、乗ってみたかったらしい。あまり変わらないんだが。
意外と肝が据わっているのが砂の王国カセームのピステル国王だ。飛行艇の助手席で余裕の笑みだった。クーデターで一皮むけたのかも。
その後、工場の見学もしたのだが、実機を見た後なので説明を熱心に聞いていた。
このほか、製鉄所の溶鉱炉や薬品工場、農業機械、織物工場などの見学もしたので、一週間はあっという間に過ぎてしまった。王族相手なので、過密スケジュールも出来ないしね。ただ、この街が、とてつもない進化を遂げているという認識は持ったようだ。宗教を前面に出している新国家が、新技術でも最先端に立っているということに衝撃を受けているようだった。まぁ、この二つが相いれないと思う時点でおかしいんだけどね。たぶん。




