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第28話 運命の女神ウリス

 セシルが俺の嫁になったいきさつだが、どうにも腑に落ちなかった。それで、ある朝アリスが連絡して来た時に聞いてみた。


ー なぁ、前に言った運命の女神様なんだけど。

ー えっ?

ー ほら、セシルが転移して来た時のことだよ。

ー な、なんのことかしら~っ。

ー いや、だからセシルが妙に都合よく魔道具を起動して転移して来ただろ? ぜって~っ、おかしいから。神界の思惑通りだから。

ー そ、それはっ。


ー うん? 我に文句あるのか? 使徒のくせに、いい度胸しているのだ。

ー あっ? 誰だお前。

ー だ、だめよ。出てきたら。


 あれ?


ー もしかして、そこに運命の女神様がいるのかな? いるのかな?

ー もう、知らない。


ー うるさいぞ人間。それに我は運命の女神ではないのだ。正しくは確率の女神;lhjなのだ。


 やっぱり、いたんだ。


ー はぁ、人間の俺には発音できないので、とりあえず運命の『う』でウリス様って言っていいですか?

ー やっぱり、あいうえお順だよね。

ー 我の気高き名を発音できないとはダメな使徒なのだ。好きに呼べばいいのだ。


ー では、ウリス様。セシルをこの部屋に転移させたのはウリス様ということなんでしょうか?

ー そうなのだ。限りなく起動不能だった魔道具を起動する確率に引き上げるのは、なかなか大変だったのだ。

ー はぁ。やっぱりですか。


 神界の都合で転移させたんだ。


ー お前は何か勘違いしているようなのだ。

ー え? 何がでしょうか?

ー 確率をいじる女神は、全能の女神ではないのだ。あるべきことの内のいくつかをいじるだけなのだ。全く可能性のないことは実行できないのだ。

ー はぁ。僅かでも可能性があったと?

ー そうなのだ。

ー セシルも?


ー お前はセシルの運命を我がネジ曲げたと思ってるようだが、それは違うぞ。あの部屋にいたのは必然なのだ。お前を思っていたのも事実なのだ。女神アリスを崇拝していたのもな。


ー はぁ。

ー 後はきっかけだけだったのだ。我は、その可能性の一つを起動して、心の内をお主に打ち明けるのを早めただけのこと。もちろんセシル自身は何も変わっていないのだ。


ー なるほど。雪玉を投げて雪崩を起こすようなもんですね。


ー その例えはどうかと思うが、そういうことなのだ。


ー つまり、遅かれ早かれセシルは俺の嫁になったと?

ー そうなのだ。ただし、運が悪ければその思いを内に秘めたまま年老いてしまうということもありうるのだ。実際あの性格だからな、そうなる確率は高かった。


ー 確かに。


 セシルは一人で思い悩んでいたしな。


ー お前は、セシルを嫁にするのは嫌なのか?


ー そんなことはありません。彼女はとても素直でいい子なんです。だから、超ラッキーだと思ってます。


ー ならば、我に感謝するのだな。そんな彼女と仲睦まじく過ごす時間が増えたのだから。


 確かに。


ー はい。

ー もちろん、それは本来は本人が努力することなのだがな。

ー そうですね。

ー 神界の都合がお前の都合のいい方向に加わっただけのこと。ただ、そんなことは、ごく当たり前の事なのだ。他人が干渉して確率が変わるのは当然なのだ。人間は、一人で生きている訳ではないからな。人はそうやって互いの確率に干渉しあって生きていくものなのだ。それが人生であり歴史なのだ。


ー なるほど。わかりました。


 さすがに運命の女神様だ。あ、確率の女神だっけ。ちょっと尊敬しちゃいそう。


ー そもそも、お主が運命の女神の存在に気づいたのも運命なのだ。


ー なるほど、俺はウリス様に出会う運命だったと。

ー そう、運命なのだ。だから、当然女神の湯へ我を招待するのだ。

ー やっぱりか~。


 残念な女神様かも。


 ちなみに、運命の女神ウリス様は、女神湯に顕現しても普通の人間に見つかることはないそうだ。見つかる確率を限りなくゼロにしてしまうからだ。


 「振り向かなければ、いないのと同じ」そうですか。好きにしてください。


 あれ? じゃ、勝手に入ってても分からない? もしかして、既に来てた?

 これからは風呂の水面には気を付けよう。


 あと、絵師の女神様も女神湯に興味があるそうな。

 もう、女神様の日とか女神様感謝デーとか作って女神様に解放しちゃおうかなぁ? あ、でも人数制限だけはお願いしますね。湯船が女神様だらけになったら笑えないので。後光だけでお湯が沸騰しちゃいそうだし。てか、そうなったら絶対街中で後光が観測されちゃうよな。未知との〇遇みたいに。


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