表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた  作者: りゅう
続編 未来視編
162/222

第162話 タイムリープの可能性

 幽閉時の記憶にインデックスを付けたことで、なんとか幽閉時の記憶を取り戻すことが出来た。

 もちろん、戻ったのは幽閉直前の百年程度の記憶だけだ。つまりそれ以前に記憶管理領域に保存された記憶は消えたままだ。その記憶も戻したいところだが、今のところ戻す方法はない。幽閉時より前の俺は、今の俺のことを知らないからだ。いきなり未来の俺からメッセージ誘導を送っても信用してもらえないだろう。説明を追加すれば何度かは信用してもらえるかも知れないが、メッセージ誘導を送り過ぎれば過去改変が発生して失敗するようになるだろう。しかし、失敗した時のリカバリー方法が思いつかない。安易なことは出来ないのも確かなのだ。

 ただ、まだ可能性はある。これを発展させれば残りの記憶も取り戻せるかもしれない。殆ど欠落してしまった神様間の関係も出来る事なら元に戻したいと思っている。


 そんなわけで、俺は新しい記憶回復の方法を模索した。

 基本は、女神カリスに開発してもらった『機能拡張付きメッセージ誘導』だ。これをさらに拡張することを考えている。


 例えば、もし今の記憶を付加して過去の自分へメッセージ誘導を送れたら、タイムリープが可能なのではないかと考えた。 

 タイムリープと言っても、過去に戻って記憶にインデックスを張るだけの簡単なものだ。短い時間で済む筈だ。今の自分が過去に戻れば、確実にインデックスを張れるだろう。もちろん、インデックスを張る以上のことはしない。


 王城執務室で、この思い付きを女神カリスに話してみた。


「デジャブ現象で過去へと飛ぶメッセージ誘導って、そのときの意識にある表層記憶と一緒に送るんですよね?」

「はい。それで、デジャブのように感じるわけです。直前の意識と違う情報に戸惑うわけです」

「それって、短いタイムリープですね?」

「タイムリープ?」

「はい、意識が時間を遡って、昔の自分に憑依するというようなものです」

「ええっと」さすがに、考え込む女神カリス。


「あ、俺の世界の架空の話です」

「ああ、なるほど。そうですね。意識がそのまま送られるので、確かに瞬間的にはタイムリープになりますね」

「ただ、デジャブ現象だと、表層記憶しか送られないので、時間を遡ったことに気が付くのは稀ということですよね?」

「そうです。普通は気付きません。気づいても、また同じことをしていると思うくらいです」

「もし、違いが分かる記憶を一緒に送ったらどうでしょう?」

「ええっと、どうやって記憶を送るのか分かりませんが……違いが分かれば、確かに昔に帰ったのと一緒かも知れませんね」

「ですよね! おお、タイムリープ出来るかも!」

「それを何に使うんですか?」

「えっ? だから、記憶にインデックスを張るんです。短い時間で済むと思うんですが」


「ああ、『インデックスを張りたい』という『意思』を過去へ持って行きたいということですね?」

「そうです。仕事が終われば消えて貰っていい」

「なるほど。短時間の行動の為なら、持って行く記憶も限定的でしょうけど……ううん」


 女神カリスはちょっと自分の世界に入ってしまった。これは、いいことだな。お茶とラームがあるから、待つことにした。


  *  *  *


「確かに、面白い案ではあります」女神カリスは、考えながら慎重に言った。俺はラームを一個平らげていた。

「ただし、多少なりとも過去の自分を占有してしまいます。寝ている場合はいいですが、それ以外は危険でしょう」


 なるほど。確かに、過去の自分の状況が分からなければ、タイムリープ直後の対応に困ることも多いだろう。何気ない作業中でも、意識が飛ぶと危険な場合はあるものだ。例え自分は大丈夫な場合でも、周りにいる誰かが困るかも知れない。

 あるいは、大切なことを考えている途中とか、名案を思い浮かべたところなら迷惑なことこの上ない。いくら短くても、譲れない重要な時間というのはあるものだ。急に意識が飛ぶということは、いろんな意味で危険なのだ。


「もちろん、過去改変の可能性が増えますので、憑依したという記憶を残す訳にもいきません」

「寝ている時を狙えばいいんですか?」

「えっ? ああ、言葉足らずでしたね。そうではないんです。寝ている人にはメッセージ誘導は届きません」

「そうなんですか! それは残念」寝てるなら、安全だったのに!

「それと、戻したい記憶は百年や二百年ではないですよね?」

「そうですね。この世界を担当した時よりも前でしょうから二千年以上前になると思います」

「そうすると、二十回以上繰り返すことになるでしょう。一回分の時間は短くとも、繰り返せば長くなります。そうなると実行するのは難しいでしょう。そもそも、一つ前の記憶保存の時期を確認しながらになりますし」

「ああ、なるほど。憑依してもいいタイミングを探すんですね。影響の少ない時間を狙うのは難しいんだ」

「そうですね。自分の記憶を頼りに飛ぶ訳ですから」


「それはそうでしょうね。時間もかかるだろうし、そうなるとタイムリープした記憶を消すのも大変かな」

「そうですね。一番の問題でしょう。未来の記憶、さらに作業する記憶も残ります。その領域の記憶を消すとなると……」

「ああ、なるほど。記憶がまとまって消えることになるのか」


 つまり、記憶喪失を招いてしまう。


「そうなりますね」

「そうか。そりゃ不味いな。やはり無理っぽいですね」

「ごめんなさい。協力したいんですが、現時点ではリスクが高過ぎると思います」

「分かりました。ありがとうございました」


 まぁ、そう簡単に出来ることじゃないってことは分かってた。けど、もうちょっとで手が届きそうなんだよな。もどかしいところだ。


  *  *  *


 ある日の夕食後、ヒントが欲しい気持ちからタイムリープの話を談話室でしていた。


「相変わらず婿殿の話は奇想天外じゃな」とヒュペリオン王。

「本当じゃのぉ父上、どうしてこう何時も予想外の話になるのかのぉ」とリリー。

「本当ですわ。わたくし、もう感覚がマヒしていると思ってましたのに驚いてしまいました」とセレーネ。

「それが、私のマスターなのよ!」


 ミリィが何故か偉そうだが、分かって言ってるのかは不明。


「よく分かりませんけれど、それで記憶が戻るのでしたら南北大陸のことも思い出すんですね?」


 ヒスイを始め三従者は気になるようだ。南北大陸出身だものな!


「うん。そうだな」

「素晴らしいです」とスサ。そう言えば、彼女のご先祖様の歴史もあるよな。


「しかし、久しぶりに来てみれば、また大変な話を聞いてしまった。どこから突っ込んでいいのやら」とピステル。


「まさしく、ピステル殿と同じ気持ちですよ。アトラ大陸の謎の話かと思っていたら、過去に遡るとか。ああ、もう私の理解を軽く通り越してますよ」


 ナエル・シュゼール王は、常識人だしね。驚くのも無理もない。


「ナエル王、それを言うなら、もうずっと前から理解を通り越しておるが」とヒュペリオン王。

「そうだよ。ペリ君の言う通りだよ」

「な、なるほど」

「ナ~君も納得じゃな」とペリ君。

「な、な~君はやめてくれませんか?」

「それは、許されないのじゃ」とペリ君。

「そうだよ、ペリ君の言う通りだよ」そういや、お前が言い出したんだよな~っ。


「ここは、やはりパルス王国フィスラー妃の処世術を使うべきではないでしょうか!」


 うん? マッセム王子が面白いことを言い出した。


「分からなくても気にしないって、あれか?」

「はい。これはもう、リュウジ殿と付き合う上での鉄則と言われています」悪びれもせず言うマッセム王子。

「なんじゃそりゃ」


「フィスラーの鉄則と」なんだか、どっかで聞いたような。

「何かの法則っぽいな」

「もう、南北大陸では常識です」

「いや、それはちょっとマズくないか?」


「リュウジ、みんながみんな女神カリス様や女神キリス様と普通に話せる筈ないよ~?」とミルルが突っ込む。それは、その通りだな。俺もだけど。

「そりゃそうか」


「私も、以前からその処世術を使ってます」


 セシルはすました顔で言った。そうだったんだ。


「分からなくても、実ったラームを食べられます!」とミリィ。

「お、ミリィ。うまいこと言った!」

「ほんと? えっへん!」


ー ほんとね。

ー その通りね。

ー そうなのだ。

ー そう、リュウジ怖い。


 みんなもかよ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ