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第112話 南北大陸へ-帰還-

 帰りは途中でピステルをカセーム王国に送り届けるため、約五千キロをマッハ二・〇まで加速して帰った。

 外の景色は物凄い速さで窓の外を流れているのだが、海の上を飛んでいるので誰も気にしていない。

 言わなければ分からないものだ。まぁ、さすがに陸地に沿って飛ぶようになると「早いねぇ」なんて暢気な感想は聞けるのだが。

 ただし、ヒスイとヒラクの二人だけは展望窓に張り付いて固まっていた。誰に付いてきたのか理解したらしい。


 昼前にはカセーム王国に到着した。

 クレオも母親に会いたいだろうとピステルに招かれて、昼食はカセーム王国に降りて取ることになった。


  *  *  *


 カセームで取る昼食は砂漠の国とは思えない多彩なものだった。


「これは凄いな」俺は思わず感嘆の声を上げた。


「いや、これも君のおかげだよ。君が来る前なら考えられないものばかりだ」ピステルは豊富な野菜類を指して言った。


「肉類も豊富だね」

「最近はアブラビ王国から手に入れてるらしい」

「ほう。確か城郭都市にしたんだったな」

「そうらしいね。肉だけじゃなくて穀類もあるっていうから驚いたよ。おかげで随分助かってる」


 定期飛行船の就航によって以前では考えられない取引が出来るようになったのだ。

 同じテーブルにいるクレオの母親など一族の表情も明るい。ミゼールも嬉しそうに聞いている。


「そういえば、アブラビの族長の娘さんがおいででしたね」とピステル。


「はい。ミゼール」

「アブラビを懇意にしていただいて、ありがとうございます」あれ? ちゃんと普通にしゃべれるんだ。


「これからも期待していますとお伝えください」

「はい、かしこまりました」


 どうしたのかな? これは、ニーナの教育? それとも美鈴?


ー 夕べ、セレーネと練習していたみたいね。

ー マジが。新しい侍女が来て、あいつも自覚が出たのかな?

ー かもね。


 ちなみに、女神様はテーブルには並んでいない。


「娘といえば、クレオはとても頑張ってますよ」


「まぁ。お役に立てているか心配しておりました」クレオの母親シノエ・カセーム元王妃が答えた。


「七人の侍女の中では最年少なのに立派に務めています」

「そのように言って頂き、ありがとうございます。良かったわねクレオ」

「はい、母様」


 ん? クレオもちょっと勉強した?

 母親もちょっと驚いた表情をして嬉しそうに笑った。いままでなら、「はいなの」だよな。


ー ああ、ミゼールと一緒にみんなで聞いてたわね。同じ婚約者だから。

ー なるほど。一緒に大人になるんだ。

ー そうね。


 いずれにしろ、成長している国の食卓は王室でなくても明るいものだ。そんな雰囲気を感じながら俺達はカセーム王国を後にした。


  *  *  *


 カセーム王国から神聖アリス教国へ向かうとなるとアブラビ方面かシュゼール方面になる。

 まぁ、ロス山脈が立ちはだかってるわけだが、普通ならシュゼール方面から戻るのだが、ミゼールとシュリに自国に寄りたいか聞いたら、それを言い出すと切りがないからいいと言われた。

 まぁ、定期船も始まったことだしな。二人は帰ろうと思えばいつでも帰れる距離だ。そういえば、パメラもそうだな。ミゼールはともかくシュリもだいぶ大人になって来たのか?


 それから、さすがに聖アリステリアス王国の王様は王都にお返しした。

 それでも、いろいろ言っていたがテイアさんがたまには会いに行くと言ったので納得したようだ。もう子供も問題ないしな。っていうか王様が子供だ。テイアさんが王都に行ったら、それはそれで大騒ぎになる気もするが俺が心配することでもない。


  *  *  *


 聖アリステリアス王国に立ち寄ったついでに、ちょっと王都で遊んで行くことにした。

 思えば、俺は聖アリステリアス王国の王都はあまり知らないのだ。機会が無かった訳でもないが忙しくしてたからな。そんなこんなで、ちょっと嫁達の買い物に付き合った。


「やっぱり王都ね! 綺麗な飾りがいっぱい」


 女性向けの服屋に立ち寄ったニーナが大興奮だ。特に装飾品をあれこれと試してみる。庶民用だけどいいのか?


「こういうのは、流行りものだからいいのよね?」アリスが調子を合わせている。

「そうそう。気楽に使えるのよ」

「わたしも、たのし~っ」ミルルもか! まぁ、もともと庶民だし。


「これ、お土産にいいわね!」セシルはシスターへのお土産にするようだ。

「わたくし、こういうの初めて見ましたわ」とセレーネ。

「姉さま、これが本物の町娘の服ですわ」アルテミスが気が付いた。

「おお、なるほど。こういうのを着なくてはいけなかったのじゃな。バレるはずじゃ」とリリー。

「そうですわね」


 セレーネたち、二年越しで町娘の服装を知った模様。


 ちなみに、俺が送り届けたことでウィスリムさんにはひどく感謝された。

 ぼそっと「併合して頂いても結構ですが」と言っていたのは聞かなかったことにしよう。ん? そう言えばセレーナもそんなこと言ってたか。娘三人娶ってるからな。逆に期待させてる?

 俺の子供たちに継がせるって手もあるが、まだ早いか。


  *  *  *


 約一月ぶりに我が家に帰ってきた。

 家族総出で出かけていたので特に待っている人間がいるわけでもないが、バトンたちに迎えられるとホッとする。侍女が二人増えてるので侍女長マリナに面倒を見てもらおう。マリナはバトンの娘だがバトンと二人で良くやってくれている。


 ただ、そう暢気に考えていたのは俺だけだったようだ。特に、侍女長マリナは首を長くして待っていた。侍女隊、メイド隊を引き連れて。


 それはそうだ。俺達が到着すると、その侍女長が一番忙しくなる。何しろ、産後一年未満の赤子を連れて六人が長旅から帰って来たのだ。

 乳母と侍女やメイドを引き連れたこの一団を迎え入れるのは実質この侍女長なのだ。勿論バトンも手伝うが中心にいるのはこの人だ。

 子供の健康状態の確認から始まって仕事は山のようにある。まるで戦争のような大騒ぎだ。


 そんな喧騒も夕方までには一区切りして、いつもの時間が流れ始めた。


 夕食後、俺は久しぶりの女神湯を堪能していた。勿論、嫁達も入って来る。今日は女神様も入って来た。

 この露天風呂は初めの頃に比べると拡張して倍の大きさになっているのだが、それでももう狭い。いや、同時に入らなくていいんだけど?

 侍女隊は、もちろんまだ一緒には入らない。


「色んな国があったわね~っ」


 ニーナが思い出しながら、夕暮れの空を見上げて言った。


「そうだな。おかげでちょっと振り回された」


 出発前は軽く付き合うつもりだったが、結構踏み込んでしまったなぁと思う。


「でも、いいことも多かったんじゃない?」アリスが言う。


「ああ、そうだな。特に食材とか嗜好品とか香水の可能性なんかもあったしな」


「やっぱり別大陸に行って良かったでしょ?」とアリス。


 なるほど、それを言いたいわけだ。


「まぁな。でも、ちょっと休憩」

「ふふ。そうね」

「これで、八割くらいはカバー出来たんじゃない?」


「ええっと、そうね。今では人口が増えてるからもっとかも」


 アリスは担当神らしく人口を把握しているようだ。


「あっちの人口は減ってるの?」

「南方諸国のこと? そんなことないみたいよ」

「そうか。じゃ、最悪ほっといてもいいのかな」

「そうね。急ぎではないわね」


 そう聞いて、俺はちょっと安心した。最後に回された者が最悪の状況だったら目も当てられないからな。人口が安定しているなら、余裕を持って行ける。


「そういえば、コリス&ケリスは本当に国を作るのかな?」

「どうでしょうね」

「我は、何時泣きついて来るか心配なのである」とウリス様。

「そうね」イリス様も心配らしい。


「美鈴は、どう思う?」

「ううん、あの方はやるときはちゃんとやるし真面目なんだけど」

「うん」

「つい、出来ないことを始めちゃうことがあるのね」

「なるほど。じゃ、時々チェック入れないとだめかな?」

「一応、私も気に掛けるようにするね」


 アリスもだいぶ忙しくなって来たな。


「うん。頼む」

「今日のリュウジは、やさしい」とエリス様。


 えっ? いつもですよ?


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