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第109話 南北大陸へ-神の紋章-

 この古の都市はかなり大きかったようだ。

 神透視で見ると、その巨大さが良く分かった。当時の繁栄を物語っている。恐らく、大河が枯れて人が住めなくなったのだろうが、こればっかりは仕方ないな。ただ、この最果ての地で何処まで繁栄出来たのか、逆に興味が湧いて来た。


 とは言え、全てを掘り起こすつもりはない。

 街の入り口の門からまっすぐ伸びる道と、中央の神殿らしき場所を掘り起こしてみることにした。

 これでも普通なら大変な作業量なのだが、神力だけは沢山あるから問題無い。神化リングもあるし余裕で砂を掘っていった。


「ぬぉおおおお、婿殿婿殿、ちょっといいか?」


 石畳で出来たメインストリートを掘り出したところで、ヒュペリオン王のスイッチが入った。


「なんでしょう」まぁ、聞くまでも無いが。

「この、広くて真直ぐな素晴らしい道を、是非とも走らせて貰いたいのじゃ。いや、これは歴史的に走らねばならぬ気がするのじゃ」


 ヒュペリオン王は、意味不明なことを言い出した。ここの歴史は全然分かってないけど?


「父上、そんなわがままを言ってはいかんのじゃ」とリリー。


 でも、遊ぶ気満々の顔で言う。絶対自分も混ざろうとしている。


「是非ともお願いします」


 普段は無言の近衛神魔動車隊の隊長まで言ってきた。


「分かりました。良いでしょう」


 まぁ、今まで走れなかったしな。たまにはいいだろう。


 ヒュペリオン王御一行は走り回るままにして、俺達はさらに砂を掘り起こしていった。


 メインストリートの先には、こちらも石畳で何もない広場が広がっていた。

 これほど広い平坦な場所を何に使っていたんだろう? 何か祭りの会場のようなものだったのだろうか?


 神殿は、その広大な広場の奥に鎮座していた。


「綺麗な神殿ね。まだ、十分使えるじゃない」とアリス。

「誰も壊そうとしなかったようだな」


 特に争いの跡のようなものは無く、綺麗に残っていた。やはり、河が干上がってしまったのが滅亡の原因のようだ。

 だが、神殿が綺麗に出土した所で、女神様があることに気が付いた。


「これ、知ってる」


 神殿の屋根にある紋章を見てアリスが言った。


「そうね。わたくしも、そう思ったところよ」イリス様も同じらしい。

「これって、もしかして前の神様の紋章じゃないかな?」美鈴も知っているらしい。


「前の神様?」

「そう、あ、前って言っても、コリス様の前ね。二つ前の神様」


 神の紋章のある神殿か。ここを住処にしていたんだろうか?


 しかし、この紋章はここだけでは無かった。広い広場を上空から見ると、デカデカと神の龍の紋章が描かれていた。


「コリスに聞いてみようか?」俺は呼び出してみた。


 ぽっぽっ


 女神コリスと教育の女神ケリスが直ぐに顕現して来た。見てたらしい。


「確かに、これって前の担当神の紋章だわ」コリスも確認した。


「コリスは担当して長いの?」

「いえ。私がこの世界を預かったのは最近よ。百年前だから。確かここは、その頃から変わってない筈。始めから砂漠だったと思う」


 百年って最近なんだ。ま、第一神様もちょっと昼寝って言ってたもんな。年を取らないとなると百年くらい気にもしないんだろうな。

 とすると、この街が衰退したのは、それよりずっと前ということになる。


「二千年くらい前は、普通に下界に顕現してたらしいので、その頃のものじゃないかな?」とコリス。


 って、そんな前か。千年単位なんだ。


「うん? 二千年前は、神様が普通に顕現してたの? 神託じゃなくて?」


「そう。確か、二千年前から完全に不干渉主義になった筈」とケリス。


 その頃の遺跡ってことか。ここで、神様が普通に住んでたのか?


「なんで、急に変わったんだろう?」

「ううん、私は新米だったから、詳しくは知らない」とコリス。


「多分、第一神様が弱りだした頃なんじゃないかな。あの頃、神界全体の神力が減って、不干渉主義が勢いを増したから。これはその頃のものじゃないかな」とケリス。


「ああ、なるほど。そういうことか。じゃ、大河が枯れる前に、神様が撤退したってことか」


「街自体の衰退は大河が枯れた影響だと思うけど。担当神は先に撤退したんじゃないかな。もし居たのなら、こうはならないと思う」とケリス。

「なるほど」


 そうか、神界の影響ってやっぱり大きいな。

 まぁ、でも第一神様が復活したんだから元のようにしていい気がするが、肝心の神様が変わったならどうにもならないな。


  *  *  *


 俺達は一通り見てスマホで写真に残した後、砂で埋め戻した。


 「返す返すも、惜しいのぉ。素晴らしい広場じゃった」


 メインストリートだけではなく、神殿前広場も走り回ったヒュペリオン王は、埋め戻す様子を見ながら言った。


 「そうじゃのぉ。これほど広くて、平たい道はそうそうないからのぉ」とリリー。


 リリーも、いつの間にか神魔動車を調達していた。っていうか、俺のカスタムモデルだった。持って来てたのかよ。


 「素晴らしい経験をさせて頂きました。ありがとうございます」


 晴れ晴れとした笑顔で言う近衛神魔動車隊の隊長。

 海を臨む誰もいない石畳の道を、我が物顔で走れたからな。さぞ気持ち良かっただろう。アクセル全開で走ったしな。まぁ、飛んでた奴もいたが。


  *  *  *


 次の国に行くには遅くなったので、この日はここで一泊することにした。

 一拍と言っても飛行船内なので快適なのだが。


「あれ? ケリスとコリスは神界に帰ったのか?」


 夕食後、寛いでいたが、見えないので聞いてみた。


「夕陽を見て来るって言ってたわよ」

「砂漠の夕陽か」


 何か思う所があるんだろうか?


 ちなみに、遺跡に砂を埋め戻したのはケリスとコリスだ。折角来たので神力の練習をしてもらった。お陰で砂は直ぐに埋め戻された。


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