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第103話 南北大陸へ-北洋王国2-

 キシカカ湖は大陸の東端にある首都シーシュから、真直ぐ西へ三百キロメートルほどの山あいにあった。

 標高もそこそこあるので氷結したままなのだろう。さすがにこの距離なので王族が訪れることはあまりないようだ。


 この日の気温はそれほど低くなく、絶好のスケート日和となっていた。防寒具も用意してもらい、氷上に立っても全く寒くない。これなら、いける。


 まず、俺と美鈴が女神キリスの都合してくれたスケート靴を履いて滑って見せた。

 すると、すぐさまどよめきが起こった。うん、期待通り!


「きゃ~、何あれ。ね~何あれ~。すご~いっ」


 アルテミスが大喜び。絶対喜ぶと思った。


「姉上、落ち着くのじゃ」


 リリーが珍しくフォローに入っているが、自分も喜んでるのは一目瞭然。やる気満々の顔。お前こそ落ち着け。


「まぁ、なんと優雅に滑りますこと」とマレイン妃。

「はい、あのように風を切って滑れたら、どんなに気持ちがいいでしょう」とフィスラー妃。

「ほんとうねフィスラー。しっかり、教えてもらいましょう」

「はい、マレイン妃」


 二人の王妃はやる気満々である。そうなると、王様達も黙っていられない。


「うう。ここはなんとしても、上手くなって私の威厳を示さねば」とヒスビス国王。

「気が合いますな、ヒスビス王。私も頑張りまずぞ」とアレストル国王。


 王自らスケートが出来れば、ここはスケートの名所になるかもしれないな。


「素敵ね~っ」アリスも魅了された模様。

「いいわね」とイリス様。

「ふふ。我もやるのだ!」とウリス様。

「リュ、リュウジ、怖いし、怖~い」エリス様、分かります。二重の意味で怖いんだ。


「いいね~、わたしも早く滑りたい~っ」意外とミルルも好きらしい。


 みんな初めて見たら滑りたくなるよな。スケートには魔法のような魅力がある。


 さて、戻ってみんなに講習だ。


 用意した靴はスピードタイプ。サイズだけは聞いていたので、全員ぴったりフィットした。

 それと、教えると言っても技を知ってる訳じゃない。バランスの話をするくらいだ。

 最初だけ一人ずつ見ながらアドバイスして、後は適当にそれぞれ滑って貰った。いい加減すぎるか?


「リュウジ殿、リュウジ殿、こ、これはちょっと、我には、ああ、置いて行かないでくだされ~っ」とミゼール。


 弱気なミゼールは珍しい。


「隊長しっかり~っ」


 さすがパメラはもう自分のものにしている。


「こ、こんな感じかな~、っとっと」


 スノウも、もう大丈夫そう。


「ちょ、ちょっとお待ちになって、シュリさん、まだ手を離してはいけませんわ~~っ」

「ほらほら、こっち」


 シュリは既に上手くなってる。


「クレオいけてるの~っ」

「マナもいけますの~っ」


 二人は意外に上手い。まぁ、小さいからバランスがいいのか?


「兄様~、がんばるの~」

「あ、クレオ、ちょっと待つのだ」

「もっと滑るの~」

「あ~っ。こら、押すな」


 ピステル、意外とバランス悪いのか? まぁ、身長もあるしな。


 で、全然問題ないのが女神隊。ちょっと心配だったイリス様もすいすい滑ってる。


「これ、楽しいわね。リュウジと居ると楽しい遊び教えてくれるから嬉しいわ」


 イリス様が優雅に滑って来て言った。


「はい。俺も嬉しいです」


「リュウジ、デレデレしすぎ」


 アリスも突っ込みを忘れない。


「うん、面白のである」ウリス様も気に入ったようだ。

「こんなに面白い遊び隠してたリュウジは悪い子」え~っ。つまり、気に入ったんだ。


 もちろんスケート靴を手配してくれた女神キリスも上手だ。

 女神様って体のバランスがいいのかな? あ、神様だとみんないいのかな? みんな上手に滑ってる。ま、女神キリスは経験者っぽいけど。


「やっほ~っ」


 何故か靴を持って来てくれた教育の女神ケリスも参加してる。

 どうも、女神キリスの依頼で教育用のスケート靴を用意してくれたようだ。出発の時にはいなかったので途中参加だ。まぁ、飛行船から降りてきたので誰も不思議に思わないが、ちょっと行動が読めないなこの女神様。

 ただ、スケートは上手い。


「そりゃ、教官だからね!」


 そうですか。そんな、笑顔で言われたら、何も言えない。

 でも、実際には教えて無いけどね。あ、女神ケリスがいるだけで教育の効果があるのか? みんながすぐに覚えたのは女神ケリスのおかげだったりするのか? そういうことに、しとくか。


「はい、これがスピン」


 女神ケリスは、くるくると回って見せた。お~っと、会場は大いに盛り上がった。なに? 見ると、フィギュアスケート用の靴だった。


「お前だけフィギュアかよ」

「だって、いきなりは無理だから」

「まぁ、確かにそうだが」

「いいのいいの、目標が出来れば、さらに楽しくなるものよ」


 いや、スピードスケートやってる奴に、フィギュアを目標にさせるのかよ。


 そんな教育の女神ぽいことを言って、またスピンを見せては拍手喝采を受けている。いきなりヒーロー登場である。まぁ、楽しそうで何より。昨日まで居なかったメンバーだけど、誰も気にして無いし。


  *  *  *


 王様たちも、最初は転んでいたが昼頃には普通に滑っていた。


 食事の時の話題は、自分がどれだけ上手くなったかの自慢話と、転んだりしたアクシデントの話だ。武勇伝のように語っているが、後で考えれば普通のことなんだよな。まぁ、始めて滑れるようになった時の高揚した気分なのでなんでも面白いのだが。しかも、全員初めてだから話は弾む。

 昼食は、あらかじめ用意した携帯食と温かいスープだ。簡素な椅子とテーブルを氷の上に広げただけだが、広大な氷上の食事会は気持ちのいいものだった。

 真っ白な雪をいただくロキー山脈も美しい。


 食事を取りながら、さらに北の氷の国ヒュシバルに向かうという話をしたら、防寒具はそのままプレゼントしてくれた。

 そういえば用意していなかった。人間が少ないから忘れていたが王様たちはヤバいよな。ちょっと女神キリスに後で相談してみよう。

 それと、スケート靴は希望者にプレゼントすることにしたら、全員が欲しいとのこと。確かに、おもしろいんだけど、また来れるかは微妙だよ? あ、でも、将来は飛行船の航路になるかもな? ここなら流行るかも。


 食後、俺達は北洋王国の王様たちをシーシュに送ってから、次の訪問国『氷の国ヒュシバル』を目指して北に飛んだ。大量のカニと共に。


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