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スキャンダル女王  作者: オメガ
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第八話

高円寺駅から徒歩5分。築年数は古いが小綺麗な外観の高層マンション。通勤の利便性もよく、中所得者向けではあるが人気物件となっている。高円寺の夜景を一望できるL字型の掃き出し窓を売りにしており、相楽みなみが即決した理由でもある。

私はドンドン売れて駆け上がってくんだから、安っぽいアパートなんてもう住まないわ。と

意気込んで5倍の家賃もする部屋に引っ越ししたのは半年前のことである。

毎月の高額な家賃に頭を悩ます日々なんて思ってもみなかったであろう。

現在彼女は自慢のL字窓からの日差しを避けるように、対となる部屋の片隅で体育座りで背中を丸めていた。嘆きは後悔の念か、怨嗟の声がすすり響いていた。

「なんでこんな事になったのよ」悲しみの様相で独りごちる。涙がポリポロと膝に垂れ落ちていった。


事務所での出来事は週刊誌に、面白おかしく取り上げられていた。

ーー生活態度が悪いので、注意したら鬼の形相でビンタされた。あんなヒステリックな女うちでは扱いきれない。なので規約破棄をさせてもらった。コスモキャリー、西原社長談。


ーー私も昔からゴミを見るような目で蔑まれ。事あるごとに使えねーなとぼやかれてました。仕事だからと我慢してましたが、自尊心は傷つき精神的に追い込まれて、遂には鬱症状まで出始めて、病院通いする事になりました。男性社員談


ーーあの人は会うたびに私の顔を覗いて、ブスだの顔面凶器だの容姿を貶されました。確かに自分でも顔が整ってるとは思っていませんが、面と向かってそんな言葉を投げかけられたら傷つきます。

本人は冗談のつもりで申したかもしれませんが、美人な人に言われると嫌味にしか聞こえません。彼女が辞める事になっても私の心はボロボロで、もう癒されませんが、少しだけせいせいしています。女性社員談


言ったことも、ありもしない事実がざっくばらんに書かれていた。

記事を載せた会社に抗議の電話を入れたが、取材した内容を着色せずに載せてるだけですの一点張りで、取り合ってはもらえなかった。

コスモキャリーは辞めたタレントと関わる気は無いと敵愾心むき出しで拒絶された。解雇通知は後日封書で送られた。

抵抗するすべがなく、連日ワイドショーや週刊誌に袋だたきに遭うのを指をくわえて眺めるしかなかった。

スポンサーに「なんでこんな暴力女使ってるんだ。差別主義者を追い出せ」山のような苦情が入り、ドラマの主演は降ろされた。今後の予定にあった映画の出演も同様に。

相楽みなみは社長室での一件以来全ての仕事を失った。

「絶対に後悔させてやるからな」仏頂面で言い放った西原の顔が、目を瞑るたびに反芻されていく。有言実行となった。そんな事できるはずはないと、高をくくっていたのかもしれない。私どこで間違ったんだろう。鋭意努力でここまでやってきたのに。

先の見えない閉塞感で胸が締め付けられる。心がバラバラにならないように、身を縮めてうずくまっていた。後悔の念と焦燥感にかられる。意識を持ってかれないように関係性のない妄想でその場やり過ごしていた。時折西原の声が脳内にこだまするので、密閉型のイヤホンを付けて、音楽を大音量で流した。


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