第四十五話
なんなんださっきの質問は。若輩者を考慮したとしても無礼極まりないではないか。
詩織の頭に怒りが込み上げてきた。
だがと深呼吸をして心を落ち着かせる。
みなみが、あの癇癪持ちが軽くいなしたのだ。私が乱れてはいけない。
寛大な心で受け止めよう。
そう思ったの束の間、次のタクヤの発言で暗雲が立ち込めた。
「ところで相楽さんのドラマ一本のギャラって幾らなんですか?」
「いきなりぶっ込んだ事聞くなあお前。答えづらいだろ」
ライトは制止するわけではなさそうだ。
その証拠にヘラヘラと笑っている。
なんだこの失礼千万な二人は。詩織の血管が熱を帯びた。
もう我慢できない。そんな企画とは聞いてない。もう関係がどうなってもいい。
そう決心して間に割って入ろうと身を乗り出した時
「すみません。そういうギャラ事情は契約上言えない事になってるんです」
みなみが申し訳なさそうに言った。驚いて踏み込んだ右足が止まった。
これは以前トークイベントの際に司会者から失礼な事を聞かれたらこう答えなさいと模範的な解答をリストにして渡したことがあった。
その中の一文であった。
あの時はそんなこと聞かれたら放送コードにひっかる事を言ってやる、と豪語していたのに。
陰で読み込んでいたのだろう。それに先ほどまでのやりとりも今思い出せばリストに入っていたセリフだ。
創作者の私でも時がたったので忘れていた。彼女はこの現状を変えようともがえているのだ。
そう姿勢がヒシヒシと伝わってきた。
じゃないと以前のみなみならとっくに暴言の一つを置き土産に立ち去っている。
変わろうとしているの彼女の行為を私が無下にはできない。一蓮托生位を決めたのだから。
詩織は後退りをして、定位置に戻った。子供を見守るような目で佇む。




