表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキャンダル女王  作者: オメガ
27/85

第27話

「あいつには困ったもんですよ。あの生まれ持ったヒステリックさに、どんだけ掻き回されたかわかったもんじゃない。そのくせ人を色欲旺盛の動物みたいに罵りやがって。わたしは愛妻家の異名を持つ清廉潔白の男ですよ。風評被害もいいとこだ。名誉毀損で訴訟を起こすことも一考しますよ」


ここからは西原社長の独壇場だ。木で鼻をくくった態度で長々と喋る。


なんとも気持ち良さそうだ。

対して女子アナは真剣な表情で「分かります」を連呼し時折うなづく。


カメラがスタジオに切り替わった。コメンテーターたちが険しい顔つきで空を睨んでいる。

まるで奇行に走った犯罪者を見つけた目だ。案の定コメントを振られると、辛辣を通り越して罵詈雑言の嵐だった。


人格否定する人も中にはいた。マスメディアは標的を定めたら容赦なく叩く。節操なんて微塵もない。

それも正義を振りかざして民衆を先導する。煽られた人々は大義名分があるので心置きなく叩く。


その一連の流れがエンタメとして昇華されていく。1人の犠牲を払って。その様相をまざまざと痛感した。

「魔女狩りじゃないこんなの」不機嫌そうに詩織は呟いた。


「もともと悪かった旗色がますます悪くなったわね。これからの対策を考えなくちゃ」


そう言ってみなみの方へ顔を向ける。彼女は口を真一文字結んで何かに耐えてるようだった。

メンタルにずしり負荷がかかったのだろう。詩織は彼女の形相を察してリモコンに手を伸ばす。


だが電源ボタンを押す手が止まった。画面に映っていたのは今飛ぶ鳥を落とす勢いのマリアだったからだ。

彼女は困惑した表情を浮かべてアナウンサーからのいやらしい質疑に応じていた。


「別に意地悪とかは私にはなかったです。むしろ気にかけてくださってるなと思っていたぐらいで、多少感情表現が裏目にでて齟齬があったように見受けられましたけど、悪意は感じられませんでしたよ」

マリアは口籠もりながらも、思ってる事を言ってのけた。全体が叩く流れなはずのに、それを顧みず抗う姿勢を見せている。

見た目に反して根性が座っている子だ。しかし過激な発言を期待していた女子アナは面白くなさそうだ。

眉間に皺を寄せ「そうですか」素っ気ない返事をした。


その後も斜に構えた質問を繰り出すがマリアは含みのある言い方はするものの本質を隠すように難なくこなしていく。

この子がみなみを庇ってもメリットは無いはずなのに。


テレビを見ていた2人は示し合わせたかのように、なんとも言えない気持ちになった。

いたたまれなくなったのか、みなみが「消して」と声を落としていった。切なさが眼窩から垣間見えた。



2人の空間に妙な空気が流れた。

テレビの音も消え静寂になったが、すぐさま高層階に訪れる突風が窓と衝突し引き締め合う音になって聞こえてくる。


「あの子に迷惑掛けちゃったわね」詩織が呟いた。俯いていたみなみの顔が上がる。


「そんな面倒見た覚えないんだけどな。私が気づかないうちにマリアの助けになる事をしたのかな」

首を曲げて腕組みをした。強いて言えば相良みなみが居なくなったお陰で仕事が増えた1人だ。

だがこの推測は見当違いだと言うことはすぐに気づく。そんな邪な考えからくる行動ではなかったからだ。

答えが見つかりそうにないので、深く考えるのをやめた。


「でも味方してくれて嬉しかった」心から出た言葉だった。

「私達も頑張らなくちゃね。あの子期待に応えられるように」詩織は握り拳を作った。

プロボクサーがやる試合前の決意表明に見えた。そうだね、とみなみも顔を引き締める。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ