図書室
一学年の教室と同じ一階にあるとはいえ、校舎の端に位置する図書室に行くには中々の距離だ。教師たちの談笑が僅かに聞こえてくる教務室を横切り、続けて保健室を通り過ぎる。さすがに火傷の事は知れ渡ったのか、すれ違う生徒がこちらを振り返ることも少なくなったように思えた。特に問題なく図書室に辿り着いた綾人は、部屋の奥で規則的に並び立つ本棚の間に身を滑らせ、本を数冊見繕った。
貸出受付の正面に設置してある大きさの違ういくつかの机とそれに備え付けられた数台の椅子。それらが敷地を占める割合に反して空席が酷く目立つ。意外にも閑散としていた。たまたまかもしれないが、昼休みに図書室を利用する生徒は少ないようだった。
さっそく綾人は、一番角にある相席用の机を陣取った。持ってきた本を眼前に広げて、表紙を確認する。どれも図鑑ばかりである。今日は何かと思考を働かせた為、腰を据えて活字を読む気にはなれなかったのだ。対角線上の机で参考書を片手にノートへペンを走らせる男子生徒のように、ひたすら勉学に励むつもりなど到底なく、真横の端の机で表情一つ変えずに小説を読み進める女子生徒のように、黙々と物語に深く没頭する気分でもなかった。所詮は暇つぶしだ。ならばと、視覚的に楽な物を手に取ったまでであった。
選出したのは、植物、動物、昆虫と、子供が喜びそうな本ばかりだ。こうして三冊持ってきはしたが、時間的に一冊目を通すのが限界だろう。綾人は一番興味がそそった図鑑を手に取った。
順序良く捲らずに、いきなり真ん中辺りのページを開く。そこには海外に生息している野生のネコ科動物達の写真が何枚か張り付けられていて、その下に簡易な詳細が記載されていた。
プライドという群れを形成し、集団で狩りをするライオン。最強の咬合力を武器とするジャガー。ネコ科最大の体躯を誇るトラ。俊敏な脚力を持つチーター、など。
本来なら分けられるべき種別も一緒くたにされ、個体ごとの大きな括りで紹介された図鑑に、綾人は物足りなさを感じた。
ジャガーと見分けがつきにくいヒョウと、毛色の違うピューマが乗っていないのは、まさにそれ自体が省かれた理由だろう。
大型のネコ科は他にトラとライオンの交配種であるライガーやタイゴンなどもいるし、アルビノやメラニズム、突然変異種なども加えればホワイトライオン、クロヒョウ、キングチーターなんかもいる。
階層分類をより細分化する程の知識は求めていないが、せめて同じライオンでも野生においての絶滅種であるバーバリライオンを初めとするアフリカライオンと、小柄で体毛が薄いインドライオンくらいの区別はしてほしい所である。
伯父は読書家で家には沢山の本があった。ビジネス書やエッセイ集にやや偏りはあったが、古典的な文学や一風変わった参考書など幅広いジャンルを網羅していた。自然をテーマにした物も多く、動物を取り扱う書籍も豊富であった。それが家で過ごす事が大半だった綾人とって、うってつけの娯楽となってゆくのは必然だったのかもしれない。
伯母の目を掻い潜って無断で拝借しては、朝になるまでよく読み漁って、その内に綾人は動物に関しての知識も一般人よりかは長けている方になっていた。
だからなおさらお決まりの如く、綾人はこのライオンにつけられた百獣の王という常套句がいつ見ても腑に落ちなかった。まるで無敵のような言い草だが、いくら天敵の少ないライオンといえど、巨大な象に踏みつけられたら一溜りもないし、毒蛇に噛まれればあっという間に命を落としてしまう。時には獲物である草食動物の角にすら後れを取る事もある。それに常に危険が伴う野生区域で、万全な状態を維持するのも中々難しい。老いは勿論、怪我などで戦闘力が著しく低下した最には、普段気にも留めない小型の肉食動物にすら翻弄されてしまうのだ。
そもそもを言ってしまえば、ライオンがネコ科最強の動物ではない。生息地域が違い、相見えることがないだけで、最大個体同士であればライオンよりもトラの方が全てにおいて勝っている。
まあ、なんにせよ自然界において絶対的強者はいないということだ。どんな動物も死と隣り合わせの過酷な世界なのである。人として生を受け、誰からも祝福されることのない人生を歩んできたが、こんな非常な世界に生まれなかったことだけでもまだマシというものだ。
特に草食動物には憐みしかない。彼らは本当に悲惨だ。肉食動物を前に立ち向かう手段は皆無に等しく、運悪く捕獲されてしまえば、生きながら腹を裂かれて少しずつ肉を食い千切られていく運命にある。人の世でも過去に断罪や拷問の手段として暗躍した残忍な処刑法はいくつもあるが、道具を用いらない手立てとしてはこの捕食というのは極めて残虐性が高く、ある種究極の殺害方法ではないだろうか。
そのような他の動物の暮らしを考えると、現代人の大半は実に呑気なものだと言えるだろう。法に守られた平和を存分に甘受し、誰かから命を奪われる心配も滅多に無く、ただありきたりの生活を繰り返し、怠惰な人生を全うする。
……くだらない。一体それに何の意味があるというのだろうか。
なぜこのような世界が存在するのか、綾人はずっと疑問だった。まるで用意されていたかのように、生物が営む為の条件が揃った地球。その上に広がる無限の宇宙。仮説の域を出ておらず、全ての起源は未だ謎に包まれたままで、その真理は解き明かされていないのだ。
普遍的概念など、人間の勝手な決めつけなのである。水槽の中の魚が広大な海原で泳ぐ事のないように。檻の中の動物が恵まれた自然の大地で駆け回る事のないように。鳥籠の中の鳥が果ての無い蒼穹を羽ばたく事のないように。人もまた、世の理に飼い慣らされているだけなのではないだろうか。
もはや時間という概念さえも不可思議に思える。何かカラクリがあるはずだ。人知の及ばぬ抑制力が、どこかに有る。そうでなければ、無だ。何もない、虚無の中の瞬き。形がある様に見せかけられた幻像。そうして、初めから人類など存在していなかったのだ。
綾人はありふれた一冊の動物図鑑から、そんな飛躍した想像を夢中に馳せていた。だから、気づけなかったのだ。
いつの間にか対面側の椅子に、誰か座っている。他にも席は十分に空きはあったはずだ。……なぜわざわざここに?
綾人は体勢を変えず目だけを動かして、その人物を確認する事にした。
なるべく気づかれぬ様、少し小首を傾げて前髪を挟み、その隙間からギリギリの焦点で相手を伺う。真っ先に判別材料となったのは胸元のリボンで、着ているのは女子制服。机の上には何もなく、腕は足元へと向かって伸ばされている。途中から死角で見えないが、おそらく腿に両手を乗せていているのだろう。本を読んでいる素振りはなかった。あえて意図的にそこへ座ったであろうその相手に身に覚えがない。綾人は不信感を深めながら、さらに目線を上げる。そうして肩に掛かる焦げ茶の髪色が見えた時点で、素早く図鑑に視線を戻した。
下手をすれば声だけしか記憶に残っていなさそうなのに、ちゃっかり把握されていたということか。しかし何を今更……。相手の動機は明らかであったが、そのやり取りさえ不毛に思えた綾人は無視して次のページを捲った。
そうすること5分。もはや昼休みも終わろうとしていた。
「……」
向かいの相手は立ち去ることもなく、ずっと居座り続けている。どうやら、こちらが気づくまで持久戦に持ち込むつもりである。このままだと時間切れになり、嫌が応にも反応せざるを得ない。普通に呼びかければいいものを。綾人はその回りくどさに痺れを切らし、不機嫌そうに顔を上げた。
「……何か用か?」
「あっ、やっと気づいたぁ」
周囲に気を使って小声で問う綾人に対して、普段の声量で琴音は答える。即座にキッと睨みつけてくる読書中の女子生徒に、綾人は同情と共感を覚えた。ごもっともな反応だ。このあっけらかんとした琴音の満面の笑みが、苛立ちを余計に煽り立ててくる。
……にしても、こうしてしっかりと真正面から実物を見たのは初めてで、離れた位置から周囲を観察、もとい勝手に視界に入り込んでくる琴音の印象とは大きな開きがあった。
最も特徴的なのは、大きくパッチリとした綺麗な瞳。その分、口と鼻が小さ目に感じるが、なぜか妙にマッチしている。美人というよりも可愛らしいと言った方がしっくりくる、愛嬌のある顔だった。人によっては瑞希よりもこちらの方が好みの場合もあるのではないだろうか。なんといえばいいのか……、あどけない雰囲気があり、やんちゃで悪戯めいた小動物のようなイメージだ。そう、猫っぽい。僅かに茶色がかったショートボブの髪が良く似合っていた。
まさに今しがたの行動の如く、空気の読めないすっからかんの中身を踏まえて、もっとのほほんとしてたるみきった表情なのだと決めつけていたが、遠目というのは当てにならず、良い意味で予想を裏切られたようだった。
「静かにしろ。……場所を考えろよ」
あっ、とおもむろに琴音は口に両手を当てた。
「ごめんね、つい……」
謝るべき相手が違うだろうと思ったが、手早く用件を済ませたかった綾人は返答を急ぐ。
「それで?」
「えっと、図書室を覗きに来てみたら綾人君が居たから、あの時のお礼を言おうと思って」
「ああ、その事か。気にするな」
予想通りの展開であったが、綾人は素知らぬ態度で短く答える。
「ううん、ちゃんと言わないと。本当にありがとう」
眼前に手の平を合わせ、上目使い気味に琴音は感謝を述べた。こうも真っ直ぐに伝えられると逆に何かあるのではと疑わしくなる。だが、相手は琴音だ。無駄だろうと感じたが、綾人は今一度注意深く探してみる。打算や演技である場合、案外身体のどこかしらに綻びがあったりするものだ。しかし琴音に変な強張りはなく、動作に目に付く違和感もない。本当に腹の内を包み隠さず、本心をさらけ出した自然体のようであった。
「別に介抱したわけでもないんだ。礼を言われるまでの事はしてないだろ」
率直に謝意を表す琴音に対し、綾人は素っ気なく応対する。慣れないのだ。こんな裏表のない思いやりの言葉をかけられるのは。こう言うと会話量が増えてしまうと分かっていつつも、性格上綾人は素直に受け止められなかった。
「そんなことないよ。皆ただ眺めているだけだったのに、綾人君だけが心配してくれたの。とても嬉しかったんだから」
首を横にブンブンと振りながら、琴音は否定した。
「あの状況じゃ無理もないだろうな。むしろ俺の方が場違いの偽善者だ」
「違うっ。綾人君が優しいだけ。人の為に行動出来るのって、それだけで素晴らしいことなの。そんな皆の方が正しいみたいな、悲しい言い方しないで」
ありのままを説明した綾人に、琴音は眉尻を下げながら力説する。そうはいっても、人は利益を得る為や己の欲を満たす為にも、偽善を働く。良い面ばかり見た主観的意見の押し付けだったが、なぜか琴音が言う分には悪い気はしなかった。それは一切迷いの感じられないひたむきな言葉だからだろうか。しかし、綾人は自分が優しいなどという勘違いだけは訂正しなければならなかった。
「……いや、俺も昔似たような事があって、それと同じ症状だったなら対処法は知っていたからな。もしも園原の発作があの時初めてで、その場で教えられる人間が自分だけだったらと考えて、適切な役割を担おうとしただけだ。期待に添えなくて悪いが、それ以外に他意はなかった」
困っている人を助けたいなどという気持ちは微塵もなく、綾人自身の経験に基づいた恣意的な行動であったのだ。その前提がなければ、あの時琴音に声をかけることはなかっただろう。
「それでもっ……!」
仕方なしに心内を語った綾人だったが、琴音は納得がいかないようで反論の言葉を探している様子だった。さっさと切り上げたかったというのに、思いの外長話になっている。このままでは拉致が明かない。上手く収めないと堂々巡りだ。それに、会話に夢中になり過ぎて声の制御を忘れている琴音に対して、そろそろ周りが怒りの臨界点をむかえつつある。
「まあ、なんだ。もう分かったから。ちゃんと園原の感謝の気持ちは受け取った。だから、金輪際俺には関わるな」
「えっ?どうして?」
突然クールダウンして、きょとんとした琴音は不思議そうに問いかける。
「どうしてって……」
琴音があまりにも普通に接してくる所為で、今の今まで綾人すら失念してしまっていた。けれど他者とはどうしても埋めることの出来ない溝がある。
「園原の為だ。分かるだろ?」
皆まで言わせるなと、綾人は前髪を掻き上げて火傷の痕を見せる。まあ綾人自身も目立つ琴音とはなるべく関わりたくなかったわけで、実際は利害一致のお互いの為、ではあったが。
「……?」
琴音は振り子のように何度か左右に首をひねった後、じぃっと綾人の眼を見つめ、両肘で机を這いながら覗き込むように徐々に顔を近づけてくる。
「……おいっ!何してるんだ」
綾人は咄嗟に首を引き、距離を保った。思わず大声を出してしまった。
「んと、顔がどうしたのかなぁって。もしかして、その……、火傷の事?」
駄目だ。こいつは審美眼が著しく欠如している。誰もが不快感を露わにするこの顔を見て、琴音の心には全く乱れが無い。もはや他と同じように扱うことは不可能だった。
「もういい」
綾人は椅子を引いてその場に立ち、会話を無理矢理中断した。
「そろそろ教室に戻らないとな。俺は本を片づけるから、先に行ってろよ」
「あっ、もう一つだけ!綾人君に聞きたい事があるんだけど……」
両手で机をバンっと叩いて琴音も立ち上がり、図鑑を束ねて持ち上げようとする綾人を引きとめた。昼休みの拠点候補として図書室の利用を考えていた手前、良く顔を合わせることになる常連の反感を買うことだけは回避したかったが、二名の利用者双方共に資料や本を乱雑に棚へ戻し、勢いよく立ち去っていく姿を見る限り、それはもはや叶わぬ願いだろう。琴音は想像以上のとんだトラブルメーカーのようだ。しかしまだあるのか、と綾人は顔をおもむろにしかめる。
(どうする……?もう無視を決め込むべきか……?)
これ以上琴音に関わるのは危険だと、綾人の本能が言っていた。今回面と向かって話してみたが、やはり琴音は過去に出会ったどの人間にも当てはまらない、危惧していたタイプだった。馬鹿と罵ってはいたが、勿論ふざけ半分であり、何も本気でそう思っていたわけではない。……いや、ある意味馬鹿ではあるので、ただの馬鹿ではないと言った方が正しいが。
綾人はごくごく一部の人間に対して、本質を見極める前に馬鹿として無理矢理処理して終わらせることがある。それはつまり、博愛主義者の類である。他人を心の底から敬う、あらゆるものに差別の無い稀有な人種。穢れ無き慈愛の下に、救いようのない悪人を初め、自分のような蔑まれるべき人間にも平等に接するなど、思考回路のどこかが欠けているに他ならない。すなわち、馬鹿と同義である。
仮にもし邪心なくしてその崇高な理念を掲げているのだとしても、それは本人に自覚がないだけでそれらの行動全てが結局、その者の内なる何らかの潜在的欲求に繋がっている。真に見返りを求めない人間など皆無だ。そうして綾人は完全な博愛主義者など認める気はなかった。
まあまだ暫定といった所ではあるが、琴音にはそのような気質が垣間見える。綾人が最も近づいてはならない真逆の存在であった。決して混ざり合うことの無い、反発し合う思想。必要以上の干渉は、予期せぬ不利益を被ることにも成りかねない。琴音との対立は避けるべきだと、綾人は考えていた。
とはいえ、ここで一方的に拒絶しても後々に響きそうだ。それどころか琴音がこちらの意を汲めず、ただの先延ばしになってまた絡まれる可能性すらある。
「なんだ?言ってみろ」
観念した綾人は、きっぱりと関係を終わらせる為に、しぶしぶ琴音の質問を受け付けた。
「んー……、えと、うーん……」
さっきの勢いはどこへ行ったのか、煮え切らない態度で琴音は発言を迷っている。
「一体なんなんだ。はっきりしろよ」
「じゃあ、言うね。綾人君って……」
そこで一呼吸して、琴音は言葉を溜めた。
「瑞希ちゃんの事気になってるの?」
驚きの余り後ずさった足が当たり、綾人はガタンと椅子を鳴らした。
「なっ、にを……」
琴音の予想だにしない爆弾発言に、綾人は激しく気が動転した。
「いっつも見ているから、そうなのかなって」
「ま……、さか。たっ、たまたまだ」
綾人は冷静になれと、自身に言い聞かせる。
「ええっ?そうかなぁ。絶対意識してると思う」
無邪気に人差し指を口に当て、琴音は疑ってかかった。その容赦のない詰問に、綾人の感情はさらに掻き乱される。どうにも上手い返しが浮かばなかった。良い案はないかと思考を巡らしていた綾人だったが、ふと数十分前に見た光景が脳裏をよぎった。
「……藤坂に言ったのか?」
その悪質極まりない思惑の推測で、綾人は平然を保つまでに一気に回復した。その要因となったのは言うまでもなく、瞬時に心を塗り替えた琴音に対する憎悪の情。
「い、いくらなんでもそんなこと言えるわけないっ……、あ、さっきの見てたの?とにかく、違うからっ。信じて!」
「そうか」
必死に潔白を訴える琴音を見て、綾人は一先ず安堵した。身振り、表情、声の質、そのどこを取っても、嘘は言っていない。相手が琴音だと、こういう時に助かるというものだ。
「検討外れもいい所だ。まあ、それはただの園原の憶測でしかなかったわけで、実際誰にどう思われても構わないが……」
声に怒気を多分に含み、綾人は殺意すら滲ませた剣幕を作る。
「もしもそれを藤坂に言ってみろ。その時は……」
綾人はあえて先をぼかす様に、言葉を止めた。実際に暴言を吐くのは好きではなかった。それに相手の想像に任せた方が有効な場合もある。
「だだだ、大丈夫ですっ。ぜっ、絶対言いませんっ」
その脅しは非常に効果覿面だったようで、琴音は突然しどろもどろの敬語になったあげく、顔を引きつらせて小刻みに震えている。その容姿もあってか、あたかも怯えた子猫のようだった。その様子に、綾人はなぜだか何とも言えない恍惚感を覚えた。……これは元々あった支配欲なのか、あるいは無理矢理相手を力で捻じ伏せた事による気持ちの高ぶりなのか。
ふと先程の図鑑の考察を思い出し、獲物を狙う肉食動物の心情とはまさにこのようなものなのであろうと、綾人は妙に納得した。
「ならいい。……じゃあな」
縮こまる琴音を放って、綾人は勝ち誇りながら図書室を退出する。自分はいつからこんな嗜虐心を持ち合わせていたのだろうか。そう綾人は自身の意外な一面の発見に驚きつつも、清々しい気分で午後の授業を迎えたのだった。