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デーモンおじさんは無茶をしない  作者: 伊藤 金平
おじさんは静かに暮らしたい!
24/27

angel attack ①



シスターレミイとシスターポーラがやってきました。

もう少し早くに来ていただきたかったです。


やはり、子どもは手加減がありません。



「レミイ姉ちゃん、デーモンが捕まらない。めっちゃ早いよ」

「姉ちゃんのアイアンクローで捕まえてよ。終わらないよ、追いかけっこ」

「ダメですよ。私のアイアンクローは悪いことをした子に特化した技なんです。デーモンさんは悪いことをしてないから効きませんよ」


この教会の教育の末端を垣間見ました。

まぁ、鞭で手を打つよりはマシな気がします。


「さあ、皆さん、夕方のお祈りの時間ですよ。手を洗って聖堂に入ってきなさい」

「デーモンさんも如何ですか?」


シスターポーラが私にも礼拝を勧めてきました。



うーん。

教会の祭神って、あのいい加減極まる絶対的存在なんですよね。私の中では諸悪の根源として認定していますからねぇ。



いや、でも子どもたちの視線やシスターさんたちの視線が物語っています。

『同じ世界に住む者だよな?』と。



「そうですね。お祈りさせていただきましょう」



ー ー ー



絶対的存在を模った像の前で、周りの子たちと同様に祈りのポーズをしました。



目を開けると、以前見た真っ白な世界。



そして絶対的存在。



何やらお怒りのご様子。


私が悪魔に身をやつした?

それは私への叛逆の印か?


いやいや、私を身勝手に誘拐した上で、アフターフォローもせずに追い出したのですから、好きに動いて何の問題があるというのでしょうか?



だいたい、こういう異世界転生小説なら、そういう者にこそ、何かしらの特典を与えるものです。


それをあなた、野垂れ死ぬように放り出したのですから、何か文句を言う資格などないですよ。


大いなる力には大いなる責任が伴うのです。



人間の妄想の範疇で神を語るな、と。なるほど。



やはり、私は身勝手なあなたよりも、身体を分けてくださったデーモンさんの方がまともに感じますね。



世界を敵に回した?

もうまもなく、『私の使徒』が来る?



異端審問官がいらっしゃると言っておりましたが、なるほど、それがあなたの権力の地上における代行者なのですね?



残念ながら、例え教会の権力がいかほどだろうと、理不尽を許すほど私は心が広くはありません。



えっ?『天使』?

何が?

異端審問官が?


ちょっ、ちょっと詳しく教え



ー ー ー



「だいぶ長く祈られてましたね」

「信じれば救われますよ、はい」


祈りをささげた姿勢で固まっていた私に、シスターレミイとシスターポーラさんが声をかけておられたようです。変な脂汗をかいております。手汗もびっしょりです。



「姉ちゃん!なんか雨降りそう」

「急に天気悪くなったねー」


外で遊んでいた子どもたちが、洗濯物のピンチを知らせに聖堂に駆け込んできました。



雲行きが怪しいです。二重の意味で。


そうこう言っていたら、バケツをひっくり返したかのような雨です。


洗濯物を取り込むご婦人方の姿が見受けられます。



「この間も、これくらいの雨が降りましたね。雨季でもないのに、これほどの土砂降り。天の嘆きでしょうか?」



いえ、これは天の喚き散らしですよ、シスターレミイ。



「異端審問官さまも、この天気では難渋されているでしょうね。ドロシーさまのバーンズ街道計画がもう少し早ければ、来やすくなっていたかも、ですのに」



ああ、そうでしたね。異端審問官さんが来られるんでした。絶対的存在が『私の使徒』とか『天使』とか呼んでいました。うむむ。



「シスターレミイ、シスターポーラ、私、そろそろお暇しようと思います。この雨ですので騎士寮の方でも雑用が増えていると思うのです」

「確かに。騎士さまたちの洗濯物が全滅しているかもですね」

「みんな、デーモンさんがお帰りになりますよ」


シスターポーラの一言で子どもたちが集まってきました。各々が口を開き、挨拶をしてくれます。

なんと無邪気な。前世の近所の幼稚園のようです。



フランシス司祭も子どもたちの声に呼ばれて出てきました。


ん?

微妙な顔をしていますね。



「如何されましたか?」

「ん、ああ。そうじゃの。いや、お主が祈ってからすぐにこの天気の崩れ方じゃ。なーんか嫌な予感がして、のぅ」


流石神職でいらっしゃる。

絶対的存在のことを察することに長けていらっしゃいます。


多分、この後良くないことがが待ち受けているような気は私もしております。ええ、あの絶対的存在が何もして来ないはずがありません。覚悟を少ししておきましょう。



「この度はお手伝いをさせていただけましたこと、感謝いたします。また子どもたちと遊ばせていただきたいと存じます」

「うむ。いつでも来るが良い。ワシもじゃが、シスターレミイやシスターポーラでも捌ききれんくらいの体力を持っておるからの、あいつらは」



外套を深く被り、私は騎士寮に向けて走り出したのでした。



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