おじさん、宗教にビビる
ギルドマスターさんに怒られました。
忘れておりました。建物内での魔術の使用の禁止の項目を。
舞い上がっておりました。反省です。
ペナルティもあります。
星半分の冒険者のクエストを1つ無償で行う必要があります。
するまで、星1つのクエストを受けることができないのです。
せっかく、昇格したのにとほほです。
次のお休みが若干気が重くなりました。
■ □ ■ □ ■
騎士寮に帰りつきました。
帰宅早々にアレックスさまとバートさん、コリンズさんが駆け寄ってきます。
「デーモン!悪いタイミングで帰ってきたな」
「もうちょっと遅く帰ってきても良かったのに」
バートさん、コリンズさん悲しいこと言わないでください。
今日はいい年して怒られて凹んでいるのです。
「デーモン。領主さまのお屋敷に司祭さまが来ている。どこで聞きつけた……と言っても、まぁ普通にお前は街を歩いているしな……、まぁいい。要は、領主さまが悪魔に洗脳されているかもしれないから異端審問官がやってくるという知らせを持ってきてくれたのだ」
泣きっ面に蜂。
私のせいで領主さまにもご迷惑を。
「……領主さまに謝罪に行ってまいります。……その上で騎士団に辞表を提出して、退寮の準備をしないと……」
ああ、補填も返済も終わっていないままですか。
せっかく安住の地を見つけたと思ったのに。
短い平穏でした。
「おい、早まるな、デーモン!」
「違う違う。領主さまはお前を追い出そうとしたりはしていないぞ!」
「むしろ逆だ!」
話を聞くと、領民に危害はなく、むしろ積極的に街に貢献していることを領主さまは司祭さまに伝え、異端審問官だろうと何だろうと来てみろ、と喧嘩を売ったそうです。
「普通、異端審問官が来るってなると、領主として信用に欠くと教会が捉えたということになる。だが、それを恐れないってなると、心のそこから問題ない、と考えているということになる。だから、司祭さまがお前を探している」
「私を?なぜ?」
「神の名のもとに『浄化』するつもりだ!領主さまは、洗脳されて意のままに操られていると思っているんだよ!だから領主さまを解放しようと―――」
「いましたね、『神敵』よ!」
■ □ ■ □ ■
まさに神父、という感じのご老人が、顔を真っ赤にしてこちらにこられました。
「お前が領主さまに精神干渉の魔術をかけ、信心を奪ったであろうことは、すでにわかっておる!邪悪なる者よ、悔い改めるが良い!」
おお、のっけからフルスロットで敵意を向けてこられました。
「ご老人。私、精神干渉の魔術は使えません」
怒り心頭なご老人の心の火に油を注ぎそうですが、事実無根なものは否定します。
「何をいうか!お前の言葉を聞き、行動が変わったものが多々おることなど調べがついておる!騙されると思うでないわ!」
「それは魔術関係なく、私の知識を晒した結果です。利になること、興味があることを聞けば行動は変わるでしょう?」
「ええい!ワシまでもたぶらかすか!悪魔め!」
うーん。何を言ってもダメそうです。
ちらっとアレックスさまたちを見ますが、どうして良いか分からないという顔をしています。
あれ?コリンズさんがいませんね。どうされたのでしょう。
「だいたい、力でなんとかなるらしいではないですか、デーモンは。私、力に訴えたりはしていませんよ?法にも従っていますし、行動を制限される謂れはないはずです」
「何をいうか!地下迷宮で多くの人間を殺しておるだろうが!」
「私は存じ上げません。地下迷宮の法はサーチアンドデストロイかもしれませんが、ここバーンズ子爵領ではそのような法はないでしょう?郷に入っては郷に従え、というではないですか」
「黙れい!神の敵を滅するのが、教会の仕事である!」
「それは教典に書かれておられますか?私、何も悪いことをしていないと思いますが、ご老人の信仰では、神の名の下に罪なき者を殺めることを是とするのですか?そのような宗教、領主さまが信仰すると思えませんが」
「悪魔の誘惑になびくワシではないわ!浄化の光とともに滅するが良い!!」
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「な、何故効かぬ!?」
突然の光に目が眩みましたが、だんだん慣れてきました。
そうですか、『浄化』ってデーモンにも効くんですか。
あれ?グンターさん、レイスと一緒に私にもかけてましたよね?
ベテラン冒険者のグンターさんが、普通にブルーオンブルーして来るとは思えませんし。
うむ。教会が持つ情報と冒険者ギルドが持つ情報が違う気がしますね。
一度、情報共有した方が良いです。
何かの時に失敗するトリガーは、いつだってホウレンソウのミスです。
それとは別に、普通に魔術を放ってきました。
暗黒時代、中世の宗教脳の狂気を体験することになるとは。
「さ、さてはグレーターデーモンか!」
いえ、普通のデーモンです。
どんな言い訳ですか。
「何をなさっていらっしゃるのですか、フランシスさま」
そうこうしていれば、ドロシーお嬢さまがやってきました。
後ろにはゼーバッハさま、とコリンズさんです。
ナイスです。コリンズさん。
「フランシスさま。当家の騎士団が何か粗相をいたしましたでしょうか?」
おお。ドロシーお嬢さま。
笑顔なのに怖いです。
これが貴族。強者の微笑みですね。
「ゼーバッハ。フランシスさまは、魔術の使用でお疲れのようですので休息が必要でしょう。お屋敷にお連れしてあげてちょうだい」
「ハッ」
何やら喚きながらドナドナされて行くご老人。
いやはや、盲信というのは怖いものです。




