魔術を知ったおじさん
レイスを『浄化』で無事駆除したグンターさんたち『タフガイズ』に連れられ、冒険者ギルドに帰還しました。
レイヴンさんとシリウスさんは、クエスト完了報告書を書くために受付へ向かっています。
「本日は討伐クエストに同行させていただき、誠にありがとうございました。この経験を今後の冒険者業務に活かしたいと思います」
「……おう。勉強になったようでなによりだ」
なんだか不完全燃焼気味なグンターさんです。
これはよくありません。『魔術』を学びたいのですから、よいしょしておきたいところです。
「特に『浄化』の魔術のすごさは目を見張るものでした。おそらくレイスたちがかけていたであろう精神干渉の魔術も、グンターさんの魔術でどんどんと消えていきましたから」
「……どんな精神干渉だったんだ?」
「はいっ!耳の近くに何十匹も羽虫が飛んでいる感じがありました。あの不快感は確かに来るものがありましたね。それが『浄化』でどんどん消えていったんです。あのすっきり感には、感動いたしました」
「……そうか」
■ □ ■ □ ■
「聞いたか、レイヴン。羽虫だってよ」
「1体でも精神的な負荷がやばいのに、3体のレイスに集中的に呪詛かけられて、なんで平気なんだよ。普通発狂するんだよっ!」
「デーモンってすげぇな」
「グンターの顔をみろ。褒められているのに、どんどん暗い表情になっていっているぞ」
「もうやめてやれよ、デーモン。悪魔かよ」
「悪魔なんだよなぁ」
「終わりましたか?」
「あ、ジュリちゃん。終わった終わった。ほい」
「お疲れ様でした。えっ、なっ!?デーモンさんを囮にしたんですか!?」
「いや、結果的にはそうなったってだけだよ、ジュリちゃん。レイスって、パーティの中の1番力がある奴に精神干渉の魔術をかけて、行動不能にしたり、同士討ちを誘ったりする怪物だろ?俺らのパーティで1番強いの誰よ?」
「……デーモンさんですね」
「だろ?1体じゃ太刀打ちできないからって、墓場のレイスが全員で寄ってたかってデーモンに呪詛を浴びせていたってわけよ。まぁ効かなかったわけだが」
「集中攻撃を受けているデーモンさんを安全域から『浄化』した、ってことですね?」
「ん、まぁ、そうなるか。……あれ?デーモンの奴にも『浄化』当たってたんじゃねぇのか?大丈夫か?デーモンに『浄化』、効かねぇよな?」
「……デーモンさんを見るかぎりは効いていないようですけどね」
「普通に人間と同じ感覚だったが、デーモンに『浄化』が効いてたら、後味悪すぎる結果になってたかもしれないな」
「グンターの奴もやべぇことした、とか考えてそうだな。デーモンも奴も実は満身創痍だったりして」
「……そんな風には見えないんですけどね」
■ □ ■ □ ■
「お願いがあります。魔術を使用する時のコツ、テクニックみたいなものがあれば教えてください。私、自分に魔術のスキルがあるのですが、いかんせん生かしきれなくて」
「コツ、か。うーん」
「とにかく、成功した時のイメージをしっかり作ること、だな」
「イメージですか」
「そうだ。俺の今回墓場で使った『浄化』は『元々のレイスのいなかった墓場の情景』を鮮明に思い浮かべて、イメージの通りになれって感じで使った」
「なるほど、イメージ……イメージ……」
なるほど。魔術のスキルの上達には、鮮明なイメージが必要である、と。
完成した時のイメージが私には足りなかったでしょうか?
窒素、酸素、二酸化炭素。
それらで思いつくイメージとなりますと……うむむ、あまり思いつきませんね。
炭酸飲料のイメージがありましたが、あれは少し、混ぜ物と言いますか、純粋な空気のイメージではなかったですね。だから上手くいかなかったのでしょう。
二酸化炭素を集めて集めて……とイメージすれば……
えいっ!
■ □ ■ □ ■
ドンっと凄まじいプレッシャーを感じました。
鳥肌がやばいです。
何でしょうこれ。一刻も早く、この場から立ち去りたい気分です。
プレッシャーが襲い掛かった後、私の目の前の蝋燭の火が消えました。
風も吹いていません。
ホラーです。ホラーですよ。
レイスの話をしていましたし、レイスがついてきたんでしょうか?
レイスに憑かれそうなのと言えば、デーモンさんです。
当の本人を探すため、見回してみるとデーモンさん、嬉しそうにしています。
何かしたのでしょう。
「グンターさん、みましたか!私の魔術、成功しましたよ」
のんきに何か言っています。
あっ、ギルマスが上階から降りてきました。
うーん、お説教の顔ですね、あれは。
そうですね、冒険者ギルドの建物内での魔術の使用は禁止ですからね。
あー、デーモンさん、驚いた顔をした後、悲しげな顔に。
本当に表情豊かなデーモンですね、彼は。




