おじさん、ギルマスを悩ませる ①
再開です。
よろしくお願いします。
騎士団の皆さんが、私と稽古をしてくれるようになり、早2週間です。
人間、そう簡単にパワーアップすることなどなく、へとへとになる程まで剣を振るわれた後「何割本気だ?」という質問に挫け続けています。
最近では従騎士のアレックスさまが参加されるようになりました。
その上司であるロイドさまも挑んでくる回数が多いです。
へとへとになったお二人に濡れた布を手渡すバートさんとコリンズさんもいます。
試しに「打ち合いますか?」と聞きましたが、強く拒否されました。それはそれは強く。
だんだんとこのお二人は私に対する遠慮がなくなってきた気がします。
嬉しい限りです。
さて、打ち合った剣の整備です。騎士団の皆さんの分を小姓みんなで手分けして、仕分けします。
具体的には、鋳直しかどうかです。
1.5割パワーのゼーバッハさんとの打ち合いの剣は毎回鍛冶屋送りになっている気がします。
そろそろ領主さまから、鍛冶屋依頼のお金のことでお小言が来そうな気がします。
素知らぬ顔でやり過ごしましょう。
■ □ ■ □ ■
ギルドマスターのダンは悩んでいた。
デーモンが時折受けているクエスト、その達成数がもうすぐ2桁になる。
薬草採取のクエストにおいて、デーモンの威圧で怪物はおろか野生の動物すら出ないことを皆が知った。
他の冒険者は同じ群生地に行けないが、依頼者やその他の薬師、錬金術師が「奇遇ですね、私も同じ方に用があるんです」と護衛依頼をせずに、迷いの森へ収穫に行っている。
また、手紙の配達で隣の街へ行ってもらうクエストにおいても、行商人がまるでキャラバン隊のようになり、デーモンの後を追い、移動していた。
おかげで護衛依頼が激減している。
「ギルマス!どうするんですか!デーモンさんに寄生する依頼主が多すぎて、クエストが偏ってますよ!」
「分かってるよ、ジュリちゃん。そんなことは」
ダンは悩んでいた。
このままいくと冒険者からクレームが来る。
それを解決する方法はある。あるが
「ギルマス!覚悟を決めて下さい!最近では騎士団の方に手加減して訓練をしているそうです。全力出されることなんてないですよ」
「レベル2デーモンの全力なんぞ、受けてたまるか!人事だと思いやがって」
「人事ですし」
ちくしょうと吠える声がギルドに響いた。
■ □ ■ □ ■
「おい、デーモン。お前にお客さんだぞ」
朝ごはんの後、騎士寮の玄関に冒険者ギルドの方が来ていました。
なんでも見習いから星1つ冒険者に昇格する試験の許可が出たそうです。
善は急げ、と次のお休みの日に都合をつけていただきました。
ギルドマスターに認められるように頑張りましょう!
ちょっと気合いが入った私を、修練場の騎士の皆さんが引いた顔で見ています。
「どうした?何かあったのか?」
ゼーバッハさまが声をかけてきます。
「今度、冒険者ギルドで昇格テストがありまして。ギルドマスターさんに良い腕と見込まれなくてはならないのです。気合いを入れておりました」
「うむ、そうか」
何やら悩むゼーバッハさま。
「デーモンよ。いつも通りの力加減で、あの鎧を叩いてみよ」
と修練場の端の使い古されたサンドバッグを指さされます。
「はいっ!」
急いで向かい、木剣で力を抜きつつ叩きました。
が
「うむ。デーモンよ。やや舞い上がって力加減を誤るようになっておるぞ。今の力では、我々は肉片に変わり果てることになる」
「仰る通りです」
木剣諸共に鎧のサンドバッグは爆発四散していました。
「その力で臨めば、ダン、あー、ギルドマスターは死ぬ。良いな?」
「はい」
気分のままに力を振るうなど怪物の所業です。
クールに、クールになりましょう。
この修練場の冷め切った空気くらいにクールになりましょう。
ええ。
また皆さんと距離感が空いた気がします。
とほほ。
いいね、ブックマーク、評価、ありがとうございます。励みになっております。この場を借りて感謝申し上げます。




