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デーモンおじさんは無茶をしない  作者: 伊藤 金平
おじさんは定職に就きたい!
14/27

お嬢さま、おじさんに問いかける



司祭さまが帰られた後のバーンズ子爵邸の中庭に騎士団の皆さまが集まられています。

本年は1名騎士爵を賜ったようです。


会場を見回すとバートさんとコリンズさんも鎧をつけています。

従騎士になられたのですね。おめでとうございます。



騎士団長のゼーバッハさまがお話された後、お屋敷の方から領主さまの御息女さまがお見えになられました。


ドロシーさまです。


騎士さまたちに1人ずつ挨拶をされていらっしゃいます。



ゴブレットに入れられたワインを飲みながら、壁の方で皆さまを見てしました。

一応小姓組のテーブルです。

一緒にいますと、皆さんが萎縮してしまいますので、少し離れています。


従騎士さまたちの挨拶を済ませ、小姓の方に歩み寄られるドロシーさま。

皆で膝をつき、頭を下げます。



「あなたが父の申していたデーモンさんですわね?」

と声をかけられました。


「お父さまが申しておりましたわ。『思想の根幹が人間と違うため、面白いかもしれない』と。是非話を聞きたいのですが、ご都合いかがかしら?」


いかがかしら?と訊ねられましても……。

領主さまの御息女さまからの要望です。断るなんてできません。



「私で良ければ」

「あら、嬉しいわ。後ほどセバスに場を設けさせますわ。連絡をお待ちになられてくださいね」

「承知致しました」


ドロシーさまが戻っていかれました。

小姓のテーブルは静まり返っています。そういえば、私以外に声をかけていなかった気がします。


……気まずい。



「やはり、目立っていますか?私」

「目立たないわけがないだろ」

それはそれは鋭いツッコミでした。



 ■ □ ■ □ ■



パーティが終わり、騎士団の皆さまは寮に帰られました。


私は今、領主さまのお屋敷にいます。

以前会食したお部屋です。



「娘が呼びつけたようだね、すまない」

「いえ。光栄なことです」

即座に返事を返します。


「面白い方ですわね、お父さま」

「……失礼な言い方はやめなさい、ドロシー」

「礼を欠いておりましたわ。どうぞお許しください、デーモンさん」

「いえ。お気になさらないで下さい」


私が返事をする度に目を輝かせます。

不思議なお嬢さんです。



「デーモンさん。私、おたずねしたいことがありますの。これは父も、そこにいるゼーバッハも気になっていることでして。人間にない発想が、これまでにない発想が欲しい故の質問なのです」

一呼吸も継げずに話されます。興奮し過ぎかと。


「―――私にお答え出来れば良いのですが」

「答えられなくても良いのです。普通と違う視点があるのではないか?という興味で聞いているのですから」



「質問はですね、『デーモンさんが考える最も強い軍とは、どのような軍か』ですわ?」



 ■ □ ■ □ ■



私はドロシー。ドロシー・バーンズです。


ロジャー・バーンズ子爵の長女にして、才女アメリア・バーンズの忘形見でしてよ。

お父さまが養子を取らなければ、後妻を取らなければ、バーンズ子爵領は将来的に私が継承することになりますの。


横のつながりも縦のつながりも必要な私は、父や亡き母と同じように王都の貴族学園で現在生活をしています。


勉強は大変ですわよ。

ですが、大変楽しいのです。本や家庭教師から学ぶのも楽しいのですが、やはり同世代が考えていることを知ると考えがより洗練されると思うのです。

知識欲が満たされることに快感を覚える、変わった人種なのです。私は。


そして私はディスカッションが好きなのでしょう。


お題はもっぽら領主の在るべき姿です。税は?民への姿勢は?災害や怪物への対応は?領軍をどう運用するべきか?


それらのお題でのディスカッションは、お友達や先輩方、教師の皆さま方を巻き込みました。

私はバーンズ子爵領の更なる発展を考え続けたのです。


しかし、足りない。


皆さんの答えに新しさがないのです。脳への刺激が……痺れるような発想と知識が欲しい。そんな日々を過ごしておりました。



―――久々に学園から帰郷してみれば、父が面白いものを囲っていました。


まさか、あの『神敵』と呼ばれるデーモンを小姓にしていらっしゃるとは。

父への尊敬の念が天井知らずでしたわ。


これが王都で知られれば、すべての話題を掻っ攫うでしょうに。

「譲れ」と言って聞かない高位貴族も現れることは必至でしょう。

このデーモンは自分の意志で小姓をしているよう。

おそらく、そのような方のところに行くことはないでしょうし、家を領地ごと消されても文句は言えないでしょう。

何でしたら、数家消し去ってほしいお家があるのですが……、いえ、はしたないですわね。やめましょう。



ひるがえって。これが面白いと言わずして、何を面白いというのでしょうか。



お父さまが手放しでデーモンさんを褒めていましたわ。

力もですが、何よりも理性的であることを。つまりは知性と教養が備わっている方だというのです。



でしたらば私は問いたいのです。

デーモンの知性と教養は、私の持つ知識といかに違うのか。知りたいのです。ああ。脳みそがうずきますわ。


この謀略渦巻く貴族社会、血で血を洗う世界におけるデーモンの考える最も極められた暴力とは?



「質問はですね、『デーモンさんが考える最も強い軍とは、どのような軍か』ですわ?」




いいね、ブックマーク、評価、ありがとうございます。励みになっております。この場を借りて感謝申し上げます。



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