ヴァルクラウ大魔鉱山
『貴方がたには、ここヴァルクラウ大魔鉱山で当機と共に採掘作業に従事していただきます』
バハムートが俺たちを背に乗せて案内したのはメルキオが一望できるような高い山だった。
そこは山というよりも超巨大な三角円錐型の金属塊のような場所だ。まだ入り口なのにどこを見ても岩肌には何かしらの金属が顔を覗かせている。
「うおお……こんなすごい鉱脈があるのかこの大陸。これならあれだけメルキオが発展してるのも分かる気がする」
『なんだぁ、テンション上がってるじゃねぇかザック。そんなに石ころが好きかぁ?』
「正直好きだな……こういうとこ、ワクワクする」
右にも左にも、鉄鉱って言うのかな、金属交じりの岩が転がっていて俺としては大変興奮している。
入り口には人の手によるものらしき補強がされている辺り、この辺の金属は大して珍しくもないゆえに放置されているのだろう。
つまりこの奥にはもっと希少な金属鉱が眠っているかもしれないわけで、考えただけで期待値が上がってしまう。
「採掘、ですか……。ですが、わたくしは……」
『貴女はいいのです、ザックの背におぶられながらご鑑賞ください』
「え、じゃあ俺も手が塞がっちゃうと思うけど、俺もバハムートが石掘るの眺めてればいいの?」
『貴方はカーナの分も働きなさい』
「少なくとも片手は塞がってますが!?」
『では4倍働きなさい』
なかなかに横暴な事を言いながらバハムートは進み始めた。俺も言いたい事はありつつも黙ってついていく。
平然と彼女が進んでいくので気付くべきだったが、この鉱山には現在人がいないようだ。明かりもなく、でこぼこした坑道は歩くのがかなり怖い。背中にはカーナもいるし、俺が転んだせいで怪我とかさせなければいいが。
『照明を点けます』
俺がゆっくり進もうとしているのに気付いたのか、そう言ったバハムートの肩口あたりが突然発光する。
とても明るい、自動車とかのライトのような輝きは俺が歩く道をしっかりと照らしだしてくれた。
「あ、ありがとう……でも何その機能」
『学習の結果です。当機には夜間の安全な飛行のため、照明が必要であると判断しました。これは当機が追加したライトユニットです』
「自分で自分の機能を追加したのか……? 自動学習ってやつかな」
「では、もしかして本日わたくしたちをここへ案内したのは……何か新たな力を求めて、という事なのでしょうか……?」
『貴方がたは大変優秀な頭脳をお持ちですね。……到着しました』
俺とカーナの推察が当たっているのを褒めたバハムートが止まったのは鉱山のかなり深い場所、大きな広場のようになった空洞だ。
『当機は希少金属を機体内で精錬し、新規追加ユニットを精製し機能改善を図る事が可能です。ザック、貴方は当機と共に希少金属を採掘していただきます』
「俺単独なんだ……まあカーナにやらせるつもりはないしそうなるんだけど」
『では作業を開始します』
そう言ってバハムートは付近の壁を己の手で採掘し始めた。砂山でも崩すかのように多量の金属を含む壁が軽々と削られていく。
俺と彼女の体格差からもそんな気はしていたが、これ俺が手伝った所で微々たるモンじゃないかな?
『どうしたザック? 急いでやらねぇとただボーっと立ってるだけになっちまうぜ?』
「や、やるけど! ……でもよく考えたら俺、どれが珍しい金属かとか知らないんだけど」
「確かに……バハムート様は何も指示されておりませんでしたが……」
カーナの言う通り、希少金属を掘れとは言われたが、俺はこの世界の鉱物になんて詳しくはない。
何か知らないかな、と思いながら俺はジルを見る。
『いや、知らねぇけど……。まぁ適当に掘ってすげぇ輝いてるのでも見付けりゃいいだろ』
「そっか、それもそうだな。手当たり次第に採掘してみるか。……さて、つるはしとかは」
周囲を見回すが、特に採掘道具らしきものは落ちていない。当たり前のようにバハムートは素手で掘っているが、あんなの俺にはできないしな。俺が持っているのは……。
と、そこで俺はジルを見る。
『……おい、ザック。一応言うけどよぉ、俺は「剣」だからな? 掘ったり埋めたりは……。いやできるけどな? その程度じゃ壊れねぇし。でもよぉ?』
「よし!」
『ザックーーーーーーーー!!?』
壊れないらしいし、俺は勢いよくジルを振り上げ、鉱石の採掘を始めた。




