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ハートブレイク

 レヴィアタンの有する魔力吸収機構、それには欠点が存在するそうだ。

 シックスはその完全破壊を指示してきた。ということはつまり、どういうことか。


「……要するにあいつの心臓を壊せば止まるって事でいいの!?」

『そうよ!』


 うーん、そりゃあそうなるんだけど、そんな自信満々にいう事だろうか。

 まあ、撃破方法さえ分かったのならこっちのものか。シックスとは違い、レヴィアタンは魔力吸収機構を壊せばもう再生しなくなるみたいだし。

 ……って事はもしかしてシックスはそこを破壊されても死ぬことはないって事なの?


「随分と簡単に言ってくれる娘だなあ……! ……女の子でいいんだよね!?」

「へっ、分かりやすくていい事じゃねえの! おいトルフェス! あいつの胸にでっかい穴開けるよ、手伝いな!」


 難易度はともかく簡潔な目標を掲げられてリィンは拳を打ち合わせた。

 振り返ることなく彼女はレヴィアタンに突撃し、トルフェスは言われた通りの援護をする。

 腕を破壊した時と同じように胸部への一点、同一箇所に削ぎ落とす斬撃が刻み込まれ……しかし、体の中心に近いほどレヴィアタンの自動修復は強力に行われるのか、たちまちのうちに斬撃は再生されていく。


「くっ、やっぱりこっちは削り切れないかッ!」

「いいや、傷さえこさえりゃあたしがこじ開けてやるッ!!」


 団長の魔剣の痕が修復され切るよりも先にリィンがそこへ両手の先を突きこむ。


「うらあああああああああッッ!!!!」


 そのまま力任せに左右へと手を開いていく。すると、本当に言葉通りにレヴィアタンの胸部装甲がこじ開けられていく。

 流石にそんな傷をすぐには修復できないらしく、開かれた胸の奥にある魔力吸収機構が俺たちに姿を見せている。

 しかしレヴィアタンもリィンに好き放題させてばかりでいるわけがなく、復活した左手を彼女へ、右手を甲板へ向けて反撃を始めようとしていた。


「させるかよぉッ!!」


 俺が魔剣を振るい、リィンを襲おうとする左腕を断ち切る。落ちた腕はまた水へと変わり再び腕の形を取ろうとするが、リィンは救えた。

 しかし反対の腕は止められず、甲板へと水刃が乱射される。俺たちの足場を破壊して逃走を図ろうとしているのだろう。


「やらせないよ!」

『撃つなー!』


 ヴェナとシックスがレヴィアタンの右手を掴み、2人がかりで射撃方向を捻じ曲げる。

 それに続くようにしてトルフェスの魔剣が幾度も閃き、どうにか船の破壊も止められた。


「今だザック、やっちまえ!!」


 俺たちを殺すのではなく、狡猾にも自身の生還を優先するかのような行動さえとったレヴィアタン。もしも逃がせば、俺たちの前にはもう姿を現しもしなくなるかもしれない。

 それは駄目だ。これ以上、ギルバーたちのような犠牲を産み出さないためにもこいつはここで倒さなくてはいけない。

 だから俺はリィンのこじ開けた胸部装甲の奥、怪物の唯一の弱点である魔力吸収機構を破壊する。

 彼女と入れ替わるように俺は穴の中に潜り、銀の魔剣を機構へと突き立てる。

 刃は深々と貫いたが、それだけで魔力吸収機構は止まらない。やはりシックスが言ったように「完全な破壊」が必要なのだろう。

 ならば徹底的にやってやる。そう思い魔剣を引き抜き、もっと斬り付けてやろうとした瞬間、脇腹の辺りに何かが刺さる。


「うっ……!?」

「ザック!!!」


 この冷たい感触、水か。どうやら既に再生していた左手から水の刃が飛んできたらしい。高水圧の刃で切断された俺の脇腹が出血し始めたのかドクドクと熱を出す。

 後ろからリィンの悲鳴にも似た声がして、それから金属を粉砕する音。多分、リィンが左手を破壊したんだろう。

 彼女も援護してくれているし、ヴェナとシックスもトルフェスと一緒にレヴィアタンを止めてくれているはずだ。

 このくらいの傷なら俺には何ともない。後で回復魔法をかけてもらえば治療できるし、このまま魔力吸収機構を破壊するぞ!


「おおおおおおおおおッ!!」


 そうして俺は咆哮と共にレヴィアタンの魔力吸収機構をめった切りにする。

 周囲の部品も巻き込みながらとにかく斬りまくり、ズタズタにされた魔力吸収機構は木端微塵と言うのが相応しくなった。


『――――――――!!!!』


 連動するかのようにレヴィアタンの金属音が悲鳴のように甲板の上で響き渡る。拘束魔法が健在なおかげか上半身だけを激しく揺さぶる。

 それも長くは続かず、震え続けたレヴィアタンは電池でも切れたかのようにその動きを停止した。

 ……死んだか。まあロボットみたいな外見なのでその表現が適切かは分からないものの、ともかく俺たちが勝ったようだ。

 仇討ちが達成できたと知り、俺はレヴィアタンの内部で安心から大きく息を吐いた。


「……ふーーーーっ。……ギルバー、仇は、取っ」

『早く逃げてザック! 自爆するよ!』

「え?」


 4人の顔を思い浮かべて感傷に浸ろうとした矢先にそんな事を言われ、俺は素っ頓狂な声を上げる。

 と同時にカッ、とレヴィアタンの魔力吸収機構から一筋の光が。

 それは1つ、また1つと輝きを増やしていき――。


「うわあああああああーーーーーー!!!!」

『みんな、私の後ろに隠れて!』


 レヴィアタンから飛び出すと同時に、シックスに引っ張られて彼女の背後に放られる。

 直後にレヴィアタンは激しい光と爆風とを周囲にぶちまけながら、最後っ屁を放ってきたのだ。


「ちょ、大丈夫かよその娘!」

「シックスは平気だよ」

「ああ、危ねえのはザックだ」


 爆熱と衝撃をモロに受けるシックス。身体が溶け、レヴィアタンの金属片に砕かれるもすぐに魔力を吸って再生していくので彼女が壊れる事は無い。


「ぐあああああああああああああ!!」


 まあ、そのすぐ後ろで俺の魔力が彼女の再生のために吸われ続けるから、俺は危ないかもしれないんだけどね。


「だ、大丈夫なのかよザック君は!?」

「ぎっ、ギリギリ、いけそう……!!」


 最後の最後、ここにきて1番の大ダメージを負った俺だったが、まあなんとかはなり、こうして無事にレヴィアタンの討伐を果たす事ができた。

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