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強襲型完全海域支配者 レヴィアタン

 シックスが実験生物9号、レヴィアタンを恐れていた理由はすぐに分かった。

 オリジナルランクに分類されるだけあり、その攻撃性能は俺が想像していた以上に苛烈だったのだ。

 拘束魔法によって動きを封じられてはいるが、事前に聞いていた水の刃。これがとにかく厄介だ。

 レヴィアタンの両腕の先端、長方形の穴が開いたそこから射出されるのは魔法によって超高水圧に圧縮された海水。連射されるそれに当たれば間違いなく重傷になるし、回避しても船体を貫通し、甚大なダメージを与えていく。

 これではトルフェスたちの連合団が打倒しきれなかったのも納得がいく。当たれば死ぬ攻撃だが、避ける度に継戦可能時間が削られていくのだから。

 その上団長の話では自己修復までするという。シックスに搭載された魔力吸収機構か、それに類するものだろうか。

 彼女の後に制作された実験生物なだけあって、より攻撃面が強化されているらしい。


「……だけど、やっぱり生物じゃなくてロボだろこれ!!」


 叫びながら銀の魔剣を振るう。その一撃で謎の金属で作られた頭部に大きな断裂を作るものの、その損傷がどんどん閉じていく。

 シックスとは違い俺の魔力を吸い取っては来ていないので苦しみはしないが、ちまちまと攻撃を加えていくだけではこちらが不利になるのは確実だ。


『ザック、危ない!!』

「ぐあああああああッ!!」


 接近した俺を迎撃するべく放たれた水刃を飛んで回避、だが着地の直前に更なる攻撃が飛んできて、シックスがそれをかばってくれる。物理的なダメージはないが、魔力を吸い上げられた俺は絶叫する。

 俺とシックスの足はそこで止まり、続けざまにレヴィアタンの腕がこちらを狙ってくる。


「させるかああああああああああっ!!!」


 水刃が飛んでくる直前、気合の咆哮と共にリィンの拳が横合いからレヴィアタンの腕を殴りつける。

 全力の一撃は敵の腕を粉砕し、たった1枚の装甲だけで繋がったような状態になって水の魔法はあらぬ方向へと飛んでいった。

 それを逃さず、ヴェナが残った繋がりを破壊する。喰らい付き、彼女の牙が引き裂いた右腕部先端は海中へと没していった。


「かたい……」

「……リーダーがシルバー級だけあって随分とやるねぇ! こっちも負けてられないか!」


 そう言ったトルフェスは残った腕へと詰め寄っていく。左腕の穴から多量の水刃が放たれるが、それらをかわしながらレイピアが振るわれる。


「こっちの腕は削ぎ落とさせてもらう!」


 その一振りでレヴィアタンの左腕にはV字の傷跡が生まれる。削り取るようなそれは浅い一撃だが、トルフェスはそれを連続でいくつも重ねていった。

 同じ場所に放たれ続ける魔剣の力。瞬きの間に残った腕は削り切られ、左腕が甲板へと転がる。


「はぁ、はぁ……。思ったより、なんとかなりそうだな。俺以外は今の所みんな無傷だし」

『……ご、ごめんザック』

「あ……いや俺もそういう意味で言いたかったわけじゃ」


 シックスに魔力を吸われた以外、誰も怪我することなくレヴィアタンの攻撃手段を排除できた。

 片手は海に消えてしまったし、あれでは再生できても左手のみになるんじゃないだろうか。だとすればかなり戦いやすくなりそうだ。


「油断するのは速いよザックくん! ここまでは俺たちにもどうにかやれた段階だからね!」


 くっ、なんとなく分かってはいたが、本番はここからだという。

 トルフェスの言葉に反応するかのようにレヴィアタンの双眸が激しく光り輝く。

 すると、なんと甲板に残っていたレヴィアタンの左腕がぱちん、と弾けるように金属から海水へと変化したのだ。

 水へ変わった腕と、それから右側の腕にも海から1つの水柱が上がり、蛇のようにうねりながら、今度は海水がレヴィアタンの金属腕へと変わっていく。


「そんな、海水で再生した!?」

『! ザック、こいつ多分海の中の魔力で再生してる!』


 同じ実験生物なだけあってかシックスはレヴィアタンの能力を察知する事ができたみたいだ。

 彼女の言う通りなら海水を自分の腕として修復できたのも納得がいく。この海中に漂う魔力を吸い上げ、ヤツ自身のエネルギーとしているのだ。

 頭部の再生時に俺へダメージが来なかったのもそのせいだろう。きっと、レヴィアタンは海の魔力をより効率よく吸収する事ができるように改良された個体なんだろう。

 シックスみたいに大量の魔力を持つ者なんて沢山は海にはいないだろうしな。それなら周りにいくらでもある海水から魔力を補給できるようにした方が得だろう。

 俺の想像した通りなら、周囲に海があるレヴィアタンは、無敵に等しいのではないだろうか。


「……海の支配者なんて呼ばれてるだけはあるな!」


 シックスと同じく、完全に破壊しても海中の魔力を吸って再起動しようものなら手の付けようがないぞ。どうしたもんか。


「その子の言う通りだとしたら、まさか海のある場所では倒せないなんて事かい!? ……退いた方が賢明じゃないかな!」

『ううん……大丈夫! 私のほど完璧じゃないから、ここでも倒せるはず!』


 じっとレヴィアタンを見ながらシックスは言う。

 こんな事を考えなしに言う子ではないはずなので、きっと今視ているのかもしれない。あちらの魔力吸収機構には弱点があるそうだ。


「それで、あたしらはアレのどこを狙えば勝てるんだい、シックス!」


 リィンに問われ、彼女は真っすぐにレヴィアタンを指差す。


『あいつの胴体、その奥の魔力吸収機構を完全に破壊して!』

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