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あの時の約束を

「……思ってた以上に簡単な方法だったな」


 銀の災厄の本拠地まで乗り込んで、ようやく俺の魔剣がその真の力の使い方を明かしてくれた。

 それは本当に、言われなくてもその内気付けそうなものだった。


『まぁだから言わなかったんだけどな。お前は無駄遣いする雰囲気があったからよ』

「って言ったって寿命がちょっと減るだけだろ? もっと早く教えてくれたって良かったのに」


 この魔剣の力を使うと、代償として俺の寿命が1年分くらい減るらしい。

 別にそれくらいだったらそこまでデカいデメリットでもない気がするし、こんな最後の最後みたいな時まで出し惜しみしなくってもいいと思うけどなあ。


『ハッ、人間の1年はそこそこデケェだろ。あんま軽く見んなよ』

「そうかな? ……じゃあ俺もカトレアさんみたいなハーフエルフとして生まれてたらもっと早くから教えてもらえたりしたのかな、寿命長そうだし」

『……いや、絶対ぇ教えなかったわ』

「な……なんで!?」


 もっと長命な種族だったら、と思ったがなぜか強く否定された。そっちの方が教えるのに抵抗なさそうだったのに、どうして。


「ま、まあとにかく使い方は分かった。チャンスがあったら狙ってみる。……その前に銀の災厄を見付けないとだけど」

「おっ、呼んだか?」


 俺の言葉に返事をする者が現れ、咄嗟に鞘からジルを抜いて構える。

 どこにいるのかと辺りをくまなく見回していると、俺の立つ通路のドアから何気なく現れる銀の災厄。


「悪いな、探させて。出迎えてやった方がいいかとは思ったんだけどさ」

「もうちょっと出方があるだろ……」


 俺からすれば最強最悪の敵みたいな存在なのにまるで威厳が無い。なんか、旅先のトイレで偶然知り合いと出会ったくらいの驚きしかないんだけど。


「いいだろ別に。初めて会う訳でもないし、今さらカッコつけるほどじゃないだろ」

「俺にとっては世界の命運を賭けたラストバトルくらいの心持ちだったんだけど!?」

「へえ、そこまで想っててくれたのかよ、嬉しいな。……じゃあ、俺から1つ衝撃の事実でも明かしてやろうか」

「え、衝撃の……!?」


 思わず聞き返してしまった。何か、俺が気付いていない真実でもこの場で語ろうって言うのか?

 そう思っていると、銀の災厄の体は突然に縮み始めた。体つきは丸みを帯び、胸が大きく膨らんでいき、彼はもう1つの姿になる。


「……なんと、お前の夢に現れていた女神の正体は、俺だったわけだ」

「知ってる……」

『つぅかだいぶ前にそのネタバラシはしてただろ』


 何を言うのかと思えばそんなとっくに知っている事だったとは。期待して損した。なぜわざわざこんな事を自信満々に宣言したんだ。

 ……あ、でもこうして実物を見るとやっぱり可愛いな。


「ま、ここまでは俺も言ったからな。だが……この姿の俺は銀の災厄の力を使えない、無力な人間だって事はどうだ?」

「……なんとなくは」


 明確にそう発言したかは覚えてないが、銀の災厄と比べて明らかに弱いのには気付いていた。以前俺が押し倒した時、何の抵抗もしなかったし。

 これが衝撃の事実とやらだろうか。弱体化した姿があるというのは嬉しい話に聞こえるが、そんなのは自分の意志で変えられるだろうし、そもそも察してたから衝撃でもない。


「なら、俺がこの姿になると、すぐには……1日ぐらい経たねえと銀の災厄の姿には戻れない、という事は?」

「なッ……!?」


 そこで、俺はようやく衝撃を受けた。

 何の力も使えない女神の姿。それを銀の災厄に戻すには、長い時間を要するという。

 つまり今のこいつは、俺と戦うための力を自ら封印したようなもの。


『なんだそりゃ。んな話するためにわざわざ武器も守りも脱ぎ捨てたってかぁ? 無抵抗でやられてくれるってぇのか?』

「……ま、ザックとは約束もしてたしな」


 約束? 何の事だろう、俺はなにかこいつと、女神と約束なんてしてただろうか。

 ああ……そういえばいつだったか、夢の中でなにか、したような覚えはある。


「お前にそんな気はなかったかもな。ただの口約束みたいなものだし。……でも俺はその辺義理堅いからな! ちゃんと覚えてたし、ここまで来た以上は果たしてやろうと思ってたわけだ!」

「え、それじゃあ……」


 この姿になって、何の防備もないままに胸を張って俺を見てくる女神とした約束。ようやく、俺もそれを思い出した。


「ああ、来いよ。俺も、お前がどんな力で俺を止めるか楽しみに……。おい、何だその顔」

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