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はっきり言ってくれよ~

「…………」


 気が付くと、俺は夢の中にいた。

 そして目の前にはもちろん女神がいる。手出ししないが見てるとは言ってたもんな、きっと俺たちが神聖剣を撃破した瞬間も見ていただろう。


「見てたか? お前に言われた通り、ちゃんと聖剣遺跡の……神聖剣は壊したぞ」

「んー……まあ見てはいたけどな」


 ……なんか、思っていたより感触が悪いな。正確に言えば破壊したのはビスクだったからかな? こいつとは敵対してる存在なんだし。


『おい、手前ぇのとばっちりでザックは化物みてぇな連中と戦ってきたんだぞ、もうちょい労ってやったらどうなんだよ』

「面倒事は1つ片付いたがなあ……。っつーか、その感じだとジルも気付いてないか」

『あぁ? 何にだよ』

「言わねえでもあとですぐに分かるさ」


 何かを知っている素振りでジルに返す女神。

 会話内容から察するに、ディヴァイン・ウェポンとは別の問題でも起きたんだろうか。


「もしかして……トドメを刺したのがビスクだったの、マズかったりした?」

「いや、誰が殺そうがさして問題じゃない。むしろアレを上手い事利用してたのは褒めてやってもいいかもな」


 俺の思い当たる節としてはそこくらいだったのだが、違うようだ。

 だいぶ頭を悩ませている感じに見えるけど、俺たちとは関係ない事件でもどこかで起きたんだろうか。


「じゃあ……またうちの孤児院に脅威でも迫ってるのか!?」

「違……、いや、どうかな」


 否定しかけて、直後にそれを取りやめる女神は、今まで見たことないくらい真剣な顔だ。


『反応的にゃぁ当たらずとも遠からずってぇトコだが……』

「あ! もしかしてお前またカトレアさん怒らせたとかか! それでまた孤児院に」

「違う」


 はっきり否定された。全然違ったっぽいな……。


「まあザックだったら言わなくてもすぐ分かるだろうし、後はまた夜にでも話そう。また来る」


 そう言って夢の世界から消えていく女神。結局何に頭を悩ませてたのかは言わないのかよ。

 でもこの感じだと俺にもすぐ理解できることみたいだし、いいか。

 あの銀の災厄すら頭を抱えたのがなぜなのか、直接目で確かめてみよう。







『ザック、到着しましたよ。いつまで眠っている気です?』


 女神が去ったすぐ後、俺の耳にはバハムートの声が。

 孤児院に帰るまでの数分の航行で俺は寝て、そこに女神が来たわけか。

 みんなはもう彼女から降りていたのか、残っているのは俺だけだった。


「やべ、みんな呆れて先行っちゃったか」

『いえ、当機の判断であなただけ残すように進言しただけです。心地よく眠っている所を無理に起こすのも無体でしょう』

「あ、そうなんだ。……ごめん、長いこと寝てたかな」

『謝罪を求めているように聞こえましたか? 当機はただあなたの疲労が少しでも癒されるよう配慮したに過ぎません』

「えぇ……? じゃ、じゃあ……ありがとう?」

『……感謝されるためにしたわけではありません。当機はそんなものの為に行動したわけではありませんので、勘違いなさらぬよう』

「どうしろというんだ」


 優しいのか冷たいのかよく分からない態度だ。

 謝罪でも感謝でもないなら、一体何をすればいいんだろう。


『ハッ、んな難しぃ顔すんなっての。こんなもん照れ隠しだろぉ? 黙って礼代わりのキスでもしてやれよ』

「えっ、そういうのでいいのか?」


 まあ、言葉を求めてないって言うなら行動か。

 外を見ればまだ陽が落ちてもいないようだが、長い事待ってもらったバハムートの頬に、軽くキスして感謝を伝える。


『 』

「バハムート、俺にできるのってこのくらいだけど……ありがグワーッ!!!!」


 無言で握りつぶされ、俺はそのまま孤児院の庭に全力で叩きつけられた。全然違うじゃないか! 騙したなジル!!


「わっ!? ……ざ、ザック?」


 しかもいつの間にか俺は孤児院の中、目の前にシスターがいて、すぐ後ろにはリィンがいた。

 ……まさか殺されるほど嫌がられるとは。


「た……ただいま、シスター」

「え、ええ、おかりなさい」

「ザック……いくら寝起きでダルいだからってこの距離でソレ使うのはどうかと思うぜ?」


 ごもっともです。


「それは一旦置いておくとして。……シスター、俺たちが遺跡に行ってる間、何か異変とかってありましたか?」


 起き上がり、俺は早速それを聞いてみる。

 女神が言うにはすぐ分かるとの事だったが、さっきバハムートに潰される前に見た街の景色はいつもと変わらなかった気がする。

 パッと見で分からなくとも、ずっと孤児院で俺たちの留守を預かっていた彼女なら、きっと気付く事もあったはずだ。


「ああ、ザックももう分かったのか?」

「俺も? ……って事は、リィンも?」


 リィンの方は先に異変を発見していたようだ。先にバハムートから降りてたんだし、そうなるか。


「今ちょうどシスターと話してたとこなんだよ」

「はい。ザック、実は……」

「あ、ザック……!」

「おー帰って来たんじゃん! おかえり!」


 シスターが話始めようとしたところで俺にぶつかってくる子が2人。

 リュオンとローレナが俺の腰に抱き着いて帰還を歓迎してくれていた。


「ただいま、元気だな2人とも。でも今からちょっと大事な話するからさ」

「あー? なんだよ、それより俺らと一緒に銀の災厄倒しに行こうぜ!」

「……は?」

「ざ、ザックの事、待ってたんだよ……? 私たち」


 健在な2人の様子に喜んでいたのも束の間、信じられないことを口にしたリュオンとローレナに、俺は絶句せずにはいられなかった。

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