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我が声が聞こえるか

「……何だ……? 結局今ので終わりだと言うのか?」


 崩壊したディヴァイン・ウェポンは俺たちに「銀の災厄を討て」と言って、その後なんのアクションもしてこない。

 遺言、みたいなものだったのかな。まあいつかは一戦交えるくらいはしないとな、ぐらいには元から思っていたが。


「改めてそんな事言われてもなあ」

『え、もしかしてザック、アレと戦うの? 私怖いんだけど……』

「いやあどうかな、勝てるかは置いといて、1回殴りにくらいは行きたいけど」


 あんまり勝算も無いし、進んで挑みたくはない。一応助けられたこともあるし、リィンたちと出会えたのも、間接的にあいつのおかげではあるしな。

 総合的に見るとそこまで戦おうとは思わないけど、迷惑かけられたりあいつに振り回されたりもしてるわけだし、その内何かしらお仕置きくらいはしたいところだ。


『まぁ、そん時ぁ俺に任せとけ』


 ジルも秘策はあるみたいなのでちょっぴり期待もしている。内容は……未だに俺は教えてもらえないんだけど。


「……なんかスッキリしねえ所もあるけど、神聖剣が再生しねえって事はあたしらの勝ちって事で、いいんだよな?」

「うん、あっさり終わったから実感あんまりないけどね」

「おっし! じゃあさっさと帰ろうぜ!」


 決着としてはなんとも曖昧というか、尻切れトンボな感じではあるが神聖剣復活の兆しもない。

 リィンもよく分かっていなかったみたいなので、俺はとりあえず終わったことにして肯定すると、元気よく彼女はそう言った。

 まあ長居したい場所でもないし、俺たちの敵も撃破できた。もうやる事はないし、俺たちは聖剣遺跡から脱出する。







「まさか、神聖剣があんなに簡単に壊れるとは思わなかったなあ」


 聖剣遺跡を逆走し、俺たちはあっさりと入口まで戻ってくることができた。

 もしかすると帰り道で油断している所に暴走した神聖剣が襲って……なんて展開もあるかと思ったが、そんなこともなく順調な帰路だった。

 全員欠ける事なくバハムートに乗り込んでいる。


「……なんでビスクも当たり前みたいにいるんだよ」


 そう、全員とはビスクを含めた全員だ。お前は欠けてて良かったのに。

 ディヴァイン・ウェポンが想像以上にヤワだったのを嘆いているのもこいつだ。


「おいおい、なんでは無いだろう。私の尽力あってこそお前たちは無事に聖剣遺跡を踏破できたのだぞ? 貴様が「俺たちは絶体絶命のピンチだ」と言っていたのは聞き逃していないからな?」

「ぐッ……! お前聞いてないようで結構聞いてるな……!」


 まあ……確かにビスクがいなかったら「祝福の8聖剣」に勝てたかって言われるとなぁ。

 道中はともかく、8体同時のあの時はどうしようもなかったのは事実だ。正直、返す言葉はない。


「そんな私にお前たちはもう少し感謝したっていいだろう。多くは求めんが、送迎と、食事宿泊程度の報酬くらいはあって当然だろう?」

「しかもマジで多くは求めてない……!!」

「謙虚だね」


 やった事を考えたらもっと吹っ掛けてもいいだろうに、本当にささやかな褒美を求めてくるビスク。

 横暴で傲慢な態度が目立つくせに、なんでたまに勇者っぽい事するんだよ。


「……分かったよ、シスターには教えてやるから、うちで休んでいけばいいよ」

「フフフ、私に一時の癒しを与えられる事、光栄に思う事だな」

「でも! リュオンとローレナには絶対に近付かせないからな!!!」


 それとは別にこいつの性癖の一端は遺跡2層で見せつけられたからな、何が何でもあの2人には接近させる気はない。


「そうか、元よりそんな気はなかったが、言われてしまっては私も気をつけさせてもらおうか」

「ほんとか……? 不安だけど、バハムート、そろそろ出発しよう」

『分かりました。行き先は処刑島でよろしいのですね?』


 お、バハムートもビスクをその辺に投棄しようと提案してくれてるのかな。

 そうしたいのはやまやまなんだけど、もう孤児院に招待するって言っちゃったようなもんだし、反故にしたら何されるかわかんないしな。


「いや、このまま孤児院でいいよ」

『……そうなのですか? 当機はこのまま銀の災厄を討ちに向かうのかと』


 ん……? ビスクをぶつけて来よう、みたいな話かな。


「それはやらないかな。みんなも疲れてるだろうし、寄り道しないで帰りたいから」

『なるほど、ではそれに従いましょう』


 なんとなく違和感があったが……まあバハムートはちゃんと俺の指示に従って飛んでくれたからそこまで気にはしなかった。

 とにかく、これで長いようで短かった聖剣遺跡の攻略も終わりを迎える。

 何事もなければ孤児院を襲い来る脅威を跳ね退けられた事になるはずだ。

 彼女の高速飛行なら10分とかからず孤児院まで到着してしまうだろうが、それまでの間、俺たちは静かに目を閉じて連戦の疲れを癒すのだった。

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