死の嵐
死聖剣ドネとの攻防。
俺はその打ち合いの度に死ぬが、それでも徐々に刃はドネの肉体を削っていた。
少しずつジルの刃を届かせられているのだ。俺が死を繰り返すほどに撃破は近付いていく。
死聖剣で防がれたり斬られたりするだけじゃなく、ドネの肉体にジルで触れたり、そもそもどちらに触れずとも死ぬ時もある。多分、こいつの放つ黒い霧にも死の力が宿っているんだろう。
『いいぜぇザック! このままその骨をブチ砕いてやれぇ!』
僅かずつではあるが俺が押しているのはジルにも分かるのか、そんな事を叫ぶ。直接死の聖剣に触れてるのに、元気だな。やっぱり魔剣には効果が及ばないんだろうか。
なんにしても言われるまでもない。このまま、俺がドネを打ち倒してみせる!
『ぬうう、やるではないか』
俺の斬撃を防ぎ続ける死聖剣ドネは防戦一方だ。
こっちの攻撃を防げるくらいの反応速度はある以上攻勢に出られない訳じゃないはずだが、向こうからはほとんど何もしてきていない。
まあ能力が能力だからな。わざわざ自分から攻めずともただそこにあるだけで脅威な類いの存在だ。守りはともかく攻めは慣れていないのかも。
それなら好都合だ。このままドネの守りを掻い潜り、じわじわと傷を広げていけば、勝てる。
そう考えながら、俺は何度目かもわからなくなったが復活し、ドネへと迫る。
『ならば、こちらも手の内を見せようではないか』
「ッ!?」
ドネは、死聖剣を床へと突き刺す。
それに呼応するかのように、広間の四隅に天井から聖剣が落ちてきた。
「ここからが本番って事か……!!」
流石に上位聖剣なんてだけあって、本当に攻めの経験がない訳じゃないか。今までのは俺の力を確かめていただけだったらしい。
聖剣が起動し、その力を発揮し始める。
それと同時に、俺はまた死んでリィンたちの待つ入口へと戻された。
『ようやく向こうも焦り始めたかぁ? ザックが死なねぇもんだから余裕ぶってもいられなくなってんだろうなぁ?』
「あっちに後がないのは分かりやすいな。何にしてもやる事は変わらないよ、このまま俺が押し切って……ッ、リィン、下がってッ!!」
「うあっ!?」
ぞわっ、と嫌な予感がして、俺は咄嗟にリィンを突き飛ばした。
さっき現れた聖剣の力なのか、なにかを浴びた俺はそこで死んで灰になり、尻もちをつくリィンのそばで復活する。
「な、なんだよ急にー!」
「……リィン様……、すぐに、そこから離れてください……」
カーナは既にドネの攻撃の正体を見破ったかのように、リィンへ警告を発する。
それで俺もなぜあの一瞬で死んだのかを理解した。
ドネは、死聖剣と共に部屋の中央で待ち構えている。剣を投げてきたとか、そういうのではない。
この部屋の中から、びゅうびゅうと風の音がするのだ。まるで暴風のように。
『……こりゃぁ、さっきの聖剣が風を巻き起こしてるみてぇだぞ』
「風に乗って……黒い霧が漂っております……! あれには、触れてはいけません……!」
触れれば死んでしまうドネの黒霧。それは吹き荒れる風の聖剣によって室内を駆け巡り、部屋の外まで広がろうとしていた。
「……この辺も安全じゃなくなっちまったってか!」
『然り。死からは、決して逃れられぬ。この嵐は、お前たちをどこまでも追い詰めよう』
ドネの言葉に合わせ、部屋の前にも1本の聖剣が天井より落ちてくる。
その聖剣が持つ力がどんなものか、俺はすぐに察した。
「おおおおおおああああああッ!!!」
その力が発せられる前に、俺はジルで聖剣を叩き切った。
刀身の砕けた聖剣は、効果を発揮せずに沈黙するが、部屋の中より吹く死の風を浴びて俺はまた死ぬ。
『……正解だぜザック。今のも、部屋ん中と同じ風を撒く聖剣だ』
ジルが囁くのは俺が考えていた通りのものだ。
死聖剣ドネの放つ黒い霧を飛ばし、俺だけでなくリィンたちも殺そうとしたんだろう。
風そのものは攻撃力などないようだが、そこに死の力を持つ霧が乗って飛んでくるなら、それは恐ろしい攻撃になる。
「……あいつより先に、周りの聖剣を破壊しないとか」
死の暴風を巻き起こすドネを打ち倒すには、まず周囲の4つの聖剣を砕き、風を止めなくてはならない。
俺だけでなく、放っておけばいつリィンたちが巻き込まれるかも分からないし、これでは俺がドネに近付くのもままならない。
まずはこの風を止めるべく、俺は部屋の中の4つの聖剣へと狙いを変えるのだった。




