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俺だけS級! ……え、でも追放?

「えっ、俺だけ孤児院に帰れって言うのか!?」


 冒険者ギルドでの実力測定。孤児院で一緒に育った5人と共にそれを受けた俺は、仲間たちからそう告げられてしまった。


「うん、ほら、だってザックだけランク違うしさ」

「そ、そうだけど、S級だぜ? 俺」

「シルバーのSの事じゃないの……」

「それを言ったら俺達はゴールドなんだぜ、G級だよG級。狩りゲーだったら俺達のが上になるじゃんか」


 さっきまで仲間として全員で共に冒険者生活を過ごしていこう! という雰囲気だったのに、俺の実力が彼らより低いと分かった途端にこんな対応になってしまったのだ。

 仲間だと思っていたはずのギルバー、ハミア、トラッド、モルガン、ゼンの5人は俺に何とも言えない目を向けてくる。


「諦めろってザック。シルバー級のお前が俺達と一緒に戦ったら、絶対危ないって」


 言い聞かせるようにギルバーが俺を見ながら肩を叩く。

 この冒険者ギルドでは冒険者として登録する際、特殊な機械で登録者の力を測ってくれるのだ。

 だが、その計測された力は登録時点でのものじゃない。その人物がどれほどの力を持っているのか、そして鍛え上げた末にどこまでの力を得られるのか。

 そういった未来の力をも加味しての実力を測定してくれているのだ。魔物などに対しても推測レベルではあるがこのランク付けがなされているため、依頼を受ける際の目安にもなる。

 その結果、俺はS級……というかシルバー級の力があると測定され、他の5人は俺よりワンランク上のゴールド級の力だと判明したという事だ。

 早い話が、俺は今現在も彼らより弱く、そしてどれだけ頑張っても彼らを越えられないらしい。


「そ、そんな事ないって! きっと俺だって何か役に……!」

「ザック」

「な、なんだよハミア」


 どうにかギルバーの決定を覆そうと声を上げる俺に、ハミアが仕方なさそうに見つめてくる。


「私たちだって別に意地悪で言ってるわけじゃないの。みんな同じ孤児院で育った大事な仲間で、同じ転生者だもん。そのザックが私たちに無理矢理合わせて凶暴な魔物と戦って、死んでほしくないってだけなの」

「っ……」


 彼女にそう言われ、俺は思わず押し黙る。

 そうだ、俺達は同じ孤児院で育っただけでなく、みんな異世界から転生してきた仲間でもあるのだ。

 ……まあ、俺だけあんまり前世の記憶、あんまり覚えてなかったりはするけど。

 そんな事より、5人の意見は同一のようだ。みんな俺は帰って、孤児院で暮らした方が安全だと言いたいらしい。


「……そんな顔するなってザック。ちゃんとお前とシスターにも稼ぎのいくらかは持ってくからさ」

「ギルバーの言う通りよ。お世話になったシスターに恩返しするついでに、ザックの分も一緒に渡すから」

「や……やだよそんなヒモみたいな生活!!」


 その後も必死に抗議したものの、俺の意見は結局誰にも聞いてもらえず、そのまま孤児院へと帰ることになってしまった。

 ギルバーたちの方は5人でパーティを組み、チーム名『黄金の旗』として活動を始めたそうだ。

 冒険者ギルドから孤児院までの道中、俺はずっと俯きながら歩いていく。

 どうして俺だけシルバー級なのか。同じ場所で育ち、同じ転生者として生きていたのだから、そこまできたら同じゴールド級の力を持っていても良かったんじゃないか。

 もしも俺にだけ彼らより劣る力を与えた神様が見ているのだとしたら、是非とも文句を言ってやりたいものだ。

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