98話 宣戦布告
闖入者は気絶した徹を肩に担ぐと、那月を間近からジロジロ舐めるように眺める。
「あんた、強いやろ」
春馬は顔を上げて那月の顔を見ると、微笑んでその肩を強く叩く。
「いやーよかった、良かったわ!コイツの言う通りな口だけ達者の臆病もんやったら、楽しめへんからな!」
「ま、俺も成長してるからな」
「せやろな。ただ、俺が思うんにじぶん、入試時点ではコイツん言う通りやったやろ」
春馬の言葉に那月は一瞬喉を詰まらせた思いになる。
その状態から何かを言おうとする那月を春馬は手を広げて制した。
「いや、言わんでええで。過去がどうとか、未来がこうとか、俺は一切興味ない。あるんはただひとつーー今のじぶんが俺より強いんか、そうで無いんかや」
「…………ぷッ……ハハハハハ!!!」
「なんや、オモロかったか?」
「……いやなに、なんかシンパシー見たいなもの感じてな。ほんとお前の言う通りだよ、春馬。大事なのは俺より強い奴が今何人居るかだよな」
「せやせや」
春馬は満足そうに頷く。
「やから、あんたには期待してんで那月」
そう言うや、春馬は踵を返した。
数歩歩いて、そして前から歩いてきた集団の先頭に立つ。
「大虎、大虎!」
「分かってるよ!」
那月達の後ろでそんなにやり取りが行われる。
程なくして、那月の両サイドからルナと大虎が走って行って、その集団の右端と左端で腕を組む。
それを見てとって、ひとつ頷くと春馬は勢いよく振り返った。
「改めて自己紹介や。俺の名前は芭条 春馬。いつか最強のプレイヤーの名を轟かせて世界一有名になる男や。ほんでもってーー」
春馬は徹を下に落とすと、大仰に手を広げる。
そして、続く一言を言い放った。
「俺らB組はあんたらA組に宣戦布告を申し込むで!!」
「「「「「「「はぁぁぁ!?!?」」」」」」」
突然の宣戦布告にA組一同が困惑する中、唯一不敵な笑みを浮かべる那月だけが春馬の提案に頷いた。
「受けて立つ!!」
「そう来なくっちゃ」
「負けた方はどうする?」
「せやな、勝ったクラスに服従。これでどうや?」
「よし、決まりだな」
「ちょぉぉぉーーーー!!!!」
「何勝手に話進めてんの!?何勝手に決めてんの!?!?」
勝手に話を進める二人の間に割って入ったのは、紅蓮と、朝日だ。
紅蓮は那月の肩を掴む。
「那月!お前何言ったか分かってんの?何言ったか、分かってんの!?」
「そうだよ!負けたら服従とか、ほんとに負けたらどうすんのよ!!」
そう叫ぶ朝日に、那月はケロッとした表情で返す。
「いや、勝てばイイじゃん」
「イイじゃんって、そんな簡単に……!」
「ハハハ!ほんま那月はオモロイな!……せやけどA組さん。ここは那月の言い分が正解やで」
「……つか、てめぇもてめぇだ。なんで俺らが服従しねぇといけねぇんだよ」
「あぁ、それはな……」
春馬はそれまでの無邪気な笑みを消すと、声のトーンを低くする。
「じぶんらが邪魔やねん」
「ーーッ!」
「俺の夢は最強のプレイヤーとして誰よりも有名になる事や。せやのに、せやのに……じぶんらときたら入学して早々にダンジョンに潜って、一層のボス倒してくるし!」
「「それは那月と翔がしたことです!!」」
と、紅蓮と朝日が声を揃える。
「更には校外でも迷宮崩壊食い止めるし!!」
「「それは…………」」
と、紅蓮と朝日が言葉を詰まらせる。
「挙句の果てに今度は封印の悪魔を解放したとか!!!」
と、A組全員が目を逸らす。
「んなもん否が応でも耳に入ってくるわ!有名になってまうわ!!」
言い切った春馬は荒れた息を整える。
「……せやからじぶんらを服従して、支配下に置いて、俺らより目立たんよう管理するんや。そーすれば俺らが有名になれるやろ」
「だけどーー」
「つーわけやから、ほなまたな〜」
紅蓮がなおも食い下がろうとするが、春馬はそれを無視して紅蓮の横を手を振りながら通り過ぎて行った。
それに続いてB組の連中も歩いていく。
「ミミズク……バイバイ」
「え、あ、うん。バイバイ……?」
最後にルナが木菟に手を振り、木菟がそれに手を振り返すと、彼らは本当にどこかへ行ってしまった。
後に残された那月達A組の皆は、ただ黙して音淵先生を待つ事にした。
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