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95話 強者と弱者

『なァ。茶番は終わってモ良いんだヨナァ?』


 その声が低く呻くのと、二つの絶叫が響くのは全くの同時だった。


 甲高い叫声を轟かすのは日奏と朝日。理由は一目瞭然、その足があらん方向にひしゃげているのだ。

 それはもう、足が向いていい方向ではない。


『サテ、借りを返そうカ。アー、あれはなんて言ッタか……ニンゲンがよく使う……ア、そうソウーー『やられたら殺り返す、二億倍返し』だったナ』


 少しばかり規模が大きくなったその言葉に、ツッコミを入れられるものはこの場に一人といなかった。

 それほどにクヴェルの放つ異様なまでの圧力を孕んだ殺意は強かった。


 クヴェルが一歩前に踏み進む。


「ま、て……!」

『ァ?』


 不意に日奏がクヴェルの足首を掴む。

 急に足を掴まれたクヴェルは瞳により一層の殺意を込めて、その足を持ち上げた。

 伴って、日奏の上体も起こされる。


『ジャマすんな』


 刹那、クヴェルがもう片方の足で日奏の顎を蹴りあげた。


「ガッーー!!」


 空高く打ち上げられた日奏は、しばらくして地面に鈍い音を立てて体を打ち付けた。

 そして、気を失った。


『フン!……サテさて、次はどいつにし、よ、う……カナ……!!』

「くっそ、俺かよ!!」


 天斗の方へとクヴェルが走り出す。嘆く天斗は、しかしすぐに戦闘態勢に移行する。

 だが、それも虚しく、防御は骨とともに砕かれ、腹部に思い一撃を食らった天斗は白目を向いて、その場に倒れる。


 続いて、クヴェルは獅雄に目をつけた。


「今度は俺か!いいだろう!来い!!!!」

『言われなくテモ!!』


 クヴェルの蹴りが弾丸のように飛んでくる。

 獅雄はそれを半身になって避けると、足首を掴んで地面に叩きつける。


『うぉ?』


 クヴェルは地面に叩きつけられるすんでのところで、腕を四本下敷きにし、衝撃を和らげる。

 また、余った四本で獅雄の四肢を掴むと、地面についた四本で体を支えて、掴まれてない方の足を獅雄の腹部にめり込ませる。


「ガッ……!……やるなぁ!!」


 獅雄が両手を合わせて、一つの拳を作り上げる。

 そして、それをクヴェルの足目掛けて振り下ろした。


「『落し鐘』!!」

『効かねぇナ!!』


 獅雄の拳がクヴェルの足を『ひ』の字に折り曲げた。

 しかし、クヴェルは一声叫ぶと、それを元に戻し、戻されたことで跳ね上がった獅雄の腕を掴んだ。

 そしてその場で回転を始めると、獅雄の体を浮かせて、駒のように回る。


 回転数が限界値まで達すると、クヴェルは横回転を縦に変え、獅雄の体を地面に叩きつけた。


『終わりだ……『黒死線』』


 最後に獅雄の四肢に黒の光線を放つと、綺麗に骨を絶った。


 獅雄が気絶すると、クヴェルは禊と鵺に目をつける。

 再び弾丸のように飛来すると、鳥の足を槍のように突き出した。


「させるか!!」

『ーー!?』


 突如、上空から飛来した新しい鳥足がクヴェルの足と火花を散らす。

 だがーー


『よっワ……!』


 クヴェルの言葉通り、拮抗する間もなく木菟が吹き飛ぶ、更にその後ろにいた二人もそれぞれ胸と腹を蹴りこまれ、その場に倒れ伏す。


 クヴェルはそれを放置して振り向く。視線の先に捉えるのは愛莉と花恋の少女ふたり。


『次はオマエらだ!!』

「来るよ、花恋っち!」

「わかってる!!」


 少女がそれぞれ別の方向に走り出す。

 クヴェルはそれぞれを睨むと、厄介そうな花恋の方へ疾駆する。


「………………《錯乱》……」


 不意に花恋とクヴェルを結ぶ一直線上に結夢が身を踊らせる。

 そして、クヴェルを睨みつけると、スキルを発動させた。

 一瞬、クヴェルの動きが停止。しかしーー


『効かねぇヨ!!』


 クヴェルは再度地面を蹴ると、更なる加速をもって、結夢の頭部を鷲掴みにした。

 そして、そのまま走り、花恋に近づくと、結夢の頭と花恋の頭をぶつけた。


「…………!」

「ガッ…………!!」


 ふたりは白目を向くと、その場に倒れ伏す。

 それを見た愛莉が殺意を瞳に、クヴェルの方へ引き返してくるが、道半ばでクヴェルの手から放たれた光線が腹部に刺さって倒れ込む。


 クヴェルはそこで一息つくと、残るメンバーを確認する。

 颯とめめと、翠、雫玖。


 それらを一瞥してから、クヴェルは空中に羽ばたいた。


 どうやら一人ひとり殴り倒すのに飽きたようで、彼は空中の、めめの跳躍でさえ届かない位置に飛翔すると、そこで停止する。


『……『槍雨』』


 瞬間、翼を横にこれでもかと開く。

 空を埋め尽くすが如く黒の槍が無数に生成される。

 その数ざっと百を超える。


 クヴェルが八つの腕を同時に振るった。


 と、同時、百の槍は雨のように地上に降り注ぎ、颯達の致命傷を避け、四肢や、脇腹を穿いた。


 それぞれに悲鳴を上げる彼らを無視すると、クヴェルは空中を蹴り、地面に急降下。

 地面スレスレで九十度曲がると、勢いそのまま氷華の方へ向かった。


「……通さない……!」

『ジャマ』


 クヴェルの拳が氷華の腹を殴って、それだけで彼女の意識を刈り取った。

 そしてーー


『よォ。目ェ覚めたカ?ヒメ様よ?』

「ゆる、さない……!!」


 気絶から回復した百花がクヴェルを睨みつける。

 それを見下ろして、クヴェルは不敵な笑みを浮かべた。

本作をお読みいただきありがとうございます。


「面白い!」


「続きが気になる!!」


「頑張れ!!!」



と思って頂けたら


下記の☆☆☆☆☆から評価をよろしくお願いします。


面白かったら★★★★★、まぁまぁじゃね?と思われた方は★☆☆☆☆。


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