92話 不死身
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『やったのカ!?』
『俺たちの力で倒したゾ!』
『イヨッシャァ!!』
『…………なーんて、そんなの問屋が卸しませェン!!』
全員が戦慄を胸に抱いていた。
やめてくれと、心のどこかで願っていただろう。しかし、それは無惨にも裏切られる。
目の前で風に吹かれた白灰が竜巻となり、その中で人の形を形取る。
頭が整い、体が足され、腕が盛られて、脚が組み込まれる。
黒の角膜に赤の瞳孔を開いて、そこから色が全身に伝播する。
ついに完全復活を果たしたクヴェルは、少々顔を顰めて、全身の骨を鳴らし始める。
『アァ……。ひでェことスルなあ。お陰様で全身が凝ってしょうがねェ』
笑っていた。嘲笑だ。
『……ンで?理解能力に乏しいニンゲンはコレでも俺様が不死身じゃないと、理解できないカ?』
「不死身……ほんとうに……?」
信じられないとばかりに百花が呟く。
他のみんなも同じ意見のようで那月でさえ信じられないと言わんばかりの表情で固まっていた。
『本当だゼ、メスニンゲン。なんなら、そこの奴に聞いてもいい。ナァ?テメェは知ってんだろ、俺様が不死身だってよう』
「ひっ……!」
そう言ってクヴェルが睨んだのは月夜先生その人だった。
彼女は小さく悲鳴を上げると、鋭くなったクヴェルの視線に全身を震わせながらも辛うじて動く首を縦に振った。
「ほ、本当ですよ。……不死身の悪魔『クヴェル』。その異名の通り奴は死にません。それ故に、当時指折りの実力者だった『厄災の魔女』でさえ、討伐を断念し、封印という決断をしました」
だから、彼女の決死の決断を不意にしないためにその封印を破らないようにしてきたんです。と月夜先生は付け足した。
「……ですがーー」
月夜先生はそこで止まらず、更に言葉を続けた。
「厄災の魔女はなにも攻撃が効かないから封印したのではありません」
『……ァア?』
クヴェルが喉の奥から唸った。それ以上喋るなという警告だ。
しかし、月夜先生は続けて口を開く。
「……彼女は、彼女だけは、唯一クヴェルに攻撃を与えることが出来ました。そしてあと一息という所までも追い詰めたんです」
「じゃあ、なんでそのまま倒さなかったんだよ」
那月が問う。
それに答えたのは、月夜先生では無く、クヴェルだった。
『ヘッ!人質だよヒトジチ。テメェらニンゲンは愛情たっぷり劣情どっぷりの下賎な下等種族だからナ。俺様を殺せば半径五十キロメートル以内のニンゲンが全員死ぬと言ったらアイツも例に違わず固まりやがったよ』
「……クソ野郎」
『なんとでも言いやがれ。俺様は勝つためにはなんでもやるんだよ』
鼻で笑うクヴェルを睨みながら、那月は先程月夜先生が言っていた言葉を思い出す。
ーー彼女だけは、クヴェルに攻撃を与えることが出来ました。
(つまり、アイツは絶対的に無敵ってわけじゃいんだな)
と、那月が考えた時、まるでそれを見通したかのようにクヴェルが那月を睨んだ。
『お前いま、俺様を倒せるかもとか思わなかったか?』
「ーーッ」
『思ったナ。……じゃあ、ひとつ聞かせろ。そしたらその答えを教えてやるヨ』
「な、なんだ……?」
クヴェルは一拍置くと、真剣な声音で問いかけた。
『お前は……魔女の子孫か?』
「……違う」
答えるやいなや、クヴェルは俯いた。
そして、クックックと腹を抱えて笑った。
『そうか、そうか!違うか……ケケケ!!!』
「何が可笑しい!!」
人をバカにするように笑うクヴェルにとうとう堪忍袋の緒が切れた那月が怒鳴る。
すると、クヴェルは目尻に溜まった涙を拭って、笑いを噛み殺して告げた。
『いやなに、可哀想ダト思ってヨ』
「可哀想……だと?」
『アァ、可哀想ダ。なんせ、テメェじゃア、俺様を殺せねェ、いや傷ひとつ付けれねェンだからナ!!』
再びケケケと笑い出すクヴェル。那月が更に何かを言おうとした瞬間、奴の目が那月を睨んだ。
『魔女の子孫じゃねェなら、警戒する必要もねェ。……タダマア、せっかくのヤツの関係者だ。トクベツに最後まで生かしといてやるよ』
「何を……」
『ここにいる奴はニンゲンにしては瘴気を多く含んでヤガル。メスニンゲンにしても、カミナリ野郎にしても、そこのモノシリ野郎にしてもな。特にテメェと、後ろのメスは格別だ。だから、俺様のメインディッシュとして、恐怖を瘴気に変えてやがれ』
クヴェルは那月と氷華を見ながら言う。
那月を含む全員がクヴェルが何を言っているのか分からなかった。
それを見渡して、舌なめずりをすると、クヴェルは両手を大仰に広げた。
『さぁ!俺様の糧となれニンゲンども!!ケケケッ!……大虐殺の始まりダァ!!』
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