85話 我らA組探検隊
氷華の回帰祝いから四日経った日曜日のこと。
学生寮のリビングに甲高い二つの声が重なった。
「「探検したい!!」」
一人は白髪を左側で結ったサイドテールが特徴的な橘 花恋。
もう一人は、もみあげを肩に垂らした、茶髪ボブヘアが特徴的な二尾 愛莉。
彼女達はリビングのテーブルを強く叩いてそう宣言した。
「探検?……あぁ、ごっこ遊びね」
「違うにゃ!」
茶髪で黒斑の文様の入った髪をもつ少年ーー木菟のボケに、愛莉のツッコミが突き刺さる。
「違くて。ボク達もう入学して二ヶ月近く経つわけじゃん?……それなのに、学校のこと全く知らないのってなんかあれじゃん?……だから、この際ボク達で探検をしようってわけ!」
「なるほどな、探検ね……」
那月が何かを思案するように間を置いて、頷く。
「よし!俺も行くぜ」
「ホント!?」
「じゃあ、僕も行こうかな。君たち三人だけじゃ何をしでかすか分からないし」
「木菟っちも!?」
那月に続き、木菟も参加を表明すると、愛莉が二人の手を取ってブンブンと振り回す。
ふと、愛莉が視線を移した。
そこには、寝ぼけ眼を擦りながら、崩れたパジャマ姿を歯にかける様子もない結夢の姿。
その姿を見た瞬間に、愛莉の顔が明るくなる。
「もちろん、結夢っちも行くよね!」
「…………?…………。。。………………(こくん)……………………」
「やたー!」
恐らく寝起きで頭が動いていないのだろう。何やら分からないという様子での頷きであったが、この元気少女達の前では一挙手一投足が肯定に捉えられる。
もともと結夢はぼー、としてるので、本心から行きたいと思って頷いたのかも知れないが、それは本人のみが知るところだ。
結夢と愛莉のやり取りを見守っていた那月はふと、ソファの方に目をやった。
そして、そこにはみ出た赤髪を見る。
「紅蓮も行くよな?」
「え?……あぁ、いや、俺は今日用事があるからよ」
「用事?」
「おう。政宗先輩に弟子入りしてくるぜ」
雑誌を置いて、親指を立てて見せる紅蓮。
彼は林間学校という名の強化合宿の際に、政宗先輩の特訓を受けていた。
彼に教わったのは短期間であったが、それでも一つの技を会得し、そこから広がる戦術の大さや、自分の限界点の高さを知ったのだろう。
だからこそこの度、先輩に弟子入りという結論を出した訳だが、流石の彼でも生徒会役員の弟子となるのは難しいだろう。
「頑張れよ紅蓮。応援してるぜ!」
「おう!那月も、探検頑張れよ。この学校広いから迷子になるなよ」
「ならねぇよ!」
なはは、とひとしきり笑うと、紅蓮は大きく伸びをして立ち上がった。
「んじゃ、俺もう行くわ。多分夕方までかかると思うから、よろしく」
「めめに伝えとくよ」
夕方まで帰ってこないとなると、めめの食事の用意が無駄になる可能性もあるからだ。
那月の言葉に感謝の言葉を重ねると、紅蓮は身支度の為に、自室に向かった。
「さて、俺達も行くか?」
「うん!メンバーはこの五人でいいかな?」
「若干多い気もするけど、いいんじゃないかにゃ!」
「意義なーし!」
「……………………………………(こくん)」
那月、木菟、愛莉、花恋、結夢の計五人からなる『弾二四高校一年A組探検隊』はこうして結成された。
「さて、まずどこから行く?」
休日とは言え、行く先は学校な為、制服に着替えた面々はその行き先に迷っていた。
「どこ行く?」
「ん〜…………にゃ!?ダンジョンとかどうにゃ?」
「だ、ダンジョン!?」
愛莉の突飛な発言に、木菟が大きくのけ反った。
まさか、急に犯罪を犯すとは思わなかったからだ。
「プレイヤーじゃない人間のダンジョン探索はプレイヤーの許可が無い限りダメだって法律で決まってるだろ!」
「そうだけどさ!入りたいものは入りたいの!ていうか那月っちはそれめっちゃ破ってんじゃん!!だからいいじゃん!」
「うぐっ……!」
痛いところをつかれ、那月が一歩後退する。
そこを隙とみた花恋と愛莉がすかさずその懐に入り、その小柄な身体を十全に活かす。
「「那月くん(っち)。お、ね、が、い♡」」
「うぐ……ぐぐぐ…………んんぅ…………はぁ、分かった。分かったよ」
とうとう降参した那月は両手を上げる。
すると、二人はこれ以上ないほどの笑みを浮かべて、ハイタッチを交わした。
「ただし、一層までな。それ以降は俺も行ったことないし、行けないからな!」
「「はーい」」
分かっているのかいないのか。そんな返事をした二人にため息をつきながら、しかし那月もほんの少しの期待を胸に抱いていた。
「んじゃ、行くか!」
「「「おー!!」」」
「…………………………(こくん)」
五人は寮を出発して、学校へと向かった。
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