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75話 ノンシーフォレスト・ダンジョン攻略⑦

久々の更新!お待たせしました!

 渾身の一撃が、無防備な額にぶち込まれた。

 当然暫くは動けないだろう。ーーそれが人間であれば。


 片膝を着いたツーラン・バオは、一度頭を振る。そして、吠えた。


 「クォォォォォン!!!!」


 甲高い咆哮が木霊する。その時、ツーラン・バオの肩に生える水晶が緑色に輝き出す。

 額から流れる赤い鮮血は、みるみるうちに姿を消し、額の傷はあっという間に塞がった。


 「ガルーー」


 再度頭を振り、立ち上がったツーラン・バオは完全に元の状態となっていた。


 「怪我が治った!?」

 「くそ……回復持ちか……」


 那月の驚くのを他所に、颯が直ぐに状況を飲み込む。そして、顔を顰めた。


 人がスキルで回復をするように、モンスターも同じく回復をする。

 ランクの高いダンジョンのボスモンスターは大体が回復持ちだ。

 下位のランクではあまり見られないものの、その存在自体はゼロではない。


 回復するモンスターであると分かった以上、討伐の可能性が目に見えて減少した。その事実に颯は頭を抱えた。


 「これなら階を一つずつ上がって行った方が安全だったか……」


 たらればを放つくらいにはその状況は芳しくない。

 颯は直ぐにかぶりを振る。


 「考えても仕方ないか……みんな!敵は回復をする!だから、回復よりも多くのダメージを与えるんだ!」


 回復持ちへの定石だ。ボスモンスターにたかだか高校生の力の定石が通るかは別として、それは最善の策といえた。


 颯の指示を受け、一番最初に飛び出したのはやはり那月だった。


 「くらえ!《:重力》!!」


 ただの重力の塊がツーラン・バオを地面に押さえつける。

 ツーラン・バオの悲鳴に似た苦痛の声が響く。しかし、珍しく那月の追撃はなかった。


 「紅蓮!」

 「おうよ!『魔剣解放ーー炎上烈火』!!」


 那月が叫ぶと、その後ろから炎を纏った大剣を頭上に掲げる紅蓮が飛び出してくる。

 動けないツーラン・バオが見上げるようにそれを目にした。


 「ガァ!?」

 「はぁぁぁ!!」


 驚きの声が上がるが、それを無視して紅蓮は大剣を振り下ろした。


 「肩の水晶を狙え!」


 颯の指示が叫ばれる。剣は既に振り下ろされて、重力に従いツーラン・バオの額へ向けられていたが、流石は紅蓮と言うべきか、瞬時にその狙いを肩の水晶へと移行する。


 「ハァ!!」


 気合いと共に、剣が加速。そして、ツーラン・バオの右肩の水晶を半ば辺りで二つに分断した。綺麗な太刀筋だ。


 断ち切られ、地面に落ちた水晶がバリンと割れて、細々としたものとなる。


 「あと一本!」

 「クォォォォォン!!!」


 那月がもう一方の水晶へ向けて攻撃を仕掛けようとしたその時、再び甲高い咆哮が放たれる。


 そして次の瞬間、ツーラン・バオの右水晶が淡く光ったと思うと、それがみるみるうちに元の通りに再生していく。


 「う、嘘だろ……」


 回復速度こそ二本の時に劣るが、それは二本の水晶を同時、もしくは一方ずつーーただしもう一方が再生する前に破壊しなければならないという意味に他ならなかった。


 絶望の顔が颯達に現れる。

 しかし、そんな中でも闘志を燃やす者が二人存在した。

 那月と紅蓮である。


 「もう一回やるぞ!」

 「おう!」


 那月の叫びに紅蓮が答える。同時、那月がツーラン・バオ目掛けて走り出す。


 「《:重力》!!」


 再びの重力拘束。那月がツーラン・バオの体全体を重力の手で押さえ込む。

 だが、ツーラン・バオもそれを黙って見ていない。

 左肩の水晶が赤く光輝いた。


 「ガァァ!!」


 直後、口を開いたツーラン・バオのその口から球状の炎が放たれた。


 「うわ!?」


 咄嗟の動きでそれを回避した那月だったが、左肩を少々掠めたようだ。

 ジャージが燃えて、火傷を負った肩が露出する。


 那月はその傷を一瞥すると、それをつけた張本人であるツーラン・バオを睨みつける。


 「ちっ、魔法も使えるのか……」

 「嘘だろ……」


 颯が信じられないとばかりに首を振る。

 そんな颯を那月は横目で見やる。


 「颯、策をくれ」

 「え……?」

 「お前の頭が必要なんだよ。俺や他のやつじゃこの状況をなんとも出来ねぇ」


 那月の言葉に颯は少し思案する。

 ツーラン・バオは魔法を使った後で、少々回復したいのだろう。襲ってくる様子はない。それをするだけの時間はあった。


 五秒程の思案の末に、颯は覚悟を決めた瞳で那月を見る。そして、力強く頷いた。


 「わかった。やるだけやってみるよ。……でも、もし失敗しても……」

 「おう!そんときゃ覚悟決めて死ぬだけだ」

 「だね!」


 颯は頷くと、那月と紅蓮、それと氷華に指示を出していく。


 「ほんとにそれで上手くいくのか?」

 「心配……」

 「分からない。……だけど、これ以外に無いと俺は思う」


 颯の提案に紅蓮と氷華が怪訝そうに首を捻るが、その後の言葉に唾を飲んで頷いた。


 「死ぬ時は一緒にってか……!」

 「なるほど……私は……構わない。…………もう、覚悟は出来てる」

 「俺もだ!」

 「みんな…………」


 涙を拭うような動きをする颯。一度それをすると、今度は息を大きく吐いた。


 「行くぞ!」


 その掛け声と共に走り出したのは那月だ。先程と同じようにツーラン・バオの目の前まで行き、またもやスキルを発動させる。


 しかし、やはり結果は同じく。同じ攻撃が通用するはずも無く、炎の魔法が放たれる。


 「それは、こっちも同じこと!」


 それは先程も見た攻撃。学習するのは人間の専売特許である。

 颯の声と同時に、那月の目の前まで迫った火球が白い煙へと変化する。


 「ガァ!?」


 驚いたような声を上げるツーラン・バオ。

 それを見た氷華が得げに鼻を鳴らす。

 そう、ツーラン・バオの攻撃が放たれた際、氷の球を打ち込み相殺させたのは何を隠そうこの氷華なのだ。


 「おりゃぁあ!!」


 目の前に障害の無くなった那月が声を張り上げてツーラン・バオに迫る。

 そしてーー


 「《:重力》!!」

 「グァーー!!」


 重力の手がツーラン・バオを押さえつける。ツーラン・バオの前脚が折れ、地面に着く。そして、一瞬の硬直。

 流石のツーラン・バオといえど、那月の全力の《:重力》を食らえば直ぐには動くことが出来ない。


 ただの一瞬。ボスモンスターであるツーラン・バオからすれば気にすることも無い一瞬である。

 しかしことこの状況において、その一瞬は値千金の価値のある一瞬である。


 「紅蓮!」

 「おう!」


 それを逃すまいと、颯と紅蓮が駆け出した。

 それは瞬く間にツーラン・バオの懐へと迫り、両者同時に技を繰り出した。


 「『魔剣解放ーー炎上烈火』」

 「《加速》ーー『乗速一蹴』」


 紅蓮が右の水晶目掛けて魔剣を上段から振り下ろし、颯が左の水晶目掛けて速さを上乗せした蹴りを振り抜く。


 ほぼ同時に放たれた攻撃が、ツーラン・バオに回復の隙を与える間も無くその水晶をガラス片へと変える。


 「ガァァ!?」


 驚くツーラン・バオ。

 那月達は皆、元の位置まで戻ると、作戦の成功にハイタッチを交わした。


 「へっ!回復が無くなりゃこっちのもんだ!」


 那月が吠える。

 その目の先には俯くツーラン・バオの姿がある。

 それを見て、那月は鼻を鳴らした。


 「戦意喪失か……」

 「ーーガウ」

 「ーーッ!」


 その時、ツーラン・バオが顔を上げた。そして、そこに現れた不敵な笑みに那月の背筋に悪寒が走る。


 「まさかーー」

 「クォォォォォン!!!」


 再び咆哮。

 左肩の水晶が光り、徐々に回復していく。左が回復すると、今度は右だ。


 そして、十数秒が経った後、そこには完全に振り出しに戻ったツーラン・バオの姿があった。

本作をお読みいただきありがとうございます。


「面白い!」


「続きが気になる!!」


「頑張れ!!!」



と思って頂けたら


下記の☆☆☆☆☆から評価をよろしくお願いします。


面白かったら★★★★★、まぁまぁじゃね?と思われた方は★☆☆☆☆。


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