69話 ノンシーフォレスト・ダンジョン攻略①
那月達四人は、ダンジョンの入口の前まで来ていた。
「ここから先は俺が先導するよ」
颯はそう言うと、扉を開けて中に入る。
那月一人では下の階層を探すだけで時間を使ってしまったが、颯がいるのである程度の階層までは最短距離で行くことが可能だ。
那月達も颯に続き中に入る。
一層はただの岩の通路が続くだけで、ものの五分で下層への階段に辿り着く。
「ここが、ノンシーフォレスト・ダンジョン!?」
「俺が見た事のあるダンジョンとはまた違った感じだ……!」
「凄いね……」
二層に下りると、初めて来た三人が反応を示す。
「ほら、ぼーっとするなよ。早くしないと、氷華達が危ない目に遭ってしまう」
「分かってるよ!」
颯が注意を促すと、我に返った那月が返事を返す。
「早く行って、二人を助けねぇとな」
四人は再び走り出した。
十四層。
「もう十四層かよ!」
那月が叫ぶ。
ここまで氷華と碧海の姿は一度も見ていない。
「不味いな……あと二層……いや、ここと十五層で見つからなかったら、その先は俺達でも命がかかってくるぞ」
颯が深刻そうな顔で言う。
それに対し那月は……
「何言ってんだ?お前」
「は?」
これである。
那月は大きくため息を吐くと、呆れたと言った目を颯に向ける。
「ダンジョンってのは……常に命の危険と隣合わせの場所だ。常に警戒しとかねぇと死ぬぞ……!……俺はそれをよく知ってる」
「あ…………悪い」
那月の言葉に颯が謝る。
自分の警戒心の足りなさに気がついたからだ。
颯は一度頭を振ると、覚悟の据わった笑みを浮かべる。
「だったら、もっと先まで行けるよな」
「おうよ!」
再び気合いの入った四人は更に先を目指すべく、駆け出した。
ーーと、その時だった。
「ん?」
那月の足が何やら柔らかいものを踏みつけた。
「キノコ……?」
瞬間。ボブんという音と共に大量の胞子が辺りに撒き散らされる。
「うわ!?なんだ!?」
胞子は止むことを知らず、無際限に出ており、いつしか那月達の視界が奪われた。
暫くして、那月達の視界が晴れる。
しかし、同時に新たな危機が四人を襲う。
「けほけほ……なんだったんだ!?」
「……おい、那月……お前さっき自分で警戒しとかないと死ぬとか言ってよな……」
「………………」
「…………なぁ、この足音。説明してくれよ」
那月達の耳には一つの音が聞こえていた。
足音である。
一つでは無く、複数の。
十では無く、百単位のものである。
全員の視線が那月へと向く。
「に」
「「「に?」」」
「逃げろぉぉぉぉ!!!!!」
その言葉を聞き、一斉に駆け出す四人。
だが、その決断はあまりに遅すぎた。
四人が駆け出すと同時、木を食いちぎって緑色の狼が姿を表す。
それも四方八方からである。
「な、なんだコイツら!?」
「どう考えてもお前がさっき踏んだキノコの胞子に誘われてきた奴らだろぉが!」
正解だ。
狼どもは、胞子の臭いに誘われてここまでやってきた。
つまり、先程のキノコは罠だったという事だ。
那月は歯を強く噛み締める。
「極力戦闘は避けたかったんだけどな!」
直後、那月が背後の一体の狼目掛けて手を翳した。
「《:重力》!!」
那月がスキルを発動すると、狼は地面に吸い込まれるようにして、その場に倒れ伏す。
「後ろの奴らは俺が動きを止める!お前達は前の奴らを蹴散らしてけ!」
「分かった!」
「おぅ!」
「任せて!」
四人vs六百を超える狼の戦闘が開始された。
「《:重力》!《:重力》《:重力》《:重力》!!」
那月は背後から飛びかかってくる狼達へ片っ端らからスキルを掛け行動を不能にしていく。
その間、紅蓮、颯、日奏の三人は目の前の狼を討伐していく。
「『我流━━一閃』!!!!!!」
紅蓮が上段から剣を振り下ろす。
それは風をも纏い、広範囲に渡って狼達を吹き飛ばした。
「へ!愛用の剣の方がしっくりくるぜ」
紅蓮が手に持つのは、紅蓮が長年愛用する剣で『魔剣グランネビュラ』という物だ。
等身が紅く、まるで炎のようで、赤髪の紅蓮にとても似合っている。
魔剣というくらいだから不思議な力を秘めてるのだとか。
「《加速》━━『旋脚』!!」
続いて、颯の攻撃が狼達に直撃する。
こちらも範囲攻撃で、加速された脚で回し蹴りを行う事で、空気を巻き込んだ蹴りを放つことが出来るのだ。
颯の攻撃で前方に迫ってきていた狼共が一気に後ろに浮きとんだ。
「僕も負けないよ!《波紋》━━『水打ち』!」
次に、日奏がスキルを発動させ、空中に張り手を繰り出す。
すると、衝撃波が波紋状に生み出され、前方百八十度の狼達を一掃する。
三人のそれぞれの攻撃が絶え間なく続いたお陰で、狼の群れに隙間が生まれる。
「那月、今だ!」
「おぅ!わかった!」
紅蓮に声をかけられた那月はスキルを発動させた状態で、その場を離脱する。
そして、四人揃って出来た隙間を掻い潜り、群れの外へと逃げることに成功した。
「しゃあ!」
「安心するのはまだ早いよ」
「そうだ。まだ、後ろから追ってきてるからな!」
日奏と颯の冷静な分析を聞き、那月は振り返ること無く走り続ける。
時折、振り返ってはスキルを使い足止めを行う。
「おい!これいつまで逃げればいいんだ??」
「分からねぇよ!!」
「ちょっと待って!あれって……!」
那月が苦言を呈すると、日奏が前方を指さした。
すると、そこには一つの大きな扉があった。
ボス部屋はもっと先なので、つまりこれはーー
「安全地帯!!!」
那月の言葉に全員の足が早まる。
安全地帯にはモンスターは入って来れない。
つまりは、この狼との鬼ごっこに終止符を打てるということだ。
那月が立ち止まり、振り返る。
「俺が時間を稼ぐ!早く扉を開けてくれ!」
「わかった!」
那月がスキルを使って、狼達が後ろに行くのを防ぐ。
その隙に三人は扉に手をかけると、力いっぱいにそれを押す。
扉は地面を擦ると、ゆっくりと口を開いた。
人一人分入れるくらいの隙間を確保すると、三人は一人ずつ身を滑り込ませていく。
最後に紅蓮が中に入ると、那月に声をかける。
「よし!那月、もういいぞ!早くこっちに来い!」
「おうよ!《:重力》!!」
那月は最後に前の方にいた狼の体を重くすると、背後の扉に走り、身を滑り込ませる。
直後、颯と紅蓮が扉を思いっきり押して、その口を塞いだ。
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