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65話 罰ゲームトランプ

 林間学校五日目夜。


 晩飯を食べ終えた那月達は颯の部屋で集まっていた。


 「しゃあ!!」

 「くっ……また負けたぁ!!」


 紅蓮と那月の声が響く。


 今、この場所には那月と紅蓮の他に、颯、天斗、響、日奏の六人が床に座り、輪を囲んでいる。


 そんなに集まって何をしているのかと言うとーー


 「もう一戦!次もババ抜きだ!!」

 「またかよー」

 「おい、那月、次負けたら分かってるよな?」

 「罰ゲームだよー」

 「わ、かってるよ!」


 そう、風呂にも入らずに集まった六人は、トランプに興じていたのだ。


 しかし、ただのトランプでは無い。

 罰ゲームトランプだ。


 ルールは簡単。

 先に五敗した者が負け。

 負けたら次のゲームを指定でき、誰かが罰ゲームを受けるまで終わらないというものだ。


 そして、現在の戦績だが……颯『0敗』、天斗『0敗』、日奏『1敗』、響『1敗』、紅蓮『2敗』……そして、那月の『4敗』である。


 那月の顔に焦りが生まれる。


 何せ罰ゲームが罰ゲームだ。

 よく日奏と颯が許したな、という内容なのだがこの場に集まった者は皆、スリルを求めているのだから仕方ない。


 「ふぅ、では始める!!!」


 那月から時計回りに引いていくルールだ。

 那月の右隣は紅蓮で、左隣は颯。

 つまり、那月は颯からカードを引くということだ。


 那月が颯の方を向きーー硬直。


 「どうした?那月くん?」


 勝利の笑みを湛えた颯の顔がそこにはあったのだ。


 何故そんな顔が出来るのか、それは颯の手持ち枚数が一番少ないからだ。


 しかし、そんな颯に比べ那月の手持ち枚数は五枚。

 ゲームプレイヤーの中で一番多い。


 ━━あ、負けた……


 那月が心の深いところで呟いた。


 「……だけど、だからと言って負けられねぇ」


 那月は目の前に並べられた三つのカードを眺める。

 幸いと言うべきか、那月の手札にはジョーカーが無い。


 よって今は運の世界。

 どれを引けばペアとなり捨てることが出来るかの勝負だ。


 「ーーここ!!」


 那月が真ん中のカードを勢いよく引き抜く。


 持ち上げた腕を下ろし、カードを表にする。

 果たしてそこに描かれていた数字はーー


 「……どぅへぇぇ…………」


 那月の口から情けない声が漏れる。


 そのカードには数字など描かれておらず、描かれていたのは赤いボールを持つ青鼻のピエロだった。


 ジョーカーである。


 「おいおい、ポーカーフェイスくらいしろよ」

 「は、は?なんの事だよぉ?」


 響が呆れ声で言うと、那月はしらを切ろうと試みる。

 しかし、既に手遅れだ。


 那月がガックリと肩を落としていると、颯がペアを揃え、一抜けを確定させる。


 それから、響、日奏と手札を空にして行く。


 残るは那月、天斗、紅蓮の三人だ。


 那月が紅蓮からカードを引いて、渋い顔をする。

 次いで、そのカードを天斗に向ける。


 「ほら、引けよ」

 「うーん、そうだなぁ……《集中》」

 「あ、てめぇ、ずるいぞーー」

 「これだぁ!!」


 天斗は那月のシャッフルとタイミングを合わせてスキルを発動させると、ジョーカーの動きを念入りに観察した。


 そして、シャッフルが終わると同時、那月の持つ四枚の内の一枚を取り出す。


 それは、ジョーカーでは当然ない。

 ハートのエースだ。


 そして、天斗の持つカードはクローバーのエース。

 上がりである。


 「へっ!スキルを使っちゃならないルールなんてねぇんだよ!」

 「汚ぇ………………」


 那月は口ではそう言いつつも顔は笑っていた。


 「さぁて、那月、次はお前が引く番だ」


 紅蓮も不敵な笑みを湛え、カードを伸ばしてくる。

 手には二枚のカードが握られている。


 だが、ここは迷う必要は無い。

 なぜならどちらを引いても那月のカードは減るのだから。


 那月は右のカードに手を伸ばし、引き抜く。

 そして、手持ちのカードと見比べ、同じ数字のカードを場に捨てる。


 「さて、俺は次で勝ちなんだが?」

 「いいから、さっさと引けよ」


 那月はシャッフルした二枚のカードを紅蓮に向けて差し出す。


 「ふむ、じゃあ……」


 紅蓮は数回カードの上を右往左往していたが、とうとう右のカードに手をかける。

 そして、そっと引く。

 が、そこで手を止める。


 「おや?スキルは使わないのかい?那月くん」

 「え?そりゃあ、使わねぇよ。……俺は正々堂々と勝負する男だからよ」

 「そうか……じゃあこっちだ!」


 紅蓮が素早い手つきで右のカードから手を離し、左のカードに手をかける。

 しかしーー


 「《:重力》!!!!!!!!!」


 那月がそれを許さない。

 カードを引こうとした手は持ち上がる事を拒んでいる。


 「那月ぃ。お前みたいな奴が、抜け道を知って使わない訳が無い……つまり、お前がスキルを使わない方はジョーカーだってことだ」

 「ご名答。だがーー」

 「あぁ。こっからはババ抜きじゃねぇ!」


 「「力の競い合いだ!!!」」


 両者の拳に力が込められる。


 紅蓮が力一杯に腕を上げようと頑張るが、那月の《:重力》がそれを許さず、耐えず数十倍の重力を一点にかけ続ける。


 それから何分が経っただろう。


 傍観者となった四人が欠伸を堪え始めた時、唐突に幕は閉じた。


 「はぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!」


 紅蓮が気合の咆哮と共に那月からカードを抜き取ったのだ。


 「はぁ、はぁ、はぁ……俺の、勝ちだ……!」


 紅蓮はカードに描かれた数字が自分の持つカードと合う事を確認すると、それを床に投げ捨てる。


 そして、那月の肩に手を置く。


 「罰ゲーム『女子脱衣所一周』。頑張ってな」


 こうして、那月は罰ゲームを受けることとなったのだ。

 それも最悪の罰ゲームを。




 罰ゲームトランプが終わり、那月は監視の元、女子脱衣所前に来ていた。


 「んじゃ、俺達はここで」

 「那月。逃げたら、タダじゃ済まさねぇぞ」

 「女子のパンツを盗んだら俺に」


 各々コメントを残して階段の方へと駆けて行った。


 那月は深呼吸をする。

 正直、ここで逃げても男子共にボコされるだけで済む。

 十分罰ゲームだが、『変態』のレッテルを貼られるよりマシというもの。


 しかし、那月はそれをしない。

 そう、男だから。


 那月は格子戸に手を掛けると、勢いよく開いた。


 「…………あ」

 「ん?………………」


 そして、見てしまった。

 タオルを肩に掛け、牛乳を一息に煽る、パンイチ姿の貧乳少女ーー氷華の姿を。


 那月はその瞬間、脳が停止した。

 逃げれば良かったと那月は後になって後悔した。


 「〜〜〜〜!!!」


 怒りか、羞恥か。

 顔を真っ赤に染めた氷菓が拳を握る。


 すると、那月の目の前に巨大な氷拳が現れる。


 氷拳は氷菓の拳と連動しているらしく、氷菓が全力のストレートを空に向けて放った直後、那月の顔面を氷拳が捉え、那月の意識を刈り取った。

本作をお読みいただきありがとうございます。


「面白い!」


「続きが気になる!!」


「頑張れ!!!」



と思って頂けたら


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面白かったら★★★★★、まぁまぁじゃね?と思われた方は★☆☆☆☆。


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