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64話 金色蛍採取④

 林間学校五日目午後。


 颯、天斗、めめは、めめのおかげで午前の内に前回探索分の四倍の十六階層まで来ていた。


「ふぅ、十六階層までやってきたのに、金色蛍なんていやしないじゃねえか」


 天斗が愚痴を漏らす。


 四階層以降、これといって変化は無く、モンスターも同じようなものばかり。

 そろそろ戦闘自体に飽きて、流石の天斗も退屈そうに欠伸をする。


 それを横目にめめは笑う。


「一度休憩にしましょう。すぐそこにモンスターの匂いがしない所があるので」

「あぁ、そうだな。この先の方針を決めるにも丁度いい」


 颯が同意し、めめの先導について行く。



 五分程歩くと、とうとうその場所にたどり着いた。


「わぁ」

「すごい、ですね」


 天斗とめめが感嘆の声を上げる。


 その視線の先には円形の空間がある。

 周りは樹木で囲まれていて、地面には背の低い雑草が茂っている。


 そして、一番目を引くのは、中央にドンッと屹立する巨大な大樹。

 周りの樹木とは異なり、葉が桃色に染まり、幹は薄い紫色だ。


 どこか不思議な雰囲気を纏うその大樹を前にめめは持ってきていたレジャーシートを敷く。


「さぁ、ここで休憩しましょう。丁度いい観光スポットのようですし」


 めめは大樹を見上げながら笑う。


 その時だった。


 無風だったダンジョン内に風が吹き、大樹の葉が舞い散る。


「きゃぁぁぁ!!」


 めめの悲鳴が轟く。


 颯が声のした方を向くと、めめが薄紫色の根に捕まり、吊るされるところだった。


「めめ!!」


 颯は慌てて警戒態勢をとる。

 天斗もそれに倣い、大樹をキッと睨みつける。


 すると、大樹が体を揺らす。

 と同時、ゴゴゴゴと地面が唸り声を上げ、そこから根が突き出てくる。


「ゴォォォォ!!!」


 いつの間にか幹に浮かび上がっていた老爺の顔が叫び声を上げる。


「ちっ!モンスター……!!」

「はっ!手応えがありそうじゃねぇか!!」


 それぞれが反応を見せる。

 颯は恨めしそうに、天斗は嬉しそうに。


 両者の反応を受けた大樹のモンスターはもう一度叫ぶと、それを戦闘開始の合図に、根を伸ばしてきた。


「ーーくっ!颯!!」

「あぁ、《加速》!」


 天斗が躱し、叫ぶ。

 同じく攻撃を躱した颯は姿勢を低くするとそのまま地面を蹴り、走り出す。


 スキルに背中を押された颯は徐々に加速し、一瞬でモンスターの眼前にまでたどり着く。


 そしてーー


「『乗速一脚』!!」


 体に乗ったスピードをそのまま脚に乗せ、蹴りを放つ。

 それは見事に大樹の顔面を捉えた。


「…………なっ!」

「ゴォォオアアア!!!」


 しかし、大樹は微動だにせず、それどころか、落ちる颯の足に根を巻き付けると、地面に叩きつけた。


「……ガハッ!」


 血の混じった空気が颯の口から出る。


「……くっそ……!!」


 天斗が大樹目掛けて駆けていく。


 だが、颯のような速さを持たない天斗を近づかせる程大樹も優しく無く、無数の根を天斗向けて伸ばしてくる。


「《集中》━━『翻布ノ舞』!!」


 天斗はスキルを発動させ、集中力を強化する。

 すると、まるで舞子の如き足さばきで根と根の間を掻い潜っていく。


 暫くして、天斗は目的の位置まで来ると、上にジャンプして頭上の根を切りつける。


「きゃあ!」

「おっと……!」


 根が切りつけられ解放されためめは重力に従って落下してく。

 それを天斗はキャッチすると、お姫様抱っこのまま大樹と距離をとる。


「ごめんなさい。助かりました」

「いやいや、可愛い子があんな化け物に捕まるとか……ありなのか?」

「あ、あははは……」


 こんな時にも通常運転の天斗にめめは乾いた笑みを浮かべる。


「おい、ふざけてる場合じゃないぞ」


 そこへいつの間にか戻っていた颯が注意の声を投げる。


「わぁってるよ」

「ですが、あのモンスター強すぎます」

「だな、俺の全力の蹴りですら微動だにしなかった」


 颯は大樹のモンスターを再度見て小さく呟く。


「くそ……炎系のスキルを使えるやつが居れば……」


 植物系のモンスターに炎系のスキルは天敵。

 幼稚園児でも知ってる常識だ。

 だが、この場にそれが出来るものがいない。


 颯が苦虫を噛み潰したような渋い顔をしていると、めめがおずおずと手を上げる。


「あの……私、炎使えますけど……」

「なに!?」

「……めめちゃん、それホント?」


 颯が驚き、天斗が半信半疑で尋ねてくる。

 めめはそれに頷き、しかし申し訳なさそうに言う。


「私の契約した狐霊の中に炎を扱える狐がいるんですけど……それを降ろしてしまうと、今日の探索はここまでになってしまうんです」

「どういうことだ?」

「……その狐は降りる条件として『休息』を求めているんです」


 いまいち理解出来ないといった顔でめめを見る二人。


「ですから、この狐を降ろすと、一日経たないと治らない風邪を引いてしまうんです」

「なるほど。それじゃあ確かに探索はきついな」

「でもよ、それ呼ばないと勝てないんだろ?」


 天斗の言い分も最もだ。

 しかし、めめがスキルを使えば今日の探索はこれでお終い。

 明日も探索は難しいだろう。


 颯は唸り声を上げて悩んだ末、口を開く。


「分かった。めめ頼む。あのモンスターを倒してくれ」

「分かりました」


 めめは頷くと、背負っていたリュックを地面に下ろす。


「《狐憑》━━『白狐』!!」


 そして、スキルを発動させると、みるみる内に体が狐に変わっていく。

 しかし、それは普通の狐ではなく、白い狐だ。


 まるで雪のように体毛が白くなり、尻尾と耳の先が黒く染る。

 最後に目が紅く煌めき、変身が完了する。


『コォォォン!!』


 めめが一鳴きすると、体の周りに火の玉が出現する。


「おぉ!」

『行ってきます!』


 めめはそれだけ言うと、勢いよく飛び出した。

 向かう先は大樹。

 その根幹と思われる顔の中心である。


「ーー!!!」


 めめを脅威だと判断した大樹が根を伸ばしてくる。


『……ッ!』


 しかし、めめはそれに爪を振るうといとも容易く根を灰へと変えて突き進む。


 次いで、十を超える根がいっぺんにめめを襲うが、めめの周りを浮遊する火の玉により、全て灰に変えられる。


 十秒としない内に大樹の懐に入っためめはそのまま幹を駆け登り、顔面のその中心にたどり着く。


「ゴォォォォ!!!」


 大樹が怒りに身を震わせるが、めめは落ちない。


『これで終わりです!』


 めめはそう言うと右前脚を持ち上げる。

 すると、そこに火の玉が集まり、めめの右脚が炎を纏う。


『『穿炎爪がえんそう』!!』


 めめの爪が勢い良く振るわれ、大樹の体に大穴を穿った。


 そして、同時に魔石を破壊した為、モンスターは灰へと変わり、風に吹かれて消えた。


『終わり……ました」


 人間に戻っためめは顔を真っ赤にし、その場に倒れ込んだ。


「めめ!!」

「はぁ、はぁ、はぁ……」


 熱い息を苦しげに吐くめめを颯はかつぎ上げると、天斗に目配せをしてその場を去るのだった。

本作をお読みいただきありがとうございます。


「面白い!」


「続きが気になる!!」


「頑張れ!!!」



と思って頂けたら


下記の☆☆☆☆☆から評価をよろしくお願いします。


面白かったら★★★★★、まぁまぁじゃね?と思われた方は★☆☆☆☆。


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